表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/131

12

ついに雷帝とご対面!

じゃ行こうか、とルイが歩きだす。


そこにクマが声をかけた。

「おい、小僧…」


私もルイも歩みを止め、クマを振り返る。

クマは座ったまま静かにルイに語りかける。


「すまねぇな」


私にはその意味がわからず、首をかしげる。

ルイは、困ったように笑って、店を出た。


私も続いて店を出ようとして、

「嬢ちゃん」

クマに呼び止められた。


「小僧のこと頼んだぞ」


どうやら私にはわからない何かが2人の間にはあるらしい。

だが、クマがルイを心配していることはわかったし、それ以上を今私が知る必要はないと思った。


「言われなくても、ルイは私が守ってみせるヨ」


だから、当たり前のことを告げて済ませた。

クマが慈愛に満ちた顔で笑ったのが印象的だった。

(曇天街ってこんな街だったかな…)




私がくま商店を出ると、雷帝の子分達はルイに対して恐ろしいほどの敵意を向けていた。だが、ルイに手を出すなと言われているので我慢する。


そして、私達は揃って雷帝のアジトへ向かった。ルイいわく、曇天街の中心に住む者に雷帝のアジトを知らない者はいないそうだ。それは絶対に手を出してはいけない領域として認識されているからだという。


少し歩いて、雷帝のアジトは曇天街の中心部やや南西よりに位置していた。入り口となる地下への階段が見えて、子分達の空気が盛り上がったのがわかる。私もそれに呼応するように集中力を高めた。




地下だけあって暗い空間のなかに多くの人がうごめいているのがわかる。これだけの子分がいるというのなら、なるほど、確かに雷帝というのはただ者ではないようだ。

そして、ビリビリする感覚にアジトの奥を伺えば、暗くて姿はよく見えないが、そこに圧倒的強者の存在が認識できた。


ハッハッハァハッ

(なに、これ…!?)


突然身体が動かなくなり、呼吸が荒くなる。姉のとき以上になにかに支配されているような不快感が襲ってきて、立っているのもツラくなる。

(ヤバい…もう無、理…)

思わず倒れそうになって、それをルイに支えられた。


肩に片手を充てられ、ルイを見ればルイはこちらを見ていない。

ただ前を、その圧倒的存在を見つめている。


それでも、混乱に朦朧とする頭で、ルイに守られたのだということだけは理解できた。

手から流れてくるのはいつも通りの穏やかで優しい気だった。



*************************



雷帝のアジトに着けば奥から強大な殺気、威圧が襲ってくる。

(ちっ、やってくれる)


空気に敏感なキラはそれに当てられ、過呼吸ぎみだ。

すぐさま、肩に手をのせキラを正気に戻す。

(なんとか、落ち着いたか…)


だが、このまま殺気を向けられてはキラにはツラいだろう。

俺も殺気を放ち、相殺する。


途端、クスッと笑う声が聞こえた。

「よぉシロサギぃ。相変わらず顔に似合わない殺気してるなぁ」

嘲るようなべたっとした喋り方の男は殺気を緩めこちらを見据える。


「雷帝。俺の怒りを買いたいか」

努めて静かに、ただし殺気は緩めずに言葉を返す。


「おいおい、むしろ俺に喧嘩を売ってきたのはお前だろぅ、シロサギぃ」

「俺は喧嘩など売っていない」

「嘘つけよぉ、俺の仲間を殺してくれたろぉ」

「…先に俺の知り合いに手を出したからだ」


嘘である。だが、あちらに非があったことにしなければこの場を治められない。


「…お前の知り合いに手を出しただぁ?」

「ああ、あんたの仲間とやらが俺の知り合いに手を出した。だから、報復した。それだけだ」


俺の発言に子分達はいきり立っているが、気にしない。

大切なのは雷帝の意思ひとつだ。


「ふぅん。そうかぁ。でも、、それがほんとだって証拠ねぇよなぁ?」

試すようにこちらに視線を向け、雷帝は笑う。


それが子分達への合図となったようだ。子分達は一斉に俺たちを取り囲み円を作った。

そして、大きな殺気をはらみ襲いかかってくる。


キラを伺えば、雷帝の殺気に当てられた後遺症が残っているようで顔色はよくないが、子分達の殺気程度には問題なく対処できるらしい。そして、俺の指示を覚えていることを示すように剣も針も構えずただ静かにこちらを向いた。


それに安心して俺は腰の短刀を抜く。



**************************



だんだんと意識がはっきりしてくる。

ルイは知り合いに手を出された報復で子分どもを殺した、という筋書きを描いたようだ。


これに対して、子分達から

「嘘言ってんじゃねぇよ、この腰抜けが」

「雷帝に手を出してただですむと思ってんのか」

「これだから裏切り者は」

といった声が上がった。


(…裏切り者?)

私から見ればルイは誠実な人間なのだが、裏切り者呼ばわりとは癇に障る。まあ私はルイの過去を知らないのでなにも言えないのだが。


そして、雷帝の一言で子分達が攻撃体制に入った。

でも私はルイに手を出さないよう言われているのでそれに応じない。ルイを見れば満足そうに笑って腰の剣を抜いた。

ルイの戦闘を見るのは初めてなので少しワクワクする。



だが、次の瞬間、戦闘は終了していた。踊るように軽やかで鮮やかな剣技に思わず呆けてしまう。

具体的に言えば、ものの10秒足らずでルイは襲ってきた20人程度を殲滅した。心臓を正確に狙い1人1刺しで倒すのもそうだが、今戦闘を終えて一切傷を負わず、返り血の一滴も付かない様は異様なほど美しい。ルイの服がいつも真っ白な理由がわかった。


戦いに参加しなかった子分達は恐怖に後ずさる。

力の差を思い知らせるには十分だったようだ。 




ビリビリっ

(んっ)

突然、肌がビリビリし、ぞわっとする。

奥から圧倒的な力を感じさせる視線が向けられた。


目を向ければ、さっきまで暗かったはずのそこは、今、猛烈に明るい。なぜなら、その男が光っているから…!?


(デン、キ?)

その男は子分達と同じ全身紫のタイトな服を着ていて、金色の髪は腰まで長く伸びている。

そして、身体はなぜか発光し、髪はフワッと浮いている。私も冬乾燥していると髪が落ち着かないことがあるが、『身体の不思議』という本のなかでそれが静電気だと知った。あれはまさしくその状態だ。


(でも、どうして?)

疑問に思っていればルイが声をかけてくれる。

「本にあっただろ。雷帝は能力者だ」


(んっ、まさか!)

確かに私は『魔法使いと能力者』という物語を読んだ。

この世には魔法使いと能力者がいるんだって。でもそれはファンタジーの世界の話だと思っていた。


「この世には魔法使いも能力者も実在するんだよ」

ルイは雷帝を見据えたまま私にそう語る。


能力者というのは自分の体内にあるエネルギーを使い、不思議な力を起こせる者のことだったはずだ。どうやら雷帝は雷の能力者ということらしい。

(そっか、だから雷帝…)


人間は誰であっても雷に撃たれれば死ぬだろう。

であれば、雷帝が曇天街最強というのもうなずける話だった。

ルイが敵わないと判断するのも無理はない。


私達が喧嘩を売った相手の強大さに思わず唇を噛み締めた。


そうなんです。実はここ魔法も能力もありの超ファンタジー世界なんです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