使用人の作戦
聖獣祭の準備が着実に進んでいる中、相変わらずライラは図書室で調べものをしていた。ルークも時々一緒に調べものをしていたが仕事が立て込んでいてほとんどを執務室で過ごしていた。
シシィとしてはもう少し2人が一緒にいられる時間を作ってあげたいと思っているのだが、侍女長という立場でもなかなか上手くいかないのが現実だった。
実はシシィとイクルスはルークが当主として聖獣に認められた日にライラへプロポーズしたことを知らされていた。
接点の少なったライラにいつから好意を持っていたのか全く気が付かなかったが、ルークが彼女を隣に立たせたいという思いがわかった時は正直嬉しかった。
それはイクルスも同じだったようで不満を言うこともなく嬉しそうに頷いていた。
「あの2人が夫婦となればクリスタラーゼは安泰でしょうね」
その日の仕事を終えてイクルスと明日の打ち合わせをしていたシシィは何気なくそんなことを漏らす。
「聖獣に認められた当主様に、今まで陰でずっと頑張ってきたライラ様が夫人となるのは喜ばしいことです」
イクルスも納得したように同意してくれる。
「ただ、ライラ様の気持ちが当主様に向かなければ意味がありませんが」
「そうですね。無理に結婚するようなことがあればお嬢様が不幸になってしまいますから」
プロポーズはしたものの、今まで家族としてルークと接してきたライラは非常に戸惑っていたそうだ。そのため、これからは男として見てほしいと頼むだけになった。
ルークを男性として、将来の夫として一緒にいることができると判断してくれればライラも前向きになってはくれるだろう。
「でも、一緒にいる時間がないと、お互いに意識するのは難しいですよ」
それが今の課題になっている。お互いに忙しくしすぎていてゆっくりと2人で過ごせる時間がないのだ。
朝と夕の食事の時間は顔を合わせられるが、どうしてもライラは調べたことの報告をして、ルークは仕事の内容を報告するような事務的な感覚になっていた。
「せめて庭の散策の時間くらいは作ってあげないといけないでしょうかね」
「2人がこの調子では何も進展がありませんから、きっかけくらいは私たちで用意するのがいいかもしれません」
イクルスの提案にシシィはすぐに飛びついた。
時間がないのなら、こちらで勝手にゆっくりできる時間を作ってしまえばいい。
お互いに顔を見合わせて不敵に微笑む。侍女長と執事長が手を組めばそれくらいのことは容易にできるはずだ。ライラに関しては専属侍女たちに上手く誘導してもらおう。ルークの方は執事長が仕事の配分を考えてくれれば大丈夫だろう。
「もう少しお2人にはゆっくりできる時間があってもいいはずです」
「聖獣祭は近いですけど、あまり忙しくしていて体を壊しては意味がありませんからね」
それぞれ理由をつけて行動を起こすことを決めた。
年長者たちの策略など知る由もないルークとライラは今もそれぞれの仕事を全うしていることだろう。
「なんだか楽しみが増えた気がします」
2人の悪巧みが決行されるのはそれから数日後のことだった。




