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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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学園生活

ルークが当主として聖獣に認められたことを受けて、今夜はパーティーをすることになった。

招待客は一切ない、使用人や騎士たちがルークを祝う内輪のパーティーだ。

人数はそれなりにいるので城の中の広間を使うことになった。招待客を呼んでのパーティーもここで行うが、使用人や騎士は裏方や警備をしているため参加することがない。自分達が使う会場となったことに違和感を覚えつつも、準備も自分達で行うので余計に不思議な感覚になっているようだった。

それでも皆楽しそうにパーティーに参加していたので、これでよかったのだとルークは会場全体を眺めて思っていた。

ただ一つだけ気になっていることがある。

それは隣に座っているライラだ。

基本的に立食形式のパーティーになっているが、ルークとライラの席は設けられていた。

パーティーが始まると使用人も騎士も順番など気にすることなくルークが当主として認められたお祝いの言葉を述べてきていた。

その隣でライラは嬉しそうにしながら目の前の食事を美味しそうに食べていたのだが、一緒に置かれていた果実酒を口にしてから、食事をすることなくずっとニコニコしているのだ。

「まさか、果実酒で酔ったのか?」

「酔っていませんよ」

言葉を投げかければ返事は戻ってくるが、ずっとにこやかにしていてどう見ても酔っている。

ここまで酒に弱いとは思わなかった。

ルークも成人を迎えたので酒は飲める。飲んでも酔わないので強いことは自覚していたが、ライラが酒に弱いことは知らなかった。彼女はルークより2か月ほど先に成人している。だが一緒に酒を飲む機会はなかった。

口数が減って常にニコニコしているのがライラの酔ったサインのようだ。おそらく使用人たちも知らなかったのだろう。誰もライラに酒を飲むなとは言わなかった。もしかすると成人して初めての酒だったのかもしれない。お祝いということで知らずに用意されてしまった可能性が高い。

せっかくのパーティーですでに酔わせてしまったことは失敗だったと思う。

立ち上がったルークはライラに声をかけた。

「部屋に戻ろう」

今のところにこやかにしているだけだが、酔っているのははっきりしている。部屋で休ませた方がいいだろうと判断した。

「まだ、大丈夫」

頬が赤く染まった緩い笑顔で否定されるが大丈夫ではない。

「酔っぱらいほどそう言うんだ」

呆れたように言ってライラを立たせると、途端にふらついてルークが支えた。

「酒に弱すぎる」

足に力が入っていないようだ。ここまで弱いと今後飲ませてはいけないと心の中で誓った。

部屋まで歩けそうにないので抱きかかえるとライラは嬉しそうに微笑んでいたが、周囲の者たちは急にざわめいた。

「ルーク様、ライラ様は私が運びます」

近くにいたクリフがすぐにライラを引き取ろうとしたが、それを拒否した。

「お前たちはこのままパーティーを楽しむといい。滅多にこの会場を使えないんだ」

「ですが、主役が退場しては意味がありません」

今回のパーティーはルークが当主として認められたお祝いだ。主役が抜けてはいけないとクリフは主張してくる。

「ライラを送ったら戻ってくる。それまでクリフもゆっくりしていればいい」

護衛はいらないという意味を込めて言った。近くにはアスルも控えていたが彼はついてくるつもりでいたようだ。会場に残るように言われれば大人しく従うしかない。

「ふふ」

ライラは会話を理解していないようで楽しそうにルークにしがみ付いてきた。それが余計に周囲をざわつかせていたのだが、本人はきっと何もわかっていないだろう。ルーク自身も軽い動揺をしていたのだが、それを周囲にばれないように冷静な表情を崩さない。

ライラを抱えたまま会場を出て部屋へと向かった。

「ルーク」

無言だったライラがふいに口を開いた。抱きかかえているので顔が近い。

「なんだ」

少しぶっきらぼうな言い方になったがライラは気にしていないようだった。

「ドレス、ありがとう」

彼女が今夜来ているドレスはルークが手配したものだ。

白と紫の光沢のある生地を使ったドレスは一見シンプルすぎて地味にも見えるが、光の加減でキラキラと反射して輝いているようにも見える。腰の大きな白リボンに髪に編み込まれたカスミソウがさり気ない可愛らしさを出している。そこに大振りの青い宝石が引き立っていた。

