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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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娘と登城

聖獣祭当日。

今夜のパーティーにクロウディス伯爵は招待を受けていたので、馬車に揺られてクリスタラーゼ城へと向かっていた。

少し前に訪れた時、ライラは元気そうにしていた。両親を亡くして血の繋がらない義弟と一緒に住むことになった環境の変化に彼女がどれだけついていけているのか心配していたのだが、それは杞憂に終わったようだった。

ルークがライラを見つめる視線は姉弟というより愛おしい人を見守るような雰囲気があったのだ。

ライラも同じ気持ちなのかと最初は思ったが、彼女の方は家族に向けるような視線に感じた。だが、時々それ以外の感情が含まれているような気もしたので、2人はそう長い時間をかけずに想い合う相手になるだろうと思えた。

「もう少し早く動けばよかったかな」

借金を抱えているクリスタラーゼ公爵家で奮闘しているライラの存在を知ったのは3年前。それは偶然であったが、それ以降ロビンは城へ行くたびにライラのことを気にするようになった。

そしていつしか彼女が成人したときには息子の嫁になってほしいと考えていた。

自分のせいではないのに借金に苦しむ彼女を解放してあげたかったし、このままクリスタラーゼにいては不幸になってしまうような気がしていたのだ。

だから成人したときに息子と婚約しないかというつもりでいた。息子が成人を迎えたらすぐにでも結婚できるように準備もするつもりでいた。

そんな彼の気持ちとは裏腹に、ライラと面会したとき明らかにルークが牽制してきていることに気が付いた。ライラを息子の嫁に考えていたロビンだが、下手な発言はするべきではないとすぐに察したのだ。

今は様子を見るのが一番だろう。ライラの気持ちがルークに向かなければその時はクロウディス伯爵領へ誘えばいい。

「お父様?」

1人物思いにふけっていると、向かいに座っている娘のキーナが首を傾げて声をかけてきた。15歳になった娘は成長とともに病気で亡くなった妻にだんだん似てくるようになった。不思議そうに首を傾げる仕草などそっくりだと思ってしまう。

「なんでもないよ。クリスタラーゼに到着したらまずは当主様にご挨拶をしないといけない。ちゃんと挨拶ができるかな」

「もう15歳だよ。それくらい大丈夫よ」

頬を膨らませて大人びる娘は、まだ成人していないので聖獣祭のパーティーに出席させないつもりでいた。ただ、今回はどこかでライラに会わせたいという思いで連れてきた。

キーナ自身も彼女と会いたがっていたので、ちょうどいい機会だろう。

借金を何とかして返済しようと公爵夫妻に見つからないように動き回っていたライラ。その事情を知ったロビンは公爵夫妻に告げ口はしなかった。そんなことをすれば彼女はきっとひどい目に遭わされていただろう。せっかく集めた金も没収されて、再び夫人の贅沢に消えていく。簡単に想像できてしまって、ライラを守る方法として黙認することを選んだ。

その話を娘に話したことがあった。すると、キーナは努力するライラに憧れを抱いたようだった。自分も苦境に負けない強い女性になりたいと思ったのだ。

あまり体が丈夫ではないキーナは息子と一緒に王都の学園に行くことができなかった。家庭教師で勉学に励んでいたが、領地内の事しかわからないため、外での出来事に興味がある。そんな時にライラの話を聞いて自分の理想を見つけたようだ。

「当主様に挨拶出来たら、ライラ様に会えるのでしょう?」

最大の目的はライラと会うこと。キーナにとって当主であるルークに会えることは重要ではない。聖獣公爵に会えるのだから緊張と期待があってもいいのに、娘はライラしか見ていない。そのことに苦笑するしかなかった。

「ずっとお話してみたかったの。連れてきてくれてありがとう」

喜ぶキーナにロビンまで嬉しくなってしまう。完全な親バカだと言われても否定できないだろう。

「ライラ様もきっと喜ぶだろう。もしかするとお友達になれるかもしれないぞ」

ライラも学園に行かなかった。城から出ることが少なく、社交場に顔を出してもすぐに引っ込んでしまっていたので、年の近い友人がどれだけいるのかわからない。キーナが友人となって少しでも人との交流を深められればいいと思う。

「お友達だなんておこがましいでしょう。私はライラ様に会えればそれでいいの」

キーナも欲がない子だった。

息子と結婚すればライラは義理の姉になっただろう。そうなればキーナはさらに喜んだかもしれない。そんな想像をしてから、ルークの冷めた視線を思い出す。

あれに勝てる気はしないと思った。そもそもライラがルークの気持ちに応えてしまえば勝負などないに等しい。

「ライラ様が健やかに生きていければそれでいいと思うしかないだろうな」

「なんのお話?」

再び首を傾げる娘に何でもないよと笑って首を振ったロビンは、クリスタラーゼ城へと向かう馬車から外の風景にのんびりと視線を移すのだった。


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