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前にちらっと出てきた彼が遂に!
雷帝のところと揉めてから3日が経った。
雷帝という男は基本的に燃えやすく冷めやすいタイプの人間で、怒るときは凄まじいが、1度冷めれば突っかかってはこない。
おかげでこの3日間は穏やかな日常に戻っていた。
だが、報復は忘れた頃にやって来る。
キラと3階で穏やかな読書タイムを謳歌していたとき、
コンコン
窓から音がした。だが、人の気配はしない。
一応、振り向いてみても何もないのでキラと目を合わせる。
コンコン
まただ。さすがに本を閉じ、窓へ近づく。キラもそわそわとついてきた。
サッシに指をかけ、立て付けが悪く開きづらい窓をなんとかこじ開ける。
ブーーーーン
耳に飛び込んできたのはハエのような音。
窓から顔を出し、音のする左側を向くと、
(…あぁ忘れてた)
小さなプロペラで飛んでいる黄色くてまるっこい何か。
俺がいつか壊したメカだった。
『ククッ、よくも俺様のメカを壊してくれたな』
馴染みの情報屋の声がしたと同時にメカから筒のようなものが出てきて、、
ビシャー
…顔面めがけて水が噴射された。
『詫びに情報寄越しやがれ』
ポタポタと垂れる水にため息をつき、
「九条、、」
俺は思わずその情報屋の名を呼んだ。
メカは時折クルっと縦回りしてこちらを誘ってくる。
どうやら、俺の元まで来いという九条からのメッセージらしい。
(まあ、こちらも知りたい情報はあるし…)
「わかったよ、今から行くよ」
仕方なく返事をする。
『濡れたまま来んなよ』
「ちっ、お前のせいだろ」
『ククッ』
相変わらず嫌な笑い方をするやつだ。
メカが帰っていくのを見送ってから窓を閉めた。
ため息をつき、濡れた髪をかきあげる。
それをじっと見ていたキラが口を開く。
「今のなに?」
「あれは知り合いの情報屋が作ったメカだよ」
「…前に、似たの見たことあるヨ」
「ああいうメカ使っていつも情報収集してるらしいから見てても不思議ではないけど。でも俺はメカに気づけたことないんだよなぁ」
「そうなの?」
「人の気配とかはわかるけど無機質なものはわかりづらくて」
「ソッカ」
キラが空気に敏感なのはわかっていたことだが、九条のメカに気づけるほどとは。俺はキラのスペックの高さに心底感心する。
「はい」
キラが2階から小さめのバスタオルを持ってきてくれた。
「ありがと」
それを持ったまま俺たちは家を出た。
九条は情報屋や発明家、ハッカーなど様々な顔を持つ。
面白いのは、この曇天街に何かを求めてわざわざやって来たらしいことだ。
曇天街に移り住む者のほぼ全ては身分を失ったり、お金に困ったり、どうしてもの事情があって仕方なく足を踏み入れる。
しかし、九条という男は金も身分もなにもかもを持っているのに、自らの意思で積極的にここに来た。
それを知ったときはなんて愚かな男なんだと軽蔑もしたが、今なら俺と違う何かを見ているのだとわかる。
その何かを俺が理解することはできないが。
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私は相手に対するルイの反応や空気から相手の立場やルイとの関係を推察する。
メカ越しの会話ではあったが、情報屋とルイの関係は良好に思えた。
水をかけられてもルイの空気が尖ることはなく、むしろどこかいつもよりリラックスしているような空気さえあった。
だから私は油断した。
ハアハアハア、クッ
息苦しさにしゃがみこむ。
胸に手をあてなんとか落ち着こうとするものの、どうにもできずもどかしい。
全身に脂汗をかいていることを悟り歯を食い縛る。
ルイが私の肩に片手をおき穏やかな空気を送ってくれるがどうにもならない。
正面の椅子に座りイヤらしく笑っている男をルイが殺気を込めて睨み付ける。
「キラに何をした」
「ククッ、何ってちょっとした実験だろ」
「それを了承した覚えはない」
「ククッ了承なら得たぞ、ロエからな」
その名前に心が沸騰する。
ハアハアハアッ
もう無理だ。これ以上は押さえられない。
私はあまりの苦しさに意識を手放した。
目を覚ますと薄汚れた白い天井。
ベットに横になっていたらしい。
頭がズキズキ痛むものの、状況を思い出そうとする。
たしか、ルイと一緒に情報屋の拠点を訪ねたのだ。そこで、認証プログラムに顔を登録するとかなんとか言われて、メカを向いたら突然水が噴射された。
いや、あれはおそらく水ではなかったのだろう。
毒。それもこの私に効くほど強力な。
ルイではなく私にかけられたのは幸いだった。いや、待て。もともと目的は私だ。情報屋がロエの名を口にしていた。
そこまで思い出したところで私の身体中が震え出す。
(やだ。なにこれ)
言い知れぬ恐怖に涙がたまるのを感じた。
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倒れたキラを隣の仮眠室に運び、俺は九条の向かいの椅子に座った。
「で、事情を説明してもらおうか」
先程は少し取り乱したが、キラが倒れたことで俺にも少し落ち着きが戻っていた。
九条の目には俺とは違うものが見えているはずだ。事情を知りたいなら、九条に合わせなければ知れない。そんなことはもうこれまでの経験でわかっていることだった。
「ククッ、さすがの俺様も殺気なんて向けられちゃあな。この街から逃げ出すところだったぜ」
「すまなかった。少し取り乱した」
「ククッ、よっぽど大事らしいな。あの嬢ちゃん」
「…そうらしい」
「ククッ、いいんじゃねぇの」
九条は心から愉快そうに笑う。
「で?ロエってのは誰だ」
「情報料払うなら教えてやるぜぇ」
「…いや、なら聞かないでおこう」
俺は自分の記憶力に自信がある。読んだ本の内容も基本的には忘れないしお気に入りの本なら一言一句覚えているほどだ。
そんな俺がロエという名に聞き覚えがない以上、俺の知っている人間ではない。
そして、キラに実験を仕掛けることに対して許可を出せるということはキラの関係者。キラの雇い主、もしくは家族。
「目が覚めたらキラに聞くとしよう。…覚めるんだよな?」
俺は少し威圧するような目で九条を刺す。
「ククッ、そりゃ実験の結果次第だぜ。この世に100%はねぇからな」
「なら質問を変えよう。キラが目覚める確率はどのくらいと見ている」
「そうだな、85%ってところか」
「…そうか」
思ったより低くていらっとする。
15%も目覚めない確率があるなんて。
「ククッ、不満そうだな」
「それはな」
「だが、俺はキラの命の恩人だぜぇ」
「…どういうことだ?」
殺そうとしたならまだわかるが命の恩人とはどういうことか。
疑念に満ちた顔で問いただす。
「それはキラが目を覚ましてから話そうじゃねぇか。俺は二度手間は嫌いなんだ」
命の恩人と言った意味もさることながら、九条自身がキラは目覚めると確信していることに肩の力が抜けるのを感じた。
この世の中で私が一番好きなキャラクターは、ケロロ軍曹に出てくるクルル曹長です。
というわけで、九条にはクルルエッセンスが大量に注入されております!
おまーじゅ?りすぺくと?
どうぞご容赦を(^。^;)




