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負けが描かれたゲーム。

逆転の目を見出だせるか!?

情報が命綱という俺と同じ考えを持っているキラの姉、ロエ。


そんな姉に仕掛けられたのは

「キラをこのまま側に置きたいなら、私にお金を払え」

という払っても払わなくてもこちらが負けるゲームだった。



「恐れ入りました。さすがはキラが尊敬するお姉さまでいらっしゃる」

「まあ!妹ちゃんがそう言ったの?」

「ええ。お姉さまのおかげで生きる術が身に付いたとひどく尊敬しているようで」


実際、キラは姉のことを恐れているわけだが、そこには畏れも含まれているだろう。畏怖と尊敬は似たようなもの。あながち間違ってはいないはずだ。


「ふふふ、妹ちゃんはいつも素直じゃないんだもの。外でそんな風に言ってるなんて嬉しい!」


姉は本当に嬉しそうに笑う。

一方、キラはというと俺をジト目で睨んでいる。が、とりあえず無視だ。


「先程、お姉さまは妹さんのことを自らの手足だとおっしゃいましたね」

「ええ、そうね」

「ということは、妹さんが中心部に行くことも当然、わかっていらっしゃったと?」

「…それは、、」

「手足だとおっしゃるなら、全てお姉さまの意思で動かねば成り立たないと思いますが?」

「…ふふっ。そうね、前言撤回するわ。手足は言いすぎだった」


(なるほど、そう来るか)

うまく丸め込もうと思ったのに、すり抜けられてしまった。

だが、一瞬崩れかけたのは事実。追撃しようか。


「それはよかった」

ホッとしたように告げてから、穏やかにけれど威厳を込めて言い放つ。


「私は自らの意思を持たぬ操り人形に傾倒するほど愚かではありませんから」


姉は少し目を見開いてから含み笑う。


「ふふふ、さすがはジョーカー」


(やはりか。俺のことをジョーカーと呼ぶのはこの世に1人しかいない)


「お姉さまが私のことをご存じなのならわかるでしょう。お姉さまにどんな後ろ楯があろうと私にはなんの牽制にもならないと」

「そうねぇ。でも、無意味ではない。違う?」

「…まあ否定はできませんね」


姉はなかなか喰えない女性だ。

情報に重きを置いているだけあって、こちらの事情もよく把握している。だからこそ、惜しい。


(情報が諸刃の剣だと知らなくてはね)


「わかりました。その後ろ楯を持ち出すというのなら、私も四天王として応えましょう」


こちらの空気が変わったことに気づいたらしい姉は少し身構える。逆にキラはホッとしたように肩の力を抜いた。


「お姉さま、あなたの仕掛けたゲームは実に楽しいゲームでした。しかし、私のことを見くびりすぎた」

「…どういう意味かしら?」

「あなたの敗因を1つずつご説明いたしましょう」


紅茶を一口すすり、カップを飲み干す。


「1つ、お姉さまは妹さんのことを大切に想っている。故に、妹さんが死ぬような未来を選べない」


キラは少し驚いて姉を見る。逆に姉はそれは当たり前だとうなずく。


「2つ、妹さんはお姉さまのことを尊敬していますが、同時に自立を望んでいる。たとえ死のリスクがあってもお姉さまから解放される道を選ぶ」


今度は姉が驚いた顔でキラを見る。逆にキラはそれが当然だとうなずいた。

それを見た姉は唇を噛み締める。


「3つ、私の後ろには情報屋の九条が付いている。情報に価値を見いだすお姉さまならこの意味、お分かりでしょう?」


私の問いかけに姉はため息をついて応じた。


「なるほど。キラの毒をなんとかする情報を九条なら見つけられる可能性があるってわけね。そして、それが100%ではなくても、キラはその道を選ぶと」


さすがに理解が早い。


「ええ、そして、死の可能性があるそのルートをお姉さまは許容できない。結局は手を貸してくださるでしょう?」


いたずらっぽく笑えば姉も困ったように笑った。


「完敗ね。さすがは()の四天王」

「ありがとうございます。情報に重きをおくという考え方は私も同じですよ。だからこそ、九条を味方にしている私に負け筋はない」

「あら、最初から私の負けは決まっていたというわけ?意地が悪いわ」

「ふふっ。お許しください。実に楽しいゲームだったもので」

「まあ、妹ちゃんを預かってくれるのがあなたなら安心ね。お任せするわ」

「ありがとうございます。必ず守り抜きます」

「当然ね。あと、私のことはロエでいいわ」

「ロエお姉さま、と呼ばせていただきます」

「もう!最高ね!ルイ君☆」



**************************



姉とルイはものすごい勢いで打ち解けた。

さっきから、ロエお姉さま!ルイ君!という謎のやり取りが横行していてちょっと腹立つ。


昔から姉は誰とでもすぐに仲良くなれるという性質を持っていた。それを活かして門番をたらし込んだり。全然強くないくせにこの曇天街で何不自由なく生きてきたのだ。それがルイとまでこんなにスムーズに仲良くなられると…正直殺してやりたいくらいイラッとする。


だけど私にはそれができなかった。

だって、わかってしまうから。姉になんの悪意もないことが。


私に毒を馴染ませる実験も、殺し屋としての仕事をさせることも、姉は欠片の悪意もなくやっていたのだ。


もしも悪意があったなら殺せばいい。でも、何の悪意もない人を殺すことは私にはできなかった。そして、悪意ない姉の言葉を否定することも非難することも私にはできなかった。


今のルイとのやり取りを見るに、姉も頭の回転が速いらしい。それもよくなかった。

たとえ姉に意見できたときがあっても、それはどんな方向からでも言いくるめられてしまった。


だから私は姉に従うしかなく、いつの間にか姉の支配から抜け出せなくなっていたのだ。


「…ねえ様」


私は久々にまっすぐ姉のことを見る。


「どうしたの?我が愛しの妹ちゃん」


そう、この言葉にも嘘はない。


「逃げ出して、ごめんね」


だからこそ、ずっと胸に秘めてきた想いをまっすぐに届ける。


「ふふっ。いいのよ。こんなイケメン君と同棲するなんて、お姉さまは嬉しいわ」

「…同居だよ、ねえ様」

「じゃあいずれ発展するのを楽しみにしてるわ!」

「…ナイと思うけど…」

「人生、何があるかわからないものよ?」

「…」


姉はどうしても私とルイを恋仲にしたいらしい。

どうせ否定しても言いくるめられることがわかっているので、無言で通した。


そして、その無言を勝手に良い方に解釈するのが我が姉だ。


「じゃ、妹ちゃんの同意も得られたことだし、パーティーにしましょ!」


程なくして机に並べられたのはステーキだった。


「んっ!!ステーキ!」

「妹ちゃんの大好物だって情報を仕入れたから用意しといたの」


純真無垢な姉の優しさに私は舌鼓を打った。


ようやくキラの鎖がほどけました。。

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