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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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面会の申し込み

なんとなくと覚えている記憶を思い出すと恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。

「随分と大胆なことをした気がする」

ライラは目が覚めて、最初に自分がベッドになぜ寝ているのか思い出そうとした。

パーティーの途中までは覚えているが、途中から頭がぼんやりしてきて記憶がおぼろげだ。それでも完全に忘れているわけではない。ぼんやりとはしているがルークとの会話も覚えていた。

酔っぱらい扱いされて部屋に強制的に送り届けられた。その途中でドレスのお礼を言って、ドレスを新調できた謎も聞けた。ルークが首席の成績で学園生活を送っていたことが驚きだったが、それを表現するよりも眠気の方が勝ってしまって、その後のことは覚えていない。

部屋に送ってもらうのに、みんなの前で抱きかかえられたことを思い出す。

強制連行には一番いい方法だったのだろうが、酔っていたライラは遠慮なくルークに縋りついてしまった。思い出すと恥ずかしい。

顔を覆いながら体を起こすと、よく眠ったおかげか気分はすっきりしていた。

ただ、パーティーで最初に食事をしてその後酔ってしまったので、あまり食べていなかった。起きると同時に空腹を訴えてきた元気なお腹に別の恥ずかしさが込み上げてしまう。

「朝食の時間よね」

時計を確認すればもうそろそろ侍女たちが起こしに来る時間だった。ぐっすり寝てしまったようで目覚めが早くなった。

昨日着ていたドレスはアンナ達が着替えさせてくれたのだろう。壁に綺麗に吊るされていた。髪に編み込んでいたカスミソウもテーブルの上に小さな花瓶が置いてあり、そこに活けられている。

それを眺めながら、ルークの当主としてのお祝いは昨日で終わったのだと実感する。

今日からは聖獣祭に向けての準備を加速させることになるだろう。

まだ図書室で調べることはある。聖獣祭の資料は記述が多いのでほとんど調べられているが、まだ足りない部分もあるだろうとライラはぎりぎりまで調べるつもりでいた。

それ以外にも聖獣祭が終われば今度は新年を迎えた儀式もある。そちらの資料も探していく必要がある。

前当主からの引継ぎがなかったのだから仕方がない。調べられることはできるだけ調べなければ。

強い意志を持って1人奮起していると、扉をノックする音が聞こえた。

「おはようございます」

侍女2人が部屋に入ってきた。すっきりとした顔で起きているライラと目が合うとほっとしたような表情をしてきた。酔っぱらって眠ってしまったことで心配させていたのだろう。

ベッドから降りると、すぐに着替えの準備に取り掛かった。クローゼットから出されたドレスは今まで着ていた派手なドレスだ。

ルークが用意してくれたのは2着だけ。それ以外はまだ母が買い与えてくれたドレスだ。それを見るとどうしても昨日のドレスと見比べてしまう。

着るのにも気持ちが少し沈んでしまうのは仕方がないことだろう。

自分でもお金を稼ぐ方法を見つけて少しずつドレスを買えたらいいのにと思ってしまう。

用意された奇抜な黄色のドレスに身を包むしかない。

準備が出来て食堂に向かうと、ルークはすでにいた。

挨拶を交わして座ると、昨日のことを思い出して恥ずかしさと申し訳なさが混ざった気まずさが押し寄せてきた。

やはり謝るべきだろう。酔っぱらいを運ぶ羽目になったのだ。もしかしたら愛想をつかされた可能性もある。

「昨日は迷惑かけたわよね。ごめんなさい」

「貴重な酔っぱらいを見られたから気にするな」

「それ、どういう意味?」

褒められてはいないだろう。だからといって貶されたようにも思えなかった。

首を傾げるとルークは口元に笑みを見せるだけで何も言わない。なんだか優しい笑みを見せるようになった気がする。

「今日からは聖獣祭の資料をもう少し調べてみようと思うの」

話題を買えるように朝考えていたことを口にしてみた。聖獣祭以外の儀式についても今後必要になるだろうからそれも一緒に調べていくことを伝える。

「そうだな。俺も合間を見て調べようと思うが、可能なら聖獣にも聞いてみる」

当主として認められた今なら聖獣との意思の疎通が可能になった。だが、聖獣が意志の疎通を認めないと当主からどれだけ話しかけても答えは返ってこないという難点がある。

儀式についてどこまで教えてくれるのかわからない。それを考えると図書室での調べものは続ける必要があるだろう。

「失礼します」

食事が終わった頃にシシィが近づいてきた。

「孤児院の院長が当主様との面会を申し込みに来ました」

聖獣祭でハンカチを寄付する孤児院の代表が朝早くにやって来たらしい。いつもならこちらからハンカチを届けるのだが、今回は新しくなった当主への挨拶も兼ねて院長自ら訪ねてきたのだ。

「それならハンカチの用意もしておかないと」

寄付するハンカチはシシィが管理している。侍女たちが少しでも多く用意しようと刺しゅうをしてくれていたのでそれなりの量にはなっているはずだ。

ルークに託せば院長に渡してくれる。そう思って準備をしてほしいと言おうとすると、なぜかライラも一緒に院長に会うように言われてしまった。

「ハンカチを刺しゅうしていたのはライラだ。本人から渡された方が喜ぶだろう」

「でも、あれは公爵夫人からの寄付という名目になっているし、私がでしゃばるのはどうかと思うわ」

母はもういないが、毎年公爵夫人からの寄付として届けていた。

今さら娘が刺繍していたと打ち明ければ相手を混乱させる可能性が高い。今年は母の寄付にして、来年からは夫人がいないということでライラが代わりに寄付すればいいのではないだろうか。

そう考えた時に自分がここに来年もいることを何気なく想像できていて内心驚いた。同時にルークにプロポーズされていることから、もしかするとライラが公爵夫人として寄付することになるかもしれないと考えてしまった。

途端に頬に熱が上がるのを感じた。

急に頬を染めたライラにルークは首を傾げたが特に気にすることなく話を続ける。

「ハンカチのことは院長に真実を話してもいいと思う。毎年ライラが寄付していたと伝えても問題はない」

本来は公爵夫人の役目だが、公爵令嬢であるライラがその代わりをしていたとしてもお互いに困ったことにはならないだろうとルークは考えたようだ。

「もう努力を隠す必要はない。自分の成果に誇りを持っていい。誰もライラを否定したりしないから」

優しく微笑みながらそう諭された。

そこまで言われてはライラも嫌だとは言えない。

「わかったわ。院長の面会に同席させてもらいます」

覚悟を決めると、ルークだけではなくシシィまで満足そうな顔をしていた。

もしかすると院長との面会をさせるために2人が協力して仕組んだのではないかと思えてしまうライラだった。


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