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キラとハヤテ側のお話です!
ルイと別行動している2人にも注目!
ルイがリーダー宣言してる。
私は耳を済ませて周囲の危険を探りつつ、同時にルイの様子も気にかけていた。
タイヤに穴が開けられないとか、運転席の窓が割れないとか、思い通りにいってないようで心配してたけど、杞憂だったかな。
だって、ルイがあんなに楽しそう。
ふふ、ルイが楽しんでるならきっと考えがまとまったってことだ。
私は私の役目を果たそう。
ハヤテはさっきまで青ざめてて今にも死んでしまいそうだったけれど、少しマシになった。
ルイが『必ず助け出す』って言ったからかな。
大丈夫だよ、ハヤテ。ルイの言うことは絶対なんだから。
あ、この先、なんか絡むと面倒そうな気配がある。
見知らぬ建物の外階段を登り、回避した。
そのまま屋上から屋上へ跳び移り、九条の元へ向かう。
九条の部屋は防音になっているそうで、九条が部屋にいるのかどうかすら判断がつかない。
ただ、中心部全体に耳を済ませても九条の声が聴こえないということは、あの防音室にいる可能性が高いのだ。
ついでにいうと、フィール先生の声も聴こえないので、九条のところに一緒にいるのかもしれない。
だとしたら、ラッキーだね。
よし、到着。
九条の建物には外階段が付いてないので、屋上から一旦地面に跳び降りる。
その途中でがっつり窓に視線をやると驚いたフィール先生と目があった。
やっぱりここにいたか。
中階段をあがって3階の九条の拠点に入る。
ガチャっ
こちらが扉を開けるより前にフィール先生が扉を開けてくれた。
入り口付近の椅子には九条も座している。カタカタとモニターを操作しているのでこちらに顔は向けないが。
「フィール先生、ハヤテ、をお願、い」
あちらが声を発するより早く、フィール先生にハヤテを差し出した。フィール先生は一瞬、呆けたあと力強くうなずいて、ハヤテを受け取ってくれた。
そのまま隣の仮眠室に運んでくれる。
私もそれに付いていこうとしたところで、九条に声をかけられた。
「ククッ、色々と予想外のことが起きてるらしいな」
こちらに顔は向けないままだが、よく見るとモニターにはゴミ処理の様子がバッチリ映っている。
「見て、たの」
「ああ、モスキートを使ってな。これは作戦変更だぜぇ」
「作戦っ、て?」
「事前にルイからいくつか作戦を伝えられててな。キラが俺様のところに来たら作戦変更の合図だってよ」
すごい。ルイはやっぱりここまで見越してたのか。
九条はモニターから目を外し、こちらを向く。
そして、私の心を見透かしたように笑った。
「いや、まあさすがにこれは予測できてなかっただろうけどな。それでも、予測を外れたときの作戦まで用意しているところがルイらしいってこった」
「さすが、ルイだ、ね」
私もウンウンとうなずいて、同意を返す。
「ま、こっちで準備しとくからキラはあいつの面倒見てやるんだな、ククッ」
九条が仮眠室を顎で指しながら、促す。
私は素直に従うことにした。
仮眠室に入ると、ハヤテはベッドに横になっていた。
「フィール先生、ハヤテ、は」
「体調的には大丈夫よ、精神的に参ってるだけね」
フィール先生はベッドの脇でハヤテを診察しつつ返事をくれる。
「人の悪意、国の邪気。初めてご覧になれば、苦痛を感じられるのは当然のことです。なにも恥じることはありませんよ」
「ハハ、ありがとう」
フィール先生はハヤテに対してなぜか敬語だ。
精神的に弱ってる人に優しくしようとしたら敬語になるものなのかな。
それに対して、ハヤテは乾いた笑いを返し、苦い顔をしている。
「このままベッドでお休みください。ここは安全性の高いところですので、ご安心を」
「いや、僕はできれば、また現場に戻りたいんだ」
弱々しくもしっかりとした意思を含んだ言葉に、フィール先生が眉をピクッとする。
「なぜです。そのような精神状態では、戻ったところで倒れてしまわれます。お考え直しください」
「わがままを言っていることはわかってるよ、でも、ルイ君と約束したんだ」
「約束、とは?」
「見届けるって、曇天街の住人の生き方を、強さを、優しさを」
「それは……」
だんだんと力のこもっていくハヤテに、フィール先生の出していた咎めるような空気も緩んでいく。
「ここで逃げたら僕は一生後悔する。こんな倒れそうになって、キラちゃんに守られる情けない僕だけど、それでも、ルイ君との約束は果たしたいんだ」
「シロサギに話したのですか」
「いや、なにも話してないよ。ただ、勘づかれてはいるってことかな」
「……なるほど、わかりました。シロサギはすべてわかっているようですから、私が言うことはなにもありません。ただ、もうしばらくは休んでいてください」
「うん、ありがとう」
2人は知り合いだったのかな。なにか秘密を共有してそうだ。
じーっと見ていた私にフィール先生が気づいて、照れたように笑う。
それを見たハヤテが説明してくれた。
「ああ、キラちゃん。実は、先生とは曇天街に来るずっと前に縁があってさ」
「外界での、知り、合い?」
「そうなんだよ。久々会えたから、おかげで気分もだいぶ落ち着いたかな」
クスッと笑うハヤテに、フィール先生は呆れながらも嬉しそうだ。
「それは何よりでございました。曇天街で生きるのに、気を張っておられたのでしょうから」
「そうだね。でも、ルイ君やキラちゃん、くま商店のおじさんにもよくしてもらえているし、僕は幸せ者だよ」
「そういえば、雷帝の傘下と揉めた少年がいたけど、シロサギが間に入ったからどうにもならなかった、と報告を聞きましたが、あれはもしや?」
「ああ、僕だね」
「まったく、相変わらず無茶をなさいますね。」
「あはは、面目ない」
ふーん、弱いくせに図太くて誰にでも態度を変えないところは外界にいるときから変わらないんだね。傍目には無茶に見えるのわかる。
でも、決して考え無しなわけじゃない。
「雷帝は短気ですし、手を出したら怖いんですよ」
「先生、詳しいんだね!」
「はぁ、私は雷帝に守られているおかげで医者ができているのです。私みたいなひ弱な人間は四天王の庇護でも受けないとここでは生きていけませんから」
「そうだね、僕も一緒だ。ルイ君に守られてる。でも、先生が無事に生きていてくれてよかったよ」
「ありがとうございます」
「それから、曇天街に医者として居続けてくれてありがとう」
「私は医者です。患者がいるのならそこがどこだろうと関係ありません」
「ハハッ! さすが、先生、かっこいい~!」
いつもの調子を取り戻したようなハヤテの快活な声が響いた。
実はハヤテとフィール先生は知り合いだったんです。
それにしても、ルイはハヤテの何に気づいているのかな!?




