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四天王って誰が言い出したんだろうね……

キラがしばらく様子を見ていた点。

クマが当然のように庇っている点。

見たところ全く強くはなさそうな点。


(うん、ハヤテを警戒する必要は特になさそうだ)


そう結論付けて、話題を変える。


「ふふ、じゃあ本題。雷帝の子分たちと揉めてた理由を聞かせてもらおうか」


キラは上目使いでこちらを覗き、クマは呆れたようにため息をついた。


そっちが本題だったのか、と言いたいんだろう。

無理もない。たった今、そっちを本題ということにしたのだから。


「うーん、なんかいきなり難癖つけてきたんだよねぇ」


それに気づきもしないハヤテは普通に返事をする。


「難癖? それは見逃せない話だな」


俺が少し意地悪な顔をするとクマが慌てて横槍をいれてきた。


「待て待て、小僧。坊っちゃんの言葉を鵜呑みにするなよ」


クマとしては俺が雷帝のところと揉めるのを避けたいんだろう。

自分が1枚噛んでる分、申し訳なさを感じてしまう質なのだ。

相変わらず優しいやつめ。


それをにわかに嬉しく思いつつ、ただ、少し不満を露にしてみる。


「クマ、俺だって四天王の端くれ。1人の話を鵜呑みになんてしないよ」

「クマ、ルイを、見くびりすぎ」


キラの援護射撃も加わって、クマはばつが悪そうな顔をした。

一方のハヤテは相変わらずけろっとしているが。


「ふーん、同じ四天王でもクマよりルイの方が立場上なの?」


だから、ハヤテの疑問はなんとも素直だ。曇天街らしくなく実に楽しい。


「まさか、四天王は()()だよ。ねぇ、クマ」

「ああ、そうだな」


クマが深くうなずいたことに、ハヤテだけでなく、キラまでもが目を丸くした。不本意だ。



*************************



クマはルイのことをいつも()()呼びだし、歳だって上なわけで、対等という表現に驚いてしまった。

いや、ルイが対等と言うのは理解できるが、クマがそれに深くうなずいたことが信じられなかったのだ。


だが、それを表情に出してしまったのは失敗だった。

ルイがこちらをジト目で見てくる。


これはなにかフォローした方が良さそうだ。


「……でも、最強は雷帝、だよね。雷帝も対等、なの?」


ルイが「ああそっちか」という表情をする。

うまいこと誤魔化せたようだ。


「まあ、確かに武力で言えば強いのは雷帝だけどね。でも、それだけが強さじゃないってことだよ。あくまで四天王は対等。じゃなきゃ四天王でいる意味がない」


いつも通り穏やかな口調ではあったが、そこにはいつも以上の信念が組み込まれているような気がした。


それにしても、対等でなければ四天王でいる意味がないとはどういうことか。

ルイの口調はまるで、自分から四天王を名乗ったかのようだ。

普通、異名というのは他者が呼びはじめて、なんとなく定着するものだと思うが……。


「……四天王って勝手に呼ばれる、ようになった、だけじゃない、の?」


私の素直な疑問は、しかし、ルイには意外だったらしい。

目を見開いたのち、ギラついた笑みを浮かべ、なにも答えてくれない。ルイのこのギラつきはたまに感じるが、今の質問のどこにそうさせる要素があったろうか。

思わず、首をかしげる。


そんな空気を破って、口を開いたのはクマだった。

ルイの方をチラチラ見ながら、あわあわと話し出す。


「あーあれだ、四天王ができる前は小僧以外の3人で三強って呼ばれてたんだ。で、小僧が雷帝のところから離反したときに四天王って名乗り出してな」

「じゃあ、四天王ってルイが、言い出した、の」

「まあ、そういうことになるな」


まさか、ルイが言い出しっぺとは。

いまだ黙ったまま茶をすすっているルイだが、否定しないところを見るに事実なのだろう。


「小僧が強いのは周知の事実だし、あの雷帝と喧嘩したってんだ、四天王って名乗るのに誰も文句は言えねぇわな」


