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ハヤテがもたらす新事実とは。
サムのアジトを出て、家へ帰る途中、ハヤテに遭遇した。
その隣にはソフィがいる。
どうやら、ハヤテを1人で中心部へ送るのは心配だったらしい。護衛としてついてきてくれたようだ。
「ルイ君! よかった! 意識戻ったんだね」
「うん、心配かけてごめん」
ハヤテも徹夜で疲れているだろうに、駆け寄って心配してくれた。
「ソフィ姉さんもありがとう」
「ええ」
ソフィはポニーテールを揺らしながら、いつもと変わらぬお姉さん空気でからっと返す。
「え、ルイ君のお姉さんなの?」
「血は繋がってないけどな」
「ルイは3年前までサム、あーっと雷帝のことね、のところにいたから、私にとっても弟みたいなものなのよ」
「へぇ!」
ハヤテは目を皿にして驚いた。
「それで言うと、さっきの雷帝の強さにはビックリしたなぁ。正直、クラウドより強い存在を想像できてなかったんだけど、圧倒的だったね」
「ええ、サムは誰もが認める曇天街最強だもの」
「うん、能力者とはいえ、あれだけ強いなら殺される心配もしなくてよさそうだ」
うん?
引っ掛かった。
「能力者とはいえって?」
「……え」
俺の疑問はソフィもキラも同じように引っ掛かったらしい。
みな一様にハヤテを見つめている。
一方で、ハヤテは話が通じなかったことに驚くとともに、しまった、という顔をした。
逃れられてはたまらない。
「ハヤテ、ちゃんと教えてくれるよね?」
思いっきり笑顔で詰め寄ると、ハヤテは苦笑して観念したようだった。
「能力者を殺すと稀にその能力が手に入ることがあるって、知らない?」
なんだって!
殺すと能力が手に入る、だと!
「なによそれ! ってことは誰かがサムを殺したら、その誰かに雷の能力が宿るって言うの!?」
「絶対じゃないよ。でも、その可能性はあるって話で」
「稀にってどのくらいの確率なんだ? 条件とかはあるのか?」
「詳しいことは何もわかってないみたいだよ。世の学者たちが研究中って感じかな」
なるほど。条件がわからないなら命を懸けてまで雷帝に挑むものは少ない、か。
「魔法使いはどうなんだ?」
「魔法使いは能力者とは違うからね。殺されても、その力が移動することはないよ」
まあそうか。能力者は体内の力を使うが、魔法使いは体外、つまり自然の力を使う。力の本質はまるで違うのだ。
となると問題は、どれだけ知っている人がいるかだ。
外界の常識なんだとしたら、外界から曇天街に来た連中はみんなこれを知っていることになる。
雷帝を狙う人間がいてもおかしくない。
「これって、外界なら当たり前に知られていること?」
「うーん、どうだろ。まだ研究中で明らかにされてないことだからアカデミーでは習わなかったけど。僕は王宮の先生に教わったんだよね。もしかしたら、王族ぐらいしか知らないことだったのかな」
ハヤテも自信がなさそうだ。
王族しか知らないようなことなら心配は少ないが。
だが、わからないときは悪い方で考えるのが得策だろう。
「うん、雷帝なら殺されるようなこともないと思うけど、一応ソフィ姉さんから伝えておいてよ」
「ええ、もちろんよ」
「知っている人間は少ない方がいいから、雷帝以外には伝えちゃダメだよ」
「……そうね、わかったわ」
そう言うと、目の前からソフィは消えた。
瞬身の術を使って、雷帝のもとへ向かったのだろう。
そこまで急ぐことはないんだが、はやる気持ちを押さえられないのも理解はできる。
ソフィや俺にとって雷帝は父親に等しい存在だから。
生きる場所を持たなかった俺たちの居場所を作ってくれた恩人。
自らの命より大切な、守りたい人。
俺がそんな雷帝から離れることができるのは、間違いなくソフィの存在のおかげだ。
ソフィが雷帝のそばにいてくれるから、安心して俺は曇天街を出ていける。
心の中でソフィにありがとうを告げた。
※
家につき、ハヤテとはそこで別れる。
「それじゃあ」
「うん、またね! ルイ君、キラちゃん」
「うん、また、ね」
バタン
そして、俺とキラは外階段を上がり2階に入る。
キラはそのままのそりとソファに向かい倒れこむように横になった。間を空けず、寝息が聞こえてくる。
思っていた以上に疲れきっていたんだな。
徹夜させたあげく、クラウドとも戦わせたんだ。
相当な無茶をしてくれた。
サムに助けを求めてくれたのもキラだろう。
キラがいなきゃ今回のごみ処理騒動が丸く収まることはなかった。
「ありがとう、キラ」
キラを起こさないよう小さな声で礼を告げてから、キラが起きたときのためにスープをこしらえる。
一通り済んだところで、3階へ引き上げた。
布団に横になると、猛烈な眠気に教われる。
体の痛みもひどい。
クラウドのケンといえば、1発の拳で相手を死に貶める重拳の使い手。咄嗟に急所を逸らしたから致命傷にはならなかったもののかなり危なかった。
ゲームとして楽しむつもりだったのに、命のやり取りにまで持ってかれたわけだ。実際、雷帝があと少し遅れていたら確実に俺は殺されていた。
だからクロムは気にくわない。
圧勝できたためしがなく、常に引き分け状態なのだ。
今回もそう。
もう少しうまくやるつもりだったのに、力で押しきられそうになった。
(やはり何を成すにも力は必要、か)
キラがいてくれたことで救われたように、信頼できる仲間がいれば、取れる選択肢はずっと増える。
俺の力になってくれる仲間を見つけないとな。
曇天街を犠牲者なく救うと宣言した以上は一匹狼ではいられない。
新たな想いを胸にして、俺は深い眠りに落ちていった。
これこそがサムのいってたルイの成長かな。




