6.相葉の異変
日曜日。
朝食を食べに降りてきた俺は信じられない光景を見た。
いつも家ではツンツンしている相葉が笑顔を浮かべているのだ。
これは、何事だ!
眠気が一気に吹っ飛んだ!
何があったのだろうかと怪訝な表情をしている母さんに目で訴えても、知らないとばかりに首を振るだけだった。
これは聞いてみるしかないな。
「相葉、何か良いことでもあったのか?」
「ん?別に~」
口ではそんなことを言っているがさらに笑顔になったのを見ると良いことがあったことは間違っていないようだ。
「そ、そうか。もしかして彼氏でもできたか?」
おそるおそる聞いてみると
「彼氏!フヘ、フヘへ」
と妄想の世界にトリップしてしまったようだ。
これは、やばいな。そっとしておこう。
しばらくしてから俺はもう一度相葉に質問した。
「相葉、彼氏できたのか?」
「うん」
返事はしているがどこかうわの空だ。
「おやつ食べないか?」
「うん」
「お兄ちゃんかっこいいか?」
「うん」
「お兄ちゃんのこと好きか?」
「うん」
「お兄ちゃん大好きって、言ってみ」
「お兄ちゃん大好き」
よし、録音完了!あとで相葉に聞かせてやろう。楽しみだな!
しかし、このままでは話にならないなぁ。誰かに頼るか。俺はすぐに携帯を持ち出すと愛に助けを求めた。
『愛、助けてくれ!相葉がおかしいんだ!』
メッセージを送るとすぐに既読が付いた。
『どうしたの?』
『いつも家ではツンツンしてるのに朝からずっとニマニマしてて話しかけてもうわの空なんだ』
そう送り一度相葉の様子を見てみると、携帯をいじっているが先ほどと同様ニマニマしていた。
『わかった!私に任せて!今から私が言うことをやってね』
愛から言われたことはできればやりたくないが、愛をもとに戻すためだ。仕方ない。
相葉に近づき声を上げた。
「相葉、お前のことが大好きだ!」
こんなのでいいのかと思っていると相葉がビクッとなった。これは元に戻る予兆なのか?
「相葉より可愛い子見たことない!」
今度は徐々に顔が赤くなってきたぞ!あとは最後にこれを言えばいいのか。
これ母さんが聞いたらすぐに家族会議が開かれるレベルだぞ。買い物行ってて良かった!
「相葉、結婚して子供を作ってくれ!」
そういうと、きゅ~、と倒れてしまった。
とりあえず部屋に連れてくか、相葉を運んだ。
相葉の部屋に入るの何年ぶりだ。
部屋を見渡してみると机の上に見覚えのあるネックレスが置いてあった。
おっ、これ愛にプレゼントした奴と同じじゃん。
このネックレスは一番人気として売られていたので、同じものを持っていてもおかしくはないな、と僅かな疑念を残し、そのまま部屋を出たのであった。
あの後起きてきた相葉はいつも通りに戻っており安心した。
そこで先程録音したものを聞かせて、からかったりしていたのだが、なぜか相葉も俺の言葉を録音していた。
それを母さんに聞かれてしまい、緊急家族会議が開かれたが、自業自得であった。
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