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ルイの命運はいかに!?
そして、遂にハヤテの正体が明かされます!
この剣が振り下ろされたら、俺の命は終わる、か。
この場にキラがいなくてよかった。
キラは優しい子だから、俺が死ぬ瞬間に居合わせたりしたら、きっと自分を責めてしまうだろう。
静かに目を閉じる。
ぶわっ、と風圧を感じる。
しかし、その刹那、ビリビリッ、肌がひりつくような感覚にハッとした。
(間に、合ったか)
ビリッ、ゴロゴローン
とんでもない轟音と共にまばゆい光に包まれて、一瞬、時が止まったように錯覚する。
そして、目を開けると、目の前に紫の服、長い金髪の後ろ姿を確認できた。
こみ上げてくるよくわからないなにかに、思わず胸を手で押さえる。
(来て、くれた)
後ろに飛び退いて雷を避けたダンを含め、クラウドも親衛隊も檻の中の者たちも、皆一様に息を飲んでいるのがわかる。
――雷帝。
最強たるその男が、場の空気を塗り替えたのだ。
コツコツコツ
程なくして、革靴の音が響く。
(さすがに姿を表したか)
「「「「「ボス!」」」」」
クラウドの連中が揃ってボスと呼ぶ男。
俺の嫌いな、いけすかない奴。
――クロム。
「まさか、雷帝が出張ってくるとは、さすがに予想外だ。演技は辞めたのか?」
いつも通りの淡々とした声。
「……クロムかぁ。予想外なのはこっちの方だなぁ。曇天街に手を出すとはどういうつもりだぁ?」
嘲るようなべたっとした喋り。
雷帝が敵にだけ使う口調だ。
クロムと雷帝、遂に2人が相まみえるか。
ギギィーーー
しかし、その2人の空気を壊すかのように、金属が歪む音がする。
豪腕によって檻がこじ開けられたのだ。
――クマ。
その後ろには今到着したらしいキラとハヤテ、ソフィがいる。
俺はまだダメージの残る身体に鞭打ってなんとか立ち上がった。
――シロサギ。
四天王となってから、4人全員が揃うのは初めてのことだ。
それは、この一件がとんでもなく重い案件であることを、なによりも如実にうつしだしている。
「我ら四天王3名は今回のクラウドの行動に異を唱える。事情の説明を求め、これに応じないとき、もしくは、その説明に納得できないときは四天王の全力をもってお前達を排除する」
クロムに向けて言葉を放つ。
「……シロサギ、これはお前の策か」
「ああ。ゴミ処理にクラウドが関わっている可能性も考慮して、もしもの時のために雷帝勢力とクマに支援を要請していた」
「ふん、相変わらずだな」
「悔しいが、俺じゃあんたを止められないからな」
俺とクロムが話している間、クマの誘導に従って、檻からみんなが脱出する。
「アラン!」
響いたのは焦ったようなハヤテの声だ。
声の方を向くと、キラに抱えられていたハヤテが地面に下ろされているところだった。
ハヤテがこっちに来ようとするのを見たアランが慌てて駆けてゆく。
「バカ、ハヤテ。何で来たんだ」
「だってちゃんと見届けなきゃって思って」
「だってじゃねえよ」
キラはそんなやり取りを横でされながらも、一切気にすることなく俺の方を見つめている。しかし、こちらには寄ってこない。
ハヤテを守れと言う俺の願いを叶えるためだろう。
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よかった。ルイ、無事だった。
でも、だいぶダメージもらってる。
あれだけの剣技を誇るルイがこんなにボロボロにやられるなんて。
やっぱりクラウドは危険だった。
でも、雷帝のお陰で助かった、のかな?
まるでルイを庇うかのように、立っている雷帝を見て、そう思った。
―――ここに来る前、雷帝のアジトにて。
「助けてほしい、の。ルイを」
「……」
ルイの作戦、それは四天王勢力で力を合わせるというものだった。
ルイは、なにもクラウドと戦うことを確実視していたわけじゃなかったらしいけど、国の軍隊を相手取ったとしても勝てるように準備を整えていたそうだ。
その作戦において最難関は、雷帝の協力をこじつけること。
雷帝はルイと敵対関係にあるというのに、九条のメカでは近づけないから、直接誰かが赴かないといけない。
事前に、ソフィ姉さんにはゴミ処理のことを伝えてあるから、そう簡単に邪険にはされないだろうという目論みはあったけれど、それでも、かなりの難関だと思われた。
だけど、クラウドの声を聞いた私は、迷ってためらってる時間なんかないのだと理解していた。
早く雷帝にお願いしないとルイが危ない。
だから、迷わず速攻で雷帝のアジトに来て、たまたま見つけたステイを取っ捕まえて雷帝のもとまで案内させた。
雷帝はこの前の広間ではなく自室にいた。
ノックもせずにドアを開け、雷帝が見えた瞬間、開口一番にルイを助けてほしいとお願いする。
雷帝は机の椅子に座って、無言で私を凝視した。
今回はごちゃごちゃいう連中はいない。雷帝との一対一。
あ、ステイは私の後ろにいたけど、会話には一切入ってこなかったから。
「クラウド、が敵なの、ルイを、助け、て」
雷帝の放つ空気も、帯びる電気も恐ろしくてたまらなかったけど、その瞳だけは私を守ってくれるかのような錯覚をもたらす。
雷帝がガタッと立ち上がった。
「どこだ?」
ただ静かに問われて、一言だけ返す。
「ゴミ山」
雷帝はそのまま私の横を通りすぎて、ものすごい電気を帯びながらステイに指示を出す。
「俺はすぐゴミ山にいく。ソフィに伝えて、指示あおげ」
「うっす」
ステイが返事をした途端にバチバチっと大きな音がして、気づいたら雷帝は消えていた。
「え」
思わず声を漏らし、ステイと顔を見合わせた。
―――そして、今。
「ふん、予想外だらけだな」
周りのざわつきを一瞬で黙らせる声。クラウドのボスの声。
思わずビクッとしてしまう。
その声の重さに冷たさに全身が固まってしまいそうだ。
ボスがハヤテを一瞥する。
私は固まりそうな身体をなんとか動かして、ハヤテをボスの視線から隠すように立つ。
ルイに守れと言われたのだから、怖くてもやらなきゃ。
しかし、
「いいよ、キラちゃん」
ハヤテが呟く。あろうことか、ハヤテは私を押し退けて、ボスと対峙した。
「久しぶりだな、クロム殿」
え、知り合い?
いや、クラウドと何かあるかもとは思っていたけど。
でも、私をもっと驚かせたのは、これに対するクラウドのボスの言葉だった。
「第三王子、ハヤテ・ウェザリア殿下。ええ、お久しぶりですね」
四天王揃い踏み。
ワクワクするなぁ!




