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一匹狼だったルイ、まさかのリーダー宣言!?

「なっ! なんだよこれ」

「どうなってるんだ!」


叫び声がしていたゴミ山の裏に到着し、そこで見た光景は、今までのゴミ処理と今回の騒動がまるで別物であることを如実に示していた。


親衛隊の2人は茫然としてしまっている。


「今回のゴミ処理は、人さらいが目的だったか」


「なっ、マジかよ」

「ふざけやがって」


俺の言葉でようやく事態を理解したらしい。


そう、大型重機のアームによって捕らえられているのは、ゴミではなく曇天街の住人たちだった。


ゴミ山から撤退した者たちも容赦なく、アームに捕まって、檻に押し込められている。すでに十数人が捕まっていて、檻は車両になっているためそのまま走り出せば拐えるという寸法なのだろう。


「あっ、この感じ間違いねえ。集合場所に戻ってこなかった2人とも檻のなかに居やがる」

「くそっ、捕まったってのか」


噂を流すためにゴミ山付近にいたために彼らも巻き込まれてしまったらしい。間違いなく俺のせいだな。


彼らは猛者の部類に入るだろうが、檻の高さはかなりあるため、自力での脱出は難しそうだ。

どうにか助け出さなければ。


というか、人さらいなんて止めさせなければ。


「ルイ!」


シュタッ


声がした方を向くと、ハヤテをお姫様抱っこで抱えたキラが建物の上から跳んできた。


「キラ! 合図をありがとう」

「うん、でも、」

「ああ、事態は思わぬ方向に行ってるみたいだ」

「どうする、の」


ハヤテを地面に降ろしたキラが聞いてくる。


相手が相手だからな。しかも、これだけ大型の重機だと、そう簡単に手が出せない。


「檻から住人を助け出すには、時間がかかりそうだ。檻をのせた車両のタイヤに穴を開けて、パンクさせよう。そうすれば、しばらくは時間が稼げる」


だが、時間を稼いだところで根本的な解決にはならないな。



考えろ、どうすれば人さらいを止められる?

どうすれば檻の中から助け出せる?


いや、そもそも曇天街の住人を拐う目的はなんだ?



……これは、俺たちだけでなんとか出来るものではない、、か。


「ルイ君、どうして人が捕まってるんだ……」


絞り出したように声を出したのはハヤテだった。


車両には淡い照明が付いているため、ハヤテにもはっきりと状況がわかってしまっていた。

刺激が強い光景だからか、呼吸が乱れつつある。


「……正確なことはわからないけど、今回のゴミ処理の目的は住人を拐かすことと見て間違いないだろう。だからこそ、こんな真夜中に仕掛けてきた」


夜目が利く者が多いとはいえ、日が出ているときに比べたら当然、視界は悪くなる。拐かすにはもってこいだ。


「くっ、やっ、なんで……」

ハヤテが立っていられなくなって体勢を崩す。

顔は青ざめ、身体はガタガタ震えている。


「ハヤテ!」

とっさにキラが支えたが、これ以上は意識を失いかねないか。


「ハヤテ、捕まった住人は必ず助け出す。だから、今はここを離れろ」


俺の言葉にノロノロと顔をあげ、震える声で紡ぐ。


「助け出す? どうやっ、てさ」


「どうやってもだよ」


ここで方法を話す時間はない。

本気で助け出そうとしていることが伝わるように、かつ、いつも通りの穏やかさを心がけて、頷いた。


ハヤテは不安そうにしていたが、俺の言葉を否定はしなかった。


「キラ、ハヤテを連れて中心部に戻るんだ。九条に会って状況の報告を」

「わかっ、た」

「それから、ハヤテの調子が戻らないようならフィール先生に見てもらって」

「うん」

「よろしく」

「まか、せて」


キラは再びハヤテをお姫様抱っこし、中心部に向かって走っていった。

お姫様抱っこは両手を塞ぐ行為だから治安の悪い曇天街では推奨されないが、キラなら大丈夫だろう。

気配には敏感だし、ずば抜けた聴力も持っている。

危険を回避し、必ず九条のもとにたどり着いてくれる。



「シロサギ、タイヤがなかなか頑丈で穴を開けるのが難しそうだ、人を切るのとはわけが違うな」

「ナイフが折れちまったよ」


親衛隊の2人は俺たちが話している間に仲間を召集し、タイヤと格闘してくれていた。細かい指示をしなくても動けるのは流石と言うべきか。


しかし、困ったな。タイヤに穴が開けられないとは。

曇天街に出回るような質の悪いナイフでは歯が立たないのか。


そうこうしている間にも住人たちは捕まってゆく。

どうにかしないと……。


「仕方ない、運転手を引きずり下ろす方が賢明か」


運転席の窓には特殊な加工がしてあるのか、中は全く見えない。


「おい、シロサギ。それなら試した奴がぼやいてたぞ。窓の装甲も硬すぎて無理だってよ」

「なるほど、曇天街の住人に抵抗されても支障がないように、対策は万全なようだ」

「どうするんだ?」

「最悪の事態を想定して動こう」

「最悪の事態?」

「住人が完全に連れ去られた場合だよ」

「……なあ、それって最悪か?」

「それ以上の最悪は俺が認めない。何がなんでも止める」

「「……おう」」


逆に言えば、連れ去られる可能性は否定できないってことだ。


あーもう!


連れ去られたあと取り戻す方が難易度高そうなのにぃ。

そもそも俺は戦闘力じゃなくて頭脳で勝負するたちなんだよ。

重機ばっかりで人が1人も出てこないんじゃ交渉もくそもないじゃないか。


あーもう!


……ふぅ、心のなかで毒づいて、安寧を取り戻す。


よし、だったら今話せる人に交渉だ。


助走をつけて、檻をのせている車の運転席の屋根に跳び乗る。手を使わずサラッと乗るのがポイントだ。もう交渉は始まっているのだから。


檻にとらわれた奴らがどよめく。

インパクトは十分与えられたな。


「よく聞け。俺はお前達の味方だ」

「なんだてめぇ」

「俺は曇天街四天王が一角、白鷺類。四天王なんて知らんという連中もいるだろうが、簡単に、クラウドと対等に渡り合える存在だと思ってくれればいい」

「なっ! クラウドと!?」


さすがは知名度抜群のクラウドだ。

知っているやつの方が多そうだな。


クラウドのボスの顔がちらつき、イラッとする。

あいつの鼻をへし折ってやろうか。


ああいいな、我ながらいい考えだ。

さあ、楽しいゲームを始めよう。


俺は口角をあげ、余裕をかもして宣言する!


「今から俺がお前達のリーダーだ!」


珍しく毒づくルイ。

使命に燃えるキラ。

絶望に震えるハヤテ。


闇うごめくゴミ処理騒動の顛末やいかに。

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