真実を知ったことで
「疲れてしまったようですね」
ルークとシシィに見守られながらひたすらに泣いたライラは、泣き疲れたのだろう。シシィに抱えられるようにしてその胸で規則正しい寝息を立てている。
「部屋に運んだ方がいいな」
このままここに寝かせておくわけにはいかない。
起こして部屋まで歩かせることも考えたが、このまま穏やかに寝かせてあげたいという気持ちの方が強かった。
両手を伸ばしてライラを抱きかかえたが、彼女は目を覚まさなかった。
穏やかな寝顔に心から安心する。
「当主様、あまりまじまじとお顔を見ていては、起きた時にお嬢様が恥ずかしがりますよ」
寝顔を見られたと言って騒ぐ姿が想像できてしまう。
「嫌われるのは得策じゃないな」
せっかく心を開いてもらえたのに、そっぽを向かれるのは困る。
冗談のつもりで言ったのだが、シシィは意外にも真剣に頷いていた。
「とにかく部屋まで運ぶ」
話はここまでだと言うように歩き出すと、シシィが先を歩いて扉を開けてくれた。
そのままライラの使っている寝室へと歩いていくと、廊下の途中で数人の使用人とすれ違った。
ライラを抱えていることに気が付くと、誰もが心配そうな表情を浮かべていた。
彼女が使用人たちに愛されているのだとよくわかる。
部屋に到着すると、シシィが再び扉を開けてくれ、中にはライラの専属侍女が2人待機していた。
ルークに抱えられている彼女を見て、2人とも驚いた表情をした後不安そうにこちらを見てきた。
「心配ない。眠っているだけだ」
侍女たちがてきぱきと動いてくれてライラをベッドに寝かしつける。
「後は私たちが」
「頼む。途中で目を覚ますかもしれないし、今夜は誰か側にいるようにしてほしい」
火事の夜の話をした。悪い夢を見ないとも限らない。すべてを吐き出して安心して眠っているように思うが念のために指示を出しておいた。
シシィも加わって3人で交代しながらライラの側にいてくれるようだ。
少し距離を置いて相談している3人を見てから、ルークは静かに眠るライラの顔を覗き込んだ。
シシィに寝顔を覗くなと窘められたが、やはり彼女が穏やかに眠っているのを見ると安心してしまう。
手を伸ばして頬に指先が触れても起きる様子はない。
ずっと1人で秘密を抱えていたのは辛かったはずだ。それを吐き出すことがルークを傷つけることだと考えて何も言わずにいた。どれだけ傷つけられても、城から出て行っても彼女は耐え続けていたのだ。
穏やかに眠るライラが幸せな夢を見ていてほしいと願う。
3人にばれないように静かに顔を近づけたルークは、聞こえてなどいないとわかっていてもライラの耳元でそっと呟いた。
「辛いことはもう終わりだ。これからは楽しいことが待っているよ」
顔を離してベッドからも離れる。シシィが振り返って首を傾げた。怪しいと思ったかもしれないがライラと距離があったためすぐに侍女たちとの話し合いに顔を向ける。
いつまでもここに居るわけにもいかないだろう。
ルークはそのまま部屋を出た。
廊下には誰もいないと思っていたが、いつの間にかアスルが近くに立っていた。ライラの願いで護衛につけたのだ。彼女が戻ってきたことで対応できるように待機していたようだ。
ルークと視線が合うと静かに一礼してきた。
もうライラに対しての敵意は持っていない。自分の任務をしっかりとこなすのだという姿勢が滲み出ているようだった。
これなら大丈夫だろうと判断して、ルークも自室に戻ることにした。
途中で窓の外を見る。静かな夜に晴天の星空。
衝撃を受ける内容ではあったが、今のルークは穏やかな気持ちでいる。すべてを話してくれたことの安心の方が強かったのだろう。そう考えると、今夜はよく眠れそうだと思った。