ルイが静観していることにホッとしたのか、クマはいつものような落ち着きを取り戻しつつ話す。


「ふーん、ルイ君は全然強そうに見えないのにすごいんだね! 僕は最強っていう雷帝のことも気になるけど」


ハヤテは興味津々といった様子で身体を揺らした。

私としては、さっきまでルイを呼び捨てしていたはずのハヤテがなぜか君付けをしていることの方が気になるが。


「おいおい、気になるって、さっき坊っちゃんが相対してた連中がまさしく雷帝のとこの奴だろうが」

「え、そうなの?」

「勘弁しろや。つか本当になんで連中と揉めたんだよ」

「うーん、なんかサンカがどうのこうのって話してたけどよくわからなくて」

「サンカ?」


ハヤテは本当に状況を理解できていないらしい。

クマも頭をかいて諦めムードだ。

そこに、ゴトっと湯呑みを置く音が響いた。3人が一斉にルイの方を向く。


「おそらく雷帝の傘下のグループのことだろうね。チッ、どうせ目なんか届かないくせに組織を大きくしやがって」


ルイの空気が鋭い。ハヤテは息を飲んでいる。

クマは呆れ顔だが。


「雷帝が傘下を作ったなんて俺も知らねぇぞ。小僧は知ってたのか?」

「いや、知らないよ。そろそろ作ってもおかしくない頃合いだとは思っていたけどね」

「カッ、そうかい。相変わらずだな」

「どうやら、ハヤテは雷帝の傘下に喧嘩を吹っ掛けて、その傘下が雷帝のところに報告したってところかな?」


ルイがハヤテににんまりと笑う。


「えーー、そんなこと言われてもなぁ。喧嘩を吹っ掛けた覚えなんてないんだけど……」

「坊っちゃんが本当に喧嘩を吹っ掛けたとしたら、その場で返り討ちになっていそうなもんだしな」

「おじさんひどいーー」


クマとハヤテは、ずいぶんと仲がいい。

おかげでルイの空気も少し柔らかくなった。


「ま、話を聞くに、クマとハヤテの出会いのとき、ハヤテを追いかけてた連中がまさしく雷帝の傘下だろうけど?」


ルイがおかしそうに言えば、2人は目を丸くしている。

ついでに言えば私も、この少ない情報のなかでよくも断言できるものだと感心していた。


まあ、ルイには先の先まで考えを巡らせる力があるわけだから、私たちにはわからない何かをすでに確信しているのだろう。


「えーーあの人たち!?」

「紫なんて身に付けてなかったし、そりゃ違うんじゃねぇか?」


クマとハヤテに理解できないのは仕方あるまい。


「ふーん、傘下は紫付けてないのか。でも、それこそクマが言った通りだよ。ハヤテが傘下の怒りを買ったなら傘下の手でハヤテはどうにかなってるはずだ。それが、無傷ってことはハヤテ以外の誰かが手を貸したってこと。この場合、雷帝の名を出しても意味がないクマと見るべきでしょ」


ルイの考えは言われてみれば全くもってその通りだ。


「となると考えるべきは、ハヤテがあのときどうして追われてたかなんだけど。どうして?」

「えーっと、ただ、寝床を探してただけなんだけど、『この辺に空き家とかありませんか』って聞いたらなんかキレられて金よこせとかなんとか追いかけられた……ような?」


ハヤテは普通に疑問を抱いているようだが、それだけ聞けば、曇天街の住人には状況が正確に理解できる。


つまりは、飛んで火に入る夏の虫だ。


「坊っちゃん、そりゃあねぇわ。曇天街で人にもの頼むのはタダじゃ成り立たねえって話だ。ケンカ吹っ掛けてんのと同じだぞ」

「ふふ、しかも空き家なんて聞いたら、曇天街の住人じゃないのバレバレだしね」

「身ぐるみ剥がして、くださいって、言ってるような、もの……」


3人から次々と突っ込まれたハヤテは


「えーー、曇天街、難しすぎるよぉー」


手で顔を覆い隠したのだった。


ルイはどうやら四天王になにやら強いこだわりがある様子。


いずれ語られる日も来るのかな♪

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