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公爵令嬢は、聖獣公爵に愛される  作者: ハナショウブ
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覚悟

1人分の食事がパーティー並みの豪華さに驚きつつ、予算を心配している自分に苦笑してしまう。

味は申し分なく、料理長が腕を振るってくれたことが伝わってきた。

ルークと2人の食事はあまり会話がなかったのだが、部屋全体が温かさに包まれたような雰囲気を持っていた。空気が優しいという表現が正しいかもしれない。

食事が終わっても特に会話が弾むことはなく、ライラはすぐに部屋に戻ることにした。

だが、扉の前で止まるとまだ席についているルークを振り返る。

「この後時間は取れるかしら?」

問いかければ彼は少し驚いたような表情を見せてから頷いた。

「執務室で仕事をするつもりでいたから、時間は融通が利く」

「それなら後で話があるの」

部屋で休んだ後夕食前に起こされたライラは準備をしながらずっと考えていた。

彼を信じるのなら話をするべきだと。

それはあまり先延ばしにしていいものでもないと思った。だからゆっくり休んで頭がすっきりしている今がいいような気がした。

「わかった。待っている」

何の話なのか察しがついているのだろう。ここで詳しく問いかけてくることなくルークは承諾してくれた。

部屋に戻ったライラは軽い服装に着替えてから執務室へ行こうとした。

すると、先を歩くアンナが執務室ではない方向へと進んでいく。

「当主様から、居間でお話を聞きたいということです」

くつろぎのスペースである居間の方が圧迫感がなく話もしやすいだろうという配慮のようだった。

大事な話ではあるが、緊張しすぎないようにと考えてくれたのだろう。

家族がくつろいで過ごすための場所ではあるが、ルークとこの部屋で一緒に過ごした記憶がなかった。

なんだか不思議な気分になりながら案内されていくと、すでにルークはソファに座ってお茶を飲んでいる。そばにはイクルスとシシィもいた。

ライラが姿を見せるとシシィがお茶の用意をしてくれる。

ルークの向かいに座ると目の前にお茶が置かれ、それを合図にしたように使用人たちが一礼して部屋を出て行こうとした。

「あっ」

ライラは咄嗟にシシィに手を伸ばしていた。

彼女が振り返って首を傾げる。

他の者たちは無言で部屋を出て行ったが、ライラはシシィに声をかけていた。

「シシィにはここに居てほしいの」

決意してここへ来たのだが、いざルークと向き合って話をするとき隣に信頼できる人がいてほしいと思っていた。

「わかりました」

心細さを察してくれたのか、シシィは了承してくれるとライラの隣に腰を降ろして、手に触れるとぽんぽんとテンポよく優しく叩いてくれる。

「心配いりません。話が終わるまでお側にいます。途中で苦しくなったらいつでも言ってください。当主様が邪魔でしたらすぐに追い出してみせますから」

「随分な言われようだな」

「今はライラお嬢様が最優先ですから」

怯むことなく主に意見するシシィが頼もしい。

「ありがとうシシィ」

礼を言えば彼女は優しく微笑んでくれた。

「それで話というのは」

ライラの決意が揺らぐ前にルークが切り出してきた。

「火事の日の事よ」

そう言うと途端に場の空気が冷えたような気がする。

「何があったのか話せるのか?」

話しを聞きたくて仕方がなかったはずなのに、念のための問いかけだったのかもしれない。それでも静かに頷いた。

「先に言っておくけど、火事になった直接の原因は私も知らないの。気が付いた時には城が燃えていたから」

「火事とライラは関係がないということか。それならどうして今まで何も言わなかった」

促されるとあの日のことを思い出す。今でも胸が苦しくなるし、背中を冷たい何かが駆け下りて行くのを感じる。

深呼吸を繰り返してからライラは覚悟を決めてあの日のことを口にした。


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