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18

ルイの知らないところで暗躍する影が。

(ちょっとグロテスクです、すみません)

「あなた随分と上から目線ね。自分が曇天街を救えると信じて疑っていないようだけど」


「その道を見つけるためにも、聖パールに入学したいんですよ」


「あぁ、なるほどね。確かに聖パールに入れたら、可能性は高まるわね」


「そう思いますか?」


「ええ。聖パール学園にどこの国も手を出せないのは、OBたちの多くが世界を動かす要職に就いているからだわ。そのOBのネットワークが手に入れば、曇天街程度、救うくらい簡単かもしれなくてよ」


「へぇ」


紅茶を飲み干すと、すぐに侍女が継ぎ足してくれた。


「ありがとうございます」


ただ頭を下げて、侍女がもとの位置に戻る。


「優秀な侍女さんなんでしょうね。所作がきれいです」


「ええ。私のところにいる侍女で唯一まともな娘よ」


「であれば、教育を徹底し、まともな侍女を増やす努力が必要では?」


「なぜ私がそこまで気を配らねばならないの。最初から優秀な侍女を引っ張って来る方が幾分か有意義だわ」


「その発言は、俺のつれてきたお姉さんをちゃんと教育する気がないということでとってもよろしいんですかね?」


「……はぁ」


「ところで、」


ため息から、お姉さんを教育する気はあると認識できたので、話題を変えてみる。


「ティアナ殿下が心から信用している人間ってどのくらいいますか?」


「……」


姫君が、口をつぐむ。

先ほどまで淀みなく話していたというのに。


それでも、粘り強く待ってみる。


「私は……コスモの姫として、誰にも心を許すわけにはいかないわ」


「それって今もそう思っているんですか? 俺相手に虚勢を張る必要はないでしょう?」


「……」


睨んでいるのだか、泣きそうなのだか、わからない顔をして、それでもまっすぐこちらを向く姫様に少し驚いた。


「私は、、」


言う決心をしたのかと思えば、また口を閉ざしてしまう。


かつて、本でこんな一節を読んだことを思い出した。


―――愛されないということは不運であり、愛さないということは不幸である――


人を信じること、愛すること――それを言葉にできないことは不幸なことではなかろうか。


コスモの姫としての重責によってこの人は不幸になってしまうのではないか、と。


「ティアナ殿下。あなたがコスモの姫君だからといって、あなたが幸せになってはいけない道理はない。愛したいと思う人を愛し、信じたいと思う者を信じればいいのです。コスモの姫であることを誇るなら、なおのこと堂々と」


姫様はまばたきを繰り返す。

そののち、唇を真一文字に結んで、うつむいた。


「私はそろそろ失礼します。侍女さん、王宮の外まで案内してください」


立ち上がり、扉の方へ歩きながら声をかける。


「……かしこまりました」


バタン


うつむく姫様を残して、部屋を出た。



***



(あれがシロサギか)


曇天街で暮らしたとは思えない礼儀作法を身に付けている。

しかし、間違いない。一部の隙もない身のこなしだ。



―――数刻前


「新たなターゲットだ」


「この男は?」


写真に写るのは白い服に身を包んだ青年。

スカートを履いているのはなぜなのか。


「白鷺類。ウェザリアの曇天街で四天王に数えられる男らしい」


「曇天街の四天王。つまり、強い、ということですか」


「ああ。分家の者には荷が重いかとも考えたが、当主であるお前になら任せられるだろう?」


曇天街は世界でも有数のスラム街だ。

柵に囲まれ、魔法の結界が張ってあるため中の実態はまるでわからないが、ろくな物資もなく、混沌の地と化していることは想像に難くない。


そんな場所で生き残り、四天王にまで数えられるなら、相当に強いのだろう。


だからこそ暗殺一家ファウスト、分家ミスト家の当主である私に回ってきたのだろう。


万が一にもファウスト本家の人間を失うわけにはいかないから、使い捨ての駒である分家の人間を使う。それだけのことだ。


「なんだ? その物言いたげな顔は」


「んっ、なんでもございません」


くっ、


顔を蹴飛ばされる。


膝をついて従順な姿勢を見せていたが、お陰で床に投げ出されてしまった。


「申し訳ありませんでした」


とりあえず謝っておく。


「使えない分家の人間をそれでも重用してやっているというのに、感謝が足りないのではないか」


「感謝しております。気に障る態度をとってしまい、申し訳ございません」


姿勢を整え、土下座しながら許しをこう。


んっ、


頭を足で押さえ付けられる。

鼻が床にめり込んで痛い。


「そこのお前、当主の代わりにお前が罰を受けろ」


「承知いたしました」


シュタッ、ボトッ


私についてきていた分家の人間の首が、、落ちた。


「分家の人間の命なぞ、我らの心ひとつでどうとでもなる。分家の当主として、どのような態度をとるべきかわかるな?」


「はい、お手を煩わせてしまい、申し訳ございませんでした」


頭を地面にすり付けて、謝罪する。

30秒ほどの長い沈黙の後、


「白鷺類を殺してこい」


改めて命が下された。


「かしこまりました。ミスト家当主の名にかけて、任務を完遂いたします」


よかった。一人の命でこの場を納めていただけた。


「その死体は始末しておけ」


「心得ております」


.。o○


即刻、首をもらい受けようと思っていたが、状況が変わった。


まさか白鷺類が聖パールに入学するつもりとは。

しかも、そのことをコスモの王族と、聖パールの学園長も承知済みとなると……。


しかしこの仕事、期限は提示されていなかった。


ならば、私も―――。


(ん? あれは?)


懐の短剣に手をかけ、ティアナ殿下の部屋を見つめる侍女。


コスモの王族を殺そうとは、なかなか思いきったことを考える人間がいたものだ。


しかし、ここで騒ぎを起こされると、疑われるのは白鷺類ではないか。

だからこのタイミングで暗殺か。


それは困る。


白鷺類は私の獲物だ。ここで捕まって処刑などされては私の立つ瀬がないではないか。


本家からどんな罰を与えられるかもわからない。


仕方ない。あの侍女を殺しておくか。


シュッ―――ドクンドクンドクン―――ブシュッ


バタン


侍女の体から抜き取った心臓を握りつぶすと、血しぶきと共に、侍女の倒れる音がした。


白鷺類を殺すのもこれくらい簡単だといいんだけどな。

心臓だけを手掴みで取り出す暗殺者。

怖い((( ;゜Д゜)))

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