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ついに始まるゴミ処理。

だけど、いつもと様子が違っていて……。

「ルイ君、どうしたんだろう?」

「わから、ない」


ルイの空気がわずかに揺れたのを感じた。

でも、いつものルイが揺れなさすぎるのだ。

わずかな揺れは普通の人なら当たり前に起こすものなため、指摘することができなかった。


(ルイ、大丈夫かな……)


ガタガタガタ、ゴトン


ピクッ、音だ。

これ、ゴミ処理のときの。


「ハヤテ、ゴミ処理、きた」

「えっ嘘!? こんな夜中に?」

「いつもはもっと、明るいとき、に来るけど、でも、車の、音がする」


これだけ大量の車の音はゴミ処理のときにしか聞かない。

絶対、間違いない。


「じゃあルイ君に預かったアレの出番かな?」

「そう、だね」


私はポーチから丸いメカを取り出す。

そして、スイッチを押し、空中に放り投げた。


耳を塞ぐ。


リンリンリン、ビリビリビリビリ


門の外まで聞こえるほど大きな音というわけじゃない。

でも、気配や音に敏感に生きている曇天街の住人なら間違いなく気づくだろう。


リンリンリン、ビリビリビリビリ


「おい、なんだ」

「これって噂の通りなんじゃ?」

「ヤバイ、逃げろ」


住人たちが騒ぎ出す。


リンリンリン、ビリビリビリビリ


「思った以上に効果、ある、みたい」

「ほんと?」

「うん、みんなゴミ山から、逃げて、る」

「ハハッ! さすがルイ君だね」


そう、これこそがルイの言っていたデマの噂の効果だった。

ルイが流させた噂はこうだ。


ひとつ、今日ゴミ処理が行われる。

ふたつ、その噂はデマである。なぜなら、ゴミ処理の前には必ず警報のようなリンリンリンという音が鳴るから。


結果、音が鳴ったことを住人たちはゴミ処理の前兆と確かに受け取ったのだ。


かつてゴミ処理を経験した人間は、それに巻き込まれて死んでしまっていることが多いので、そんな警報は鳴っていなかったと確信を持てる人はいない。

うまいこと、噂を信じてくれた。


「で? これからどうするの? ルイ君と合流する?」


どうしたものか。ルイが離れたのは計画になかったことだし。

でも、ここで待っててって言われたんだよね。


「とりあえず、ここで、様子見る」

「了解!」


リンリンリン、ビリビリビリビリ


「ところで、これいつまで鳴ってるの?」

「……さあ?」

「もういいんじゃないの?」

「そうだ、ね」


ふんっ


空中に浮かんだままのメカをジャンプしてキャッチする。


リンリンリン、ビリビリビリビリ


うるさい。

カチッ、スイッチを切る。


静かになった世界で、


「キャー、助けて」

「ウワー、やめろー」


突然、住人たちの悲鳴が聴こえた。

ハヤテは気づいてないっぽいから、私の耳にだけ届いたようだ。


なんだろう、と耳を済ませて、愕然とする。


「なんてこと」

「キラちゃん? どしたの?」


ルイが『思った以上に厄介なことになるかもしれない』と言っていた意味はこれか。


焦りそうになる心を抑えるため、一度目をつむる。

そして、パチッと目を開き、ハヤテをお姫様抱っこのように抱えあげた。


「急いで、ルイと合流、する」



***********************



リンリンリン、ビリビリビリビリ


合図だ。

こんな真夜中に来るとは、いつものゴミ処理とはなにか違うらしい。

とりあえず、ゴミ山の様子を見に行こう。



「シロサギ!」

ゴミ山に向かっている道すがら、声をかけられた。

親衛隊の2人だ。


「君たち、無事でよかった」

「噂はちゃんと流したぜ、ゴミ山から住人も撤退してる」

「そうか! よくやってくれた、ロエも喜ぶだろう」

「ああ、ロエ様を慕ってる連中みんな手伝ってくれたからな」


なるほど、親衛隊の他のメンバーも力を貸してくれたわけか。

やはり、彼らを味方にできたのは大きかったな。


「ただ、集合場所に戻ってこない奴がいて」

「なに?」

「俺ら含めて6人で動いてたんだが、内2人が戻ってこないんだ。集合するのがメンドーになっちまっただけかもしれないが」


顎に手をあて、思案する。


まさかゴミ処理に巻き込まれたのか?

チッ、まずいな。ロエお姉さまに借りているようなものだから、全員無事に返さなきゃいけないのに。


「ロエのための行動ってのはちゃんと話してあるか?」

「ああもちろん! でなきゃ協力するような連中じゃねえし。ロエ様のためならってみんなやる気満々だったぜ」

「だとしたら、集合場所に戻ってこないのはやはりおかしいな。ゴミ処理に巻き込まれたか」


2人は顔を見合わせ、ため息をつく。


「……だったら、どうしようもないな」

「ああ、巻き込まれた方が悪い」


さすがは曇天街の住人、冷めている。


「巻き込まれた方が悪いってのは同意だが、このまま放っておいたらロエに合わせる顔がない。なんとしてでも助け出す」


2人は目を丸くしてから、顔を見合わせ、こちらに向き直る。


「シロサギ……冷酷な四天王って噂だったんだが」

「なんか思ってたのと違うな」


噂が正しい。

俺は自分の欲に忠実に生きているだけだからな。


ただ、彼らには違う受け取り方をされてしまったようだ。

ここで懐かれても面倒だ。少し牽制しておくか。


「俺は()()()()優しいよ」


ニコッと笑えば、2人はピクッと眉をあげ、ハハハと弱々しく笑った。


言外の意味はこうだ。

『敵になったら容赦しないぞ』


正確に意味が伝わったようで何よりだ。


「さて、ゴミ処理の状況を確認しにいこう」


そうして、2人を連れて走り出し、ゴミ山まであとわずかというところで、


「キャー、助けて」

「ウワー、やめろー」


叫び声が聞こえた。


「くそっ」


ゴミ山にまだ住人が残っていたのか、そう考えて唇を噛む。


数多の叫び声が聴こえてくるなか、果たして、ゴミ山に到着した。


そして、俺は自らの考えが甘かったのだと、思い知らされる。


「なあ、なんでゴミ山がそのままなんだ」

「じゃあこの叫び声はいったい?」


2人の言うとおり、ゴミ山はそのまま放置されていたのだ。

だが、キラが合図を送ってきた以上、間違いなくゴミ処理の車両が門を通ったはず。


ということは……ああなんてことだ。


この真夜中に仕掛けてきたことの意味、

数多の悲鳴が聴こえてくることの意味、


それは、俺の予想をはるか越えて、醜悪なる人間の闇だった。


いつだって恐るべきは、醜悪なる人間の闇。


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