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ついにコスモ王国に到着!

転移したと同時に、まばゆい光の中を移動する。


光が収まったとき、そこに誰もいないことにさぞ驚かれることだろう。


魔法陣が確認できる位置の建物の屋根に乗り、様子をうかがう。


ここが国境か。

軍が常駐しているらしく、魔法陣を取り囲んでいた。


程なく光が消え、ざわめきが起こる。

キラなら一言一句聞き取れただろうが、俺には無理だ。


まあ、「なぜ誰もいないんだ」「早く確認しろ」とか、そんなところだろう。


というか、あの王太子、あえて軍の存在を俺に隠していたな?


ハヤテとの仲を崩さないためにハヤテの願いを聞くふりをして、その実、俺がコスモに捕らえられることを望んでいたわけだ。


いや、どっちでもよかったんだな。

俺が捕まろうが、逃げ切ろうが。


あの王太子は他者に対しての興味が薄い。

だからこそ、情に左右されることなく、冷静な判断ができる。

逆に言えば、国民に寄り添った政策はとれない。


愚王になることはないだろうが、賢王になることもない。

あれはそういう人間だ。


(さて、王宮はどこかな)


折角だ。街でご飯でも食べていこう。


ウェザリアよりも堅牢な建物が多く、歴史を感じさせる町並みだ。

色んな肌の色、髪の色の人がいることから、多様な人種が集まっているのだとわかる。


それは、コスモが侵略した国の人間なのか、はたまた、外交・通商が盛んだからそうなっているのか。外界のことをよく知らない俺には判断がつかなかった。





「いらっしゃい、何にしましょう?」


入ったのは多様な人種の人が入っていくのが見えた店。

表に――コスモ家庭料理の店――と書いてあったから、コスモの名物が食べられる外国人向けの店ではないだろうか。


「おすすめを」


「かしこまりました」


程なくして出てきたのは赤くて少しドロッとしたスープだった。


「ボルシチです」


「ボルシチ?」


「ビーツを使ったスープです。コスモの伝統料理なんですよ。揚げパンとご一緒にお召し上がりください」


ビーツ、がどういうものかはわからないが、この赤さはそれによるものなのかもしれない。


一口すすると、温まるのを感じた。


アクアパッツァに入っていたトマトとはまるで違うんだな。赤いから似た味だと勝手に想像していたんだが。


揚げパンも油が染みだして美味しい。


曇天街ではパサパサのパンくらいしか手に入らないし、スープも塩で味をつけただけのお湯みたいなものだった。

それでさえ、曇天街の中では裕福な方の暮らしだ。


力の弱い者はごみ山の腐った残飯を食べ、ひどいときには食中毒を起こして死んでしまう。


外界の豊かさは、俺たちのとって凶器だ。

曇天街の門が開かれたとしても、そこには闇が生まれるだろう。


曇天街を救う方法は門の開放ではないようだ。


「ボルシチお口に合いませんでしたか?」


俺が難しい顔をしていたからだろう。

店員の若い男が心配そうに尋ねてきた。


「いえいえ、とても美味しかったですよ。ただ、自分の国もこういう豊かな食生活を送れるようになったらな、と考えてしまって」


「どこの国からいらっしゃったんです?」


「ウェザリア王国です」


ここは正直に言っても問題ないだろう。

コスモとは一応友好国だし、悪い印象もないはずだ。


「ウェザリアですか。海鮮は美味しいですけどね。うちもたまにウェザリア産の使いますし」


「ああ、そうなんですか。確かに海鮮は美味しいです。でも、貧富の差は激しくて、みんなが豊かな食生活を営めてるわけじゃないので」


曇天街はもちろん、貧民街も食生活は不自由そうだった。

実際、ハヤテも庶民は魚くらいしか食べられないって言ってたし。


「へぇ、知りませんでした。ああでも、そういえば、ウェザリアには曇天街があるんでしたね。貧しい人はそこに?」


へぇ、他国の一般人も曇天街の存在を把握しているんだな。

でも、あまり詳しくは知らないようだ。


「たぶんそうです。すいません、ウェザリアに住んでいても曇天街のことはあまり詳しくなくて」


「ああ、まあそうですよね。スラムに近づくのは危険ですし、知らなくて当然です。聞いた私がバカでした、すいません」


「いえいえ」


おしゃべりな店員でよかった。

一般の人がスラムにどんなイメージを持ってるか知れるのは貴重だからな。


喋りながらお会計を済ませる。


「ごちそうさまでした。あ、あと、すいません。王宮ってどこにありますか」


「王宮に用事ですか?」


「ええ、生き別れの兄がコスモの王宮で働いてるって噂を聞いたんです。どうしても確かめたくて」


とっさに嘘を付く。

変に疑われても面倒だからな。


「それはそれは。王宮はちょっと遠いですから馬車かバスを使うといいですよ。バスならここから3日ほど東に行けば着くと思います」


「あーここからバスで3日。遠いんですね」


思わず遠い目になった。


「コスモは広いですからね」


いやはやほんとに遠いな。


「ちなみに馬車だと?」


「10日くらいでつきますよ」


うん、バスだな。


「あ、そうだ。コスモと言えば聖パール学園ってコスモにあるんですよね? 王宮から近いですか?」


「学園島は王都からだと北に……馬車で20日ほどのところだったと思います。バスは確か出てなかったと思うんですよね」


「……遠いですね」


「ええ。でも、あそこは関係者以外立ち入り禁止ですから、行くだけ無駄ですよ」


「あはは、そうですよね」





さて、今俺はバスに揺られているわけだが、3日もかかるんじゃさすがに途中で宿を見つけなきゃいけない。


しかし、身分証を持ってない現状で宿に泊まるのはリスクが高いのも事実だ。


野宿、というのも考えないとな。


野宿自体は曇天街に暮らしていたから余裕ではあるんだが、ただ、コスモはいささか気温が低いのが気にかかる。


それに夜には雨が降る予感がしているのだ。

野宿には向かない日、だと思う。


(うーん、どうしたものか)


とりあえず停留所についたので降りてみる。

雨が降る前に良さげな宿を探せればいいのだが……。


コスモのイメージはおわかりかもしれないですが、ロシアです。


大陸の覇者っぽいですもんね。


ちなみに、ウェザリア王国のイメージはイタリアだったりします。


まあ、あくまでイメージなんですけど。

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