ずっと母親が選んでいた派手なドレスを着ているのを見ていたが、どれも義母には似合うだろうがライラにはドレスが勝ってしまって似合っていないと思っていた。

シンプルだが洗練された美しさを備えたドレスの方がライラ自身を引き立たせる。そんなドレスを着てほしいと思っていたので、今回新しいドレスを用意する時にルークは自ら仕立て屋に注文しておいた。

「よく似合っているよ」

心からの言葉に彼女は笑顔だ。

「ドレスの新調はお金がかかったでしょう」

そこを気にするのかと思ってしまう。ずっと借金の返済ができるようにと努力してきたせいなのだろう。金銭面がどうしても気になってしまうようだ。

「そこは気にしなくていい。すべて俺の手持ちで払った」

前に着ていたオレンジ色のドレスもルークの懐から支払われた。公爵家の金は動いていない。

「そんなお金ないでしょう?」

今度は眠くなってきたのかライラの瞼が重そうに見えた。

どうしてルークがドレスを買えるだけのお金を持っているのか、もっともな疑問だろう。眠気に負けないように瞼を持ち上げているが、あまり長くは持たないと思えた。

記憶に残るのかわからないが、ドレスのお金の種明かしをしておくことにした。

その答えは学園生活だ。

「毎年各学年で成績優秀者は学費の免除があるんだ」

このことはきっとライラは知らない。学費は公爵が支払っていると思っていたはずだ。だが、ルークは毎年首席で次の学年に上がっていた。そのため学費がすべて免除になっていたのだ。父はそれを喜んでいるようだったが、今思えばルークが首席だったことよりも学園に金を払わなくていいことが嬉しかったのかもしれない。

「それ以外にも各学年の首席には褒美として品物が贈られる」

「品物?」

「毎年違うから何がもらえるかわからないが、それなりに高価なものだ」

学園は貴族以外にも平民も通えた。優秀な人材を確保するために学園の門扉は広く開かれているのだ。だが、平民ではお金がない者もいる。そのため成績優秀者の学費免除や、高価な品物を贈ることが慣習となっていた。品物はそのまま使ってもいいし、金が必要なら売り払うことも許されている。

そうやって優秀な人材を育てることに力を入れているのだ。

ルークは首席であったことで学費の免除と高価な品をもらっていた。それらを換金すればドレスを作ることも可能だ。

「他にもサークル活動で功績を上げたり、定期試験で上位の人間にも少ないが褒賞金がもらえる」

色々な分野で学園からの褒賞金があった。

「すごいところに行っていたのね」

学園の話しを帰ってくるたびに聞かせていたが、学費の免除や褒賞金の話はしたことがなかった。初めて聞く内容に感心しているようだったが、眠気が勝ってきたのかライラの瞼が半分落ちかかってきていた。

「ルークは学園生活楽しかった?」

義母によって押し込まれた学園ではあったが、そこでしか得られない経験もあった。友人も少しではあるができていたし、公爵家に閉じこもって勉強していては狭い世界の視野しか持てなかった可能性もある。そう考えると学園生活も悪くなかった。

「それなりに楽しめたと思う」

単位は確保しているので卒業まで学園に戻らなくても問題ない。当主となった以上もう戻ることもできないだろうが、振り返ると楽しいこともあったように思う。

「・・・よかった」

そう言ったきりライラの瞼は完全に落ちてしまい、規則正しい寝息だけが聞こえてきた。

「部屋に着いたぞ」

部屋に入ってベッドに寝かしつけても彼女は起きる気配がなかった。

「もう少し警戒心があってもいいと思うが」

これからアプローチしていくと宣言したが、ここまで無防備では逆に心配になる。ルークを信頼してくれているのだと思うが、それが家族としての視点なら変えてもらわなくてはいけないだろう。

前髪を払ってやると安心した寝顔がそこにあった。

その後すぐに慌てて追ってきた侍女2人にライラを託して、ルークは静かにパーティーが続いている広間へと戻るのだった。


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