5
キラの初戦闘シーンに注目です!
ステーキにまみれ、ステーキを食い尽くす…というひどく幸せな夢から覚めて、現実にくらくらする。
(そうだ、ここ曇天街だった…)
起き上がって机を見れば、書き置きがあった。
『ちょっと外に出てくる。夜までには帰るよ』
昨日よりは早く起きれたと思うのだが、ルイはもっと早くから起きて活動していたらしい。
(全然、気づかなかった…)
私も曇天街で生きてきた以上、気配には敏感なのだが、ルイはうまく気配を隠す。
(さすが…)
そういえば、昨日の夜、ルイに文字が読めるか聞かれた。
「ねぇ、キラって文字読める?」
「…一応、読めるよ、、書けないけど」
「十分だよ!書くのは今度教えてあげる」
「…ウン」
曇天街では文字の読み書きができない人間が多い。
というか、ほとんどの人ができない。
必要ないからとも言える。
私が読めるのは偏に姉の影響だ…。
(思い出したくないこと思い出した…)
ブルッと身が震える。
まあそれはいいとして。
なるほど、ルイは書き置きが通じるか確認するために昨日あんな質問をしたのか。
(先を読んでるなぁ)
曇天街には脳筋みたいな連中が多い。しかし、思うにルイはかなり理性的で知性的だ。
曇天街で生きていて、なぜそうなれるかは甚だ疑問だが。
パンをかじりながら今日をどう過ごすか考える。
思えば、1日の過ごし方を自分で決めたことがなかった。
いつも姉に言われるがままだった。
(うーん、、家で留守番してればいいの、か…?)
それでもいいとは思う。ルイに迷惑はかからない。
でも、、
(よし、決めた!)
ルイと対等であるための選択をした。
*************************
俺は仕事のために早朝、家を出た。
別に仕事にキラを連れていってもよかったが、キラは朝早く起きるタイプではなさそうだから、やめておいた。
置いてきたのは、単純に1人のときキラがどう過ごすのか気になったからでもあるが…。
家でゆっくり過ごすのだろうか。
いや、案外行動力がありそうだから外に出て動き回るかもしれない。
想像するだけで楽しくなってきた。
仕事というのは、知り合いの情報屋の護衛だった。
奴は俺のニヤニヤした顔を見て、開口一番
「ククッ。きもちわりぃ顔してんな」
けなしてきた。
自覚はあったが、人から指摘されると不愉快になるものだ。
奴が作ったなんかよくわからないメカをひとつへし折って報復してやった。
奴に隠れてやったから最後まで気づかれなかった。してやったりだ。
次会ったときに怒られるだろうが、別に気にしない。
*************************
私は曇天街の外れにいたため、中心街のことは全然わからない。
だから、今日はここいらの地理を覚えることにした。
ルイに迷惑をかけないように、ルイの力になれるように。
いざというとき地理がわかっているといないとじゃ大違いだ。
(行き止まりとか確認しなきゃ)
そうしてしばらく歩いた頃、後ろをつけられていると気づく。
明らかな敵意を向けられている。
(…メンドウな)
仕方なく後ろを向き臨戦態勢をとる。
相手はルイと同じくらいの年頃の男だった。
ひょろっとしているが、別に弱いわけではなさそうだ。
持っている短刀を弄ぶ様は余裕を感じさせる。
男はふっと軽く笑みをこぼしたあと、すさまじい勢いでこちらに向かってきた。
幾度にも振り下ろされる短刀をギリギリのところでかわす。
(うーん、さすがに分が悪いか)
なかなかに速く鋭い攻撃に避け続けるのは難しいと感じた。
いったん私は後ろに下がってキョリをとる。
途端、男がキョリを詰めにくるがさらに後ろに下がってなんとかキョリをとる。
そして、ワンピースのスカート部分の下、太ももに装備していたいくつもの長針のうち1本をとり、そのまま太ももを擦る。
擦って、当然私の血がついたその長針を男の心臓めがけて鋭く放った。
男は咄嗟に心臓をずらし、針は男の腹へと刺さった。
瞬間、男は崩れ落ち息絶える。
(心臓ずらしても意味ない…)
死体を捨て置き、再び歩き出す。
(1日で道覚えられるかな…)
**************************
仕事帰り、くま商店に寄る。
昨日は食材やら机やら荷物が多かったので、いくつか取り置きをお願いしておいたのだ。
「おー小僧!取りに来たか!」
相変わらずの小僧呼ばわりに肩をすくめながらも、悪い気はしないので指摘はしない。
実際、曇天街で長いこと店を維持している男から見れば、俺みたいな若造はまさしく小僧なのだろう。
「あぁ」
「今日入荷したのもついでに売ってやんよ」
「おお!!ありがとう!」
「はっ、相変わらず本のこととなると目の色変えやがるなぁ」
そう、俺が取り置いてもらっていたのは本だ。
外界のこと含め、本からはありとあらゆる知識が手に入る。
『正しい知識を持つことは、自分を守ることに繋がる』
昔、そう教えてくれた人がいた。
実際、怪我したときの正しい処置の仕方とか、本からの知識でここまで生き延びてこれたと思っている。
(キラも文字読めるんだよな…)
昨日、そう言っていた。
文字が読めるなら本も読めるはずだ。
(今度、何冊か薦めてみようか)
昨日取り置いてもらった5冊と、今日入荷したらしい4冊を両手に抱えて、帰路についた。
*************************
道を覚えて満足した私は帰路につく。
すると、途中で両手いっぱいにたくさんの本を抱えたルイに出くわした。
「あぁキラ!外に出てたんだね」
「…ウン」
「ふふ。これはね~本だよ!」
じっと見ていたからか、機嫌よさそうに紹介された。
「知っては、いるヨ」
「ほんと!キラは物知りだね!」
「…」
ルイの方が物知りなくせに…という言葉は呑み込んだ。
「本、、なんのために?」
「わからないかい?」
ひどく試されている感じがして気持ち悪いが、わからないのだから首をかしげるしかない。
「ふふ。好きだからだよ」
好戦的な空気で、なんかクセのある言い方をされた。
(好きだから…だけが理由じゃ、ない?)
そんな風に感じはしたが、よくわからないのでただうなずいてその場をやり過ごす。
そういえば、昨日くま商店で机以上に瞳をキラキラさせて本を見ていたっけか。
(やっぱり、好きなだけ、、かな?)
相変わらず、ルイのことはよくわからない。
実はキラ、めっさ強い!?




