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今回のゴミ処理はちょっと厄介なことに!?

ルイがキラに願うこととは。

「じゃあ、2人とも、ロエのために噂をうまく流してくれよ」

「「おう、任せろ!」」


ねえ様の関係者をうまくたらしこんだルイは、噂の件を彼らに任せ、こちらに向き直る。


そこへ問いかけたのはハヤテだった。


「で? そろそろ聞かせてくれるんだよね? 『ゴミ処理を止めるなんて言ってない』って言葉の意味を」


私としても、ゴミ山から人を退去させるより、ゴミ処理自体を止める方が楽な気がしている。

だって、門を開けさせさえしなければいいんじゃないかと思うし。


だから、ゴミ処理自体を止めないというルイの言葉には私も疑問を抱いていた。


だが、ルイは、今思い出したかのようにあっけらかんと答える。


「ああそれ? いや、だってゴミ山を掃除してもらえるのはありがたいでしょ。衛生的にもぜひお願いしたい」


「えー」


……うん、まあ、ルイらしい考え方だね。

ハヤテは不満そうだけど。


「あはは、まあ他にも理由はあるよ? ハヤテが教えてくれたろ、ウェザリア王家はコスモ王国からの使者を迎えるに当たってゴミ山をキレイにしたいんじゃないかって」


「ああ」


「ウェザリア王国の立場が弱いというなら、やはりゴミ山は心象を悪くするだろう。俺としても、ウェザリア王国の不利益になることは避けたいからな」


ハヤテが息を飲む。

そして、一度、地面に視線を落としたあと、再びルイに目を向けて呟く。


「……ルイ君は、王家を恨まない、のか?」


その問いかけには困惑の色がみてとれた。

ハヤテがここまで感情を(あらわ)にするのは珍しい。

いつもは明るく図太く飄々としているのに……。


今度はルイが目を見開いて、息を飲む。

まさか、と小さく呟くのが聞こえた。


何かに気づいたのだろうか。私は、首をかしげて見守ることしかできない。


気を取り直していつも通り穏やかに、且つ、力強くルイが答える。


「俺はね、ハヤテ。王家を否定する気はないんだよ。もちろん、曇天街に生きる者として怒りはある。だが、曇天街もウェザリアの一部。王国を脅かせば、その火の粉は曇天街にまで及ぶだろう。それは避けなければならないことだ」


「そう、かもしれないけど」


ハヤテは納得がいっていないようだった。

それに苦笑したルイはさらに言葉を続ける。


「俺は曇天街を守りたいのであって、怒りをぶつけたいわけじゃない。怒り狂ったところで、無駄な犠牲が増えるだけだ」


ルイはどんな状況にあっても感情に左右されることなく、常に合理的な考えを崩さない。

私はそんなルイをかっこいいと思っている。

どうしても感情で動いてしまうときが私にはあるから。


「もしハヤテが曇天街の境遇に心を砕いてくれるなら、見届けてくれると嬉しい。曇天街の住人の生き方を、強さを、優しさを」


ルイがニコッと笑いかけると、ハヤテは唇泣きそうな笑顔でうなずいた。ハヤテの空気はほんのわずかあった淀みさえも消え、どこか澄み渡ってゆく。


(すごく、キレイ……)


恍惚としていると、ルイから声がかかる。


「キラ、ゴミ処理のことだけど、思った以上に厄介なことになるかもしれない、ハヤテのことを頼む」


「ル、イ?」


「敵を倒すのではなく、ハヤテを守る闘いを」


ルイの真剣な瞳に覗かれる。

そこに宿る強い意思を、私は誰よりも感じているだろう。


「任せ、て」


強くうなずけば、ルイはふっと力を抜いて笑みを返してくれた。



**********************



親衛隊に襲われたときの対処では、ハヤテを守りながら。

先日の雷帝の子分に向けては、俺を守りながら。


総じて、キラは誰かを守りながら闘うのがうまいと思う。


それは、ひとえに戦闘力のないロエお姉さまを守ってきた経験に基づくものであり、また、キラの空気を感じ取る力によって裏付けされた技術であろう。

矛ではなく、盾としてのほうが役割を発揮するのがキラなのではないだろうか。


「さて、九条の情報ではゴミ処理が行われるのは今日か明日ってことだった。俺たちは門が見える位置で待機するよ」


「了解」

「うふふ、野宿するの? 楽しみだなぁ」


キラが緊張感をもって答えれば、ハヤテはいつもの呑気さで答える。


うん、通常営業、いいねぇ。


「野宿もいいけど、みんなで徹夜ってのも楽しそうだろう?」

「うん! 最高だ!」

「……交代制に、すれ、ば?」

「えー、みんなで徹夜楽しそうなのになぁ」

「俺的にはどっちでもいいけど?」

「……なら、徹、夜?」

「ハハッ! じゃあみんなで徹夜に決定!」



というわけで、門付近にある高い建物の屋上で張り込みをすることになった。当然、曇天街には街灯なんてものはないので、夜になるとなにも見えないが、キラも俺もある程度は夜目が利く。

キラの聴力と合わせれば、充分張り込みの意義があるだろう。



「うへぇ、なんも見えないよ。そういえば、曇天街でこんな夜中に外にいるの初めてだなぁ」

「懸命な判断だよ。夜目が利かないなら、外に出るべきじゃない」

「今日は私が、守るから、ダイジョブ」

「へへッ、キラちゃん頼もしい!」


夜更けにもなれば、不安になるのは当然だ。

今夜は月明かりも弱いから特に暗いしな。


だが、ハヤテの図太さなら心配いらないか。


「ふふっ、ハヤテって環境に適応するの早いよね」

「そう?」

「うん、曇天街にこんなに早く慣れる人間は珍しいよ」

「へえ、2人は? 曇天街に初めて来た日のこととか覚えてるの?」


初めて来た日か……。

雷帝の姿が思い浮かび、即座に頭を振る。


「私は、覚えて、ない」

「ふーん、ルイ君は?」

「俺も覚えてないよ、赤ん坊のときに捨てられたんだってさ」

「えっ、曇天街に捨てられたの? ちょっと、ひどいね……」

「ろくでもない親なんだろうね」

「ふーん、でもそれで生きてるってある意味奇跡じゃない?」


奇跡か。

かつて、奇跡の子なんて呼ばれたときもあったな。


懐かしさと、苦しさが渦巻くのを感じる。

(チッ、心なんて捨てたはずだろ)


「ル、イ?」


キラのまっすぐな瞳に覗かれ、居心地が悪くなる。


「俺ちょっと他の場所見てくるよ、2人ともここで待ってて」


この場から離れたいがためにそんなことを言った。

2人は少し戸惑ったあと了承する。


「わかっ、た」

「いってらっしゃい!」


俺は屋上から跳び降り、道を駆けた。

ルイの心に影を落とす思い出たち……。


次回、いよいよゴミ処理騒動勃発です!

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