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15

新たな四天王が明らかに!

雷帝のアジトからの帰り道、ルイはただ静かに歩いていた。

私もその静寂を壊さないよう静かに隣をゆく。


(…)


(…)


ソフィ姉さんはルイがもともと雷帝の元にいたのだと言った。

そして、ルイはそれを曇天街の禁忌だと言った。


今は四天王として対立している2人だが、いったい何があってそうなったのだろう。

裏切り者と呼ばれるなら、やはり円満な状況ではなかったのだろうが。


ソフィ姉さんに話せと言われてもルイは口をつぐんだままだ。

気になりはするが、ルイが話したくないのなら仕方ない。過去に何があろうと私がルイの側にいたいと思うことは変わらないのだから、それでいい。




結局、一言も話すことなく家に着いた。

ルイはすぐに3階へ上がってしまう。


付いていこうか迷ったが、今は1人にしておいた方がいいと判断し私は2階に留まった。


スープの残りもパンもあるので、テキトーに夜ご飯を済ませる。

ただ、このまま寝る気にはどうしてもならなかった。


少し外に出て、階段を降りたところに座って街を眺める。


春だが今日は肌寒い。

髪が風に舞い、それもまた心地よかった。


「おう、嬢ちゃんじゃねぇか」

「クマ…」


声をかけてきたのはくま商店のクマだった。

左手には大きな荷物を抱えている。


「こんなところで黄昏(たそがれ)てどうした?」

「…なんとなく、かな」

「そうかい、、暇してるなら付いてくるか?」

「…どこに?」

「配達だ」


快活に笑いながら誘われて、どうするか迷う。

でも、今家にいても気持ちが沈むばかりな気がした。


「…行く」

「よしきた!あっそうだ」


クマはなにか思い出したようにうなずいて、上を向く。


「おーい小僧!ちょっと嬢ちゃん借りてくぞー」

耳が痛くなるほどの大声でクマが叫ぶ。

思わず耳を押さえてしまった。すぐに髪を耳にかけるようにして取り繕う。


ルイからはなんの返事もなかったが、クマは気にすることなく歩きだした。

ただ私にはルイが小さく呟くのが聴こえた。

「まったく、近所迷惑なことだ」って。


それがなんだかいつも通りのルイだったので、私は勝手に気分が上がる。軽い足取りでクマの隣に並んだ。


「ねぇ、配達っていつもして、るの?」

「あー、週1くれえだな」

「そうな、の」

「店を長く(から)にはできねぇし、不定期に配達することにしてんのよ」

「なるほど」


だったらあんな大声だしたら店空けてるのバレバレでは…と思ったが、面倒くさいので指摘しないでおく。


「あ、ひとつ思ってたこと、あるの」

ふと、今日ルイと雷帝のやり合いを見て考えたことを思い出した。


「うん?なんだ?」

「…クマって四天王なの、かな?」

「ハハハハハ!!!」


私の問いにクマは大口を開けてお腹を抱える。

(これもう、店にいないのバレバレだよ)


「フー、嬢ちゃんおもしれえな」

呼吸を整えるようにしてから、クマは歩みを止めた。

私もそれに倣う。


「俺が四天王だって知らなかったのか」


やっぱりか。


「うん、知らなかった」

うなずいて見せればクマは髪をガシガシとかく。


「小僧が四天王だってのは知ってたんだろ?」

「今日知った」

「はあ?小僧のことも知らなかったのか!?」

「うん」


クマはあきれたようにため息をはいた。


「じゃあなんで小僧と一緒にいたんだ?」

「…拾われた、から?」

「拾われたって猫じゃねえんだからよ。四天王だとも知らねえでホイホイ付いていったのか?」

「なんと、なく、ルイなら平気な気がした、の」

「なんとなくって…」


そんなに変だろうか。いや、そうだ、変なのだ。

中心部に来てから自分の常識がずれていっていると再認識する。


クマは再び歩きだし、私も隣をゆく。

クマは前を向いたまま言葉を紡ぐ。


「あーなるほど。いや、わかった気がするな。小僧が嬢ちゃんを拾ったわけが」

「?」

「嬢ちゃん、猫っぽいもんな」

「へ?」


訳がわからないが、クマは1人で納得している。


「ルイは猫が好きなの?」

「いや、それは知らんが。でも猫ってかわいいだろ」


それはただクマの好みなのではないか。


「私は…ルイと一緒に飛んでいける鳥がいい、な」

「ほお?鳥な。シラサギに賭けてか」

「うん…鷹とか」

「ハハハッ!鷹とは大きく出たもんだな!」

「そうだ、ね。でも鷹なら鷺を守れる、でしょ?」


クマは一瞬歩みを止め、すぐにまた歩きだす。


「そういや嬢ちゃんは小僧を守りたいんだったか」

「うん」

「なるほど、そっちが理由か」

「?」


「よし、着いたぞ」

私の疑問を解決しないままクマは雷帝のアジト程近いビルに入る。夜目が効かなきゃ歩けなさそうな雰囲気に電気がつかないところなのだと想像できる。


うすらうすらと人の気配がするので、このビルには相当な数の住人がいるようだ。



ゴンゴン


ガチャッ


「よお、元気にやってるか」

「ああクマさん、いつもありがとうございます」

「これだいたい10日分の食料な」

「はい」


ゴンゴン


ガチャッ


「よお、おっ子供大きくなってんじゃねえか」

「はい、おかげさまで」

「粉ミルクとか多めに入れてあるからな」

「ありがとうございます」


ゴンゴン


ガチャッ


「よお、相変わらず辛気くせえ面だな」

「…金用意できてないっす」

「しょうがねえな、ツケでいいぞ」

「…はい」



いろんな家を訪ねては商品を渡し、お金を受け取ったり、物々交換にしたり、ツケでいいと言ったり。


クマのおかげで生きていられる人間がどれほどいるのだろうか。


帰り道、

「クマってすごい、ね」

私は素直に口にした。


「いやぁただの商売だがな。俺は小僧の方がすごいと思うぞ」

「どうして?」

「うーん、いずれわかるさ」

「そう、なの?」

「ふっ、ああ」


クマは穏やかに笑って、私を家まで送り届けてくれた。


「おかえり」


(んっ!)

声がした方を向くとルイが階段に座っていた。


「ルイ、、」

「クマありがとう」

「いや、なかなかに楽しい時間だったぞ」

「それはよかった」


いつも通りの穏やかで優しいルイがそこにいてなんだか目頭が熱くなる。


「ルイ、、ただいま」


「うん、おかえり」


というわけで、実はクマも四天王でした!

曇天街の住人を支える優しいおじさま!

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