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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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花束を抱えて

「この花はどう?」

「こちらはちょうど満開でよいと思います」

ライラが示した目の前の花は名前がわからないが綺麗に咲き誇っている紫の花だ。

隣にいる庭師ロードが数本切ってくれる。それを近くで花を抱えているルルナに渡すと、彼女の胸の前でたくさんの花が束になって咲き誇っていた。

「聖獣祭に合わせて咲くようにしていたので、今綺麗に咲いているのは少ないですね」

「急に必要になったから仕方がないわ。それでも十分な量にはなったと思うわ」

「ではこちらの花を花束にしてしまいますね」

「リボンは白がいいと思うの。金糸が入っているともっといいわ」

聖獣ホルケウは真っ白な毛並みの狼だ。その瞳は黄金色なので、聖獣を連想させるリボンがいいと思った。

聖獣に会うための花束だ。これくらいの配慮はしてもかまわないだろう。

今日はルークが聖獣の間で聖獣と会えるかもしれない当主としての儀式をする日だ。

儀式の内容は全くわかっていないが、聖獣と会う条件に花が必要だということはわかった。

花束を持って聖獣の間に入ることになったので、聖獣祭で用意している花の中から今咲き誇っている花を選んでいた。

丹精込めて育ててくれた花をライラが選んでいく。

ルークは聖獣に会えることを想定して、身体を清めたり礼装に着替えたりしているはずだ。その間にライラが花束を用意しているのだ。

「当主様が聖獣に会えるといいですね」

使用人達にも今日の儀式のことは伝えられている。ルークが聖獣に認めてもらえれば、盛大に祝うつもりで準備も進めているのだ。

儀式のやり方もわからない手探り状態ではあるが、誰もがルークが当主として認められると信じている。そうでなければ張り切って準備などできないだろう。

皆の動きがいつもより快活に見えてライラも嬉しくなっていた。

「少し大きな花束になってしまいましたが、当主様が持つには問題ないでしょう」

リボンでまとめられた花束が完成すると、ライラに渡してきた花束はずっしりと重く、彼女の上半身を隠してしまう程の大きさになってしまった。

ライラも張り切りすぎて花を選んでしまったようだ。

自分の浮かれ具合に苦笑してしまう。

「ありがとうロード。きっと聖獣も喜んでくれるわ」

歩こうとして前が見えないことに気が付く。近くにいたルルナがすぐに変わってくれたが、今度はルルナが前に進めなくなってしまった。

見かねたロードが近くにいた若い男性庭師を呼んできて代わりに運んでもらうことになった。

そのままルークがいる部屋へと行くことにした。

聖獣の間の近くに控え室に使われる小さな部屋がある。

ライラが花を抱えた庭師を伴ってその部屋へと行くと、すでにルークが来ていた。

聖獣に合わせた白を基調とした正装は所々に金糸があしらわれている。彼の金髪とのバランスも悪くない。

「随分と大きな花束を作ったな」

ライラが部屋に入ると、その後ろに花束を抱えている庭師が続く。相手がかろうじて見えるくらいの大きな花束は予想外だったらしく、呆れたような表情をしていた。

「張り切り過ぎちゃったみたい」

ライラが会えるわけではないのだが、ルークが聖獣に会えるかもしれないという期待と希望の表れだと思ってもらえればいい。

ルークが花束を受け取ると、庭師はすぐに部屋を出て行った。ルルナはついてこなかったので、今部屋には2人だけとなる。

これからルークは聖獣に会う儀式を行うのだ。いろいろと集中したい気持ちがあるだろうからライラもすぐに部屋を出て行くべきなのだろう。だが、足は部屋の外へと向かなかった。

「ルーク」

花束を作りながら聖獣に会えることを期待していたライラだが、会えないかもしれないという不安も同時に持っていた。

「儀式が終わるまでここで待っていてもいいかしら」

「いつ終わるかわからないぞ」

前当主から引継ぎがなかったルークは儀式がどれくらいかかるものなのかわからない。ライラも経験がないので予測できないが、それでもここで待ちたいと思っていた。

「ここは待機するだけの部屋だから何もないし、別の部屋の方がいいと思う」

椅子と小さなテーブルがある以外何もない部屋だ。くつろいで待っているには不向きだ。

「それでも、待っていたいの」

どうなるのかわからない。できるだけ聖獣の間の近くで待ちたいと思った。

「それなら、体を冷やさないようにお茶と羽織る物を用意してもらうことが条件だ」

夏も終わりを迎えようとしている。外はまだ暑いと言える日もあるが、聖獣の間は城の中でも奥まった場所にある。日差しも届かない場所なのでひんやりとしているのだ。黙って待っていると体を冷やしてしまう心配をされた。

「約束する。だから、終わったら声をかけてね」

どんな結果になろうともライラはここでルークを待つことにした。

花束を抱えたルークは仕方がないなと言いたそうに頷いてくれた。

「いってらっしゃい」

ライラが笑顔でそう言うと、ルークも口元を緩めて返事をしてくれた。

「いってきます」


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