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063 こねこね講座(下)

 興奮で震える声でサンディに話しかける。


「いつも、どおり……魔法……使って……みて。簡単で……いい」

「はっ、はいっ」


 戸惑いつつも、サンディは俺の言葉に従う。

 短い詠唱を終え――。


「――ファイア」


 サンディの指先からぽっと小さな火が生じた。

 俺は一連の魔力の流れをしっかりと確認する。

 その結果は、俺の確信を裏付けるものだった。


「これで、いいですか?」

「あっ…………あ、あ」


 わかった。

 わかったのだ。

 わかってしまった。

 ようやく、わかったんだ。


 全身が雷に打たれたように震える。

 長年俺を悩ませていた難題がいとも簡単に解決してしまった。


 なんで、俺が魔法で火を飛ばしたり、氷を生み出したりできなかったのか?

 なぜ、普通の魔法使いが魔法陣や詠唱を必要とするのか?

 どうして、サンディたちが体外で魔力を自在にコントロールできなかったのか?

 どうやったら、俺も普通の魔法が使えるようになるのか?


 それらの疑問が一気に氷解した。


「師匠?」


 いきなり黙りこんだ俺に、サンディが不安そうに顔を覗き込む。


「あ、あ……なんでも……ない」


 よく考えたら、今まで他人が魔法を使うところをまともに見たことはなかった。

 だから、わからなかったのだ。

 もっと早くそうしていたら、何年も悩まなく済んだのに……。


 ――魔法を使うとこ見せて?


 その一言を伝えるだけでよかったのに……。

 自分のコミュ障ぶりにへこんでしまう……。


 いや、ポジティブに考えよう。

 これからは俺も普通の魔法が使えるようになるんだ。

 帰ったら、魔道書で勉強だな。

 魔法語を理解するところから始めないとな。

 サンディに教えてもらうのもいいかもしらない。

 時間はかかるかもしれないが、その道筋はわかったんだ。


 思わず笑みがこぼれる。

 大声で叫びたい気持ちだ。

 俺の声帯が人並みだったら、実際に叫んでいただろう。


「師匠?」


 再度、サンディに呼ばれ、喜びを内に抑え込む。


「ごめ、ん…………さっき……みたいに……自分で……できる?」

「はいっ! やってみますっ!」


 サンディは真剣な眼差しで意識を集中させる。

 しばらく時間はかかったが、やがて――。


「やったっ! できましたっ!」


 その言葉で集中が途切れたのか、魔力は発散してしまう。

 だが、それでも、短い時間ではあったが、たしかにさっきと同じように魔力を指先から出すことに成功した。


 一発でできるようになるとは……。

 やっぱり、サンディは俺なんかよりもよっぽど魔法の才能があるに違いない。


「それ……繰り返、す…………こねこね……できる」

「反復練習ですねっ!」

「う、ん」

「頑張れば、師匠と同じようにこねこねできるようになるんですねっ?」

「う、ん」

「大丈夫ですっ! 魔法への愛情と努力なら、誰にも負けませんからっ!」


 うってかわって、満ちあふれた笑顔を弾けさせる。


「じゃあ、さっそく練習開始ですっ! あっ、でも、残存魔力が……」


 サンディは困惑している。

 やりたい気持ちと、この後のことで板挟みになっている。


 俺たちは遊びに行くのではない。

 この後、強敵との戦いが控えている。

 魔力の無駄遣いはできない。


 でも、魔力回復ポーションは十分にあるし、それに――。


「だいじょぶ……俺が…………なんとか……する」

「ホントですかっ!?」


 さっきので、いい方法を思いついた。

 だから、サンディには魔力を気にせず練習してもらいたい。


「う、ん」

「師匠、本当にありがとうございましたっ!!」


 大きく頭を下げてから、自分の世界に入り、練習が始まった。


「ロイル様っ、私にも教えてくださいっ!」

「吾輩にもどうか」


 ルナールとラカルティにせがまれる。


「う、ん……いい、よ」


 とくに断る理由もないので、サンディにやったことを二人に繰り返す――。


「できたわっ! 私にもできたわっ!」

「おおお、これは……」


 ルナールもラカルティも数回でコツをつかめた。

 やはり、二人とも優秀だ。


 二人はこちらが恐縮するほどのお礼の言葉を述べた後、サンディと同じように練習にとりかかった。

 さっきまで騒々しかった車内が一気に静かになる。


 真剣な三人のジャマをしないように小声で雑談しながら、魔動車は揺れることもなく進んで行く。

 二時間もしないうちにウルドの森に到着予定だ。

 俺はもう少し、のんびりしていよう。


 ちなみに、ルナールの手は柔らかくすべすべで、ラカルティーのウロコに覆われた手は冷たかった。

 次回――『サラクン3:駐屯地』


 サラクンサイドです。

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