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【WEB版】異世界に召喚されなかったから、現実世界にダンジョンを作ってやりたい放題  作者: 日富美信吾


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77:みんなで出掛けることにした

 田助は、道本からモンスター肉を取り扱うレストランの評判を聞いた。


 いつものように衣子の祖父、大杉正和の豪邸での引き渡しを終えた時のことだった。


「人気殺到で行列ができるほど……!?」


 モンスター肉が好評であることは、道本からこれまで何度も聞かされてきた。


「取材の申し込みも殺到しているらしく」


 テレビやネットで取り上げられ、話題沸騰中だという。


 そんなことになっているとは、まったく知らなかった。


 モンスター肉を確保するため、ダンジョンに潜ってばかりいたからだ。


「機会がありまして自分も一度ですが食べましたが……」


 道本がそこで言葉を切った。


「食べたが……どうだったのだ、道本!」


 同席していた正和が、前のめりになって、道本に先を話すよう促した。


 道本がニヤリと笑う。


「それはもう、こんなにもうまいものがこの世にあったのかと、とても衝撃的でございました」


「そ、そんなになのか……!?」


「ええ、ええ、大杉様。そんなになのでございます」


 目を剥いて驚愕する正和に道本は大きくうなずいて見せてから、話を続けた。


 田助に振る舞われ、初めてモンスター肉を口にした時も、そのあまりのうまさに衝撃を受けた。


 あの時のことは、忘れられるものではない。


 だが、プロの料理人が調理したそれは、その時の衝撃を遙かに超えるものだった。


「本当に凄まじいものでございました」


 田助は腰掛けていたソファにもたれかかって、体が沈み込むのに任せた。


 道本の話が、それほどインパクトが強かったのだ。


 モンスター肉がうまいのは、言わずと知れたことである。


 田助が適当に作った料理であっても、スーパーで買ってきた肉を作ったそれより、ずっとうまくなるのだから。


 それをプロの料理人が調理する?


 そんなの、うまくならないわけがないじゃないか。


 気がつけば口の中に唾が溢れていた。


 こぼれてないよなと慌てて口許を拭ったのは、田助だけじゃなかった。正和も同じだった。


 田助は正和と顔を見合わせ、苦笑した。


 機会があれば――いや、これは是が非でも機会を作って食べなければと、田助は思った。




 廃病院ダンジョンの住居部分に帰ってくると、田助は衣子たちに出迎えられた。


「お帰りなさいませ、田助様。お風呂にしますか? お食事にしますか? それとも……」


 衣子はそこで言葉を切り、意味深な表情で田助を見つめる。


 テンプレならば「私にしますか?」となるはずだが……。


「ダンジョンにしますか?」


「さすが衣子、俺のことをよくわかってる……!」


 田助は猛烈に感動した。


 思わず衣子を抱きしめてしまうほどだった。


「田助様のことを世界の誰よりも愛していますから……!」


 うれしそうにはにかむ衣子の宣言に、


「たーぅ!」


 自分も愛しているとアンファが参戦。さらには、


「わふっ!」


 と、ポチまで飛び入りしてきた。


 結果、田助は衣子たちに、もみくちゃにされた。


 悪くない。いや、むしろいい。


 田助は頬を緩めた。


 その様子をウェネフが呆れたように、しかしなぜかちょっと羨ましそうな表情で眺めながら口を開いた。


「話しておきたいことがあるの。実は」


 居残り組である衣子たちだけでモンスター退治をしていたというのだ。


 解体は田助がいなければできないが、モンスターを倒して、マジックバッグに収納しておくことはできる。


 これまで田助たちは一緒にモンスターを退治することがほとんどだったが、モンスター肉を道本に引き渡すようになってからは、個別にモンスター退治をすることも多くなっていた。


 そうしなければ需要に応えられないという理由があったからだ。


 なので、田助は異世界ストアでマジックバッグを購入し、衣子、ウェネフ、それにシャルハラートに預けてあった。


 ちなみに田助が購入したマジックバッグは、時間経過なし、東京ドーム一個分は軽く収納できる代物だった。


 以前、道本に預けたものとはレア度が違う。


 これは超古代遺跡から発掘された秘宝だった。


 このマジックバッグを購入した時、ウェネフが「ラインバルト魔法王国の秘宝が……!?」と騒いだのは、今ではいい思い出である。


 そのウェネフの話は、まだ終わらなかった。


「というより、ここからが本題ね」


「だとしたら、ずいぶん長い前置きだな」


 田助の軽口に、ウェネフは肩をすくめて応じた。


 果たしてウェネフの本題というのは、田助が留守にしている間、そうやってモンスター退治をしておこうと言い出したのが、シャルハラートだということだった。


「は……!?」


 驚き、田助が視線を向ければ、シャルハラートが慌てふためいていた。


 それは、ウェネフの言葉が本当である証拠だった。


「ちょ、ちょっと! ウェネフったらどうして言っちゃうの!? それは言わないでって――」


「言ってないわよ?」


 駄女神でも神は神ということで、当初、ウェネフのシャルハラートに対する態度はそれなりに丁寧な感じではあった。


 だが、今では気安い態度で接していて、シャルハラートがそれを咎めることはない。


 シャルハラートがそれを咎めることはない。


 実際今も、


「確かに言ってはいないけど! そこはお約束みたいなものでしょ!」


 などと言いながら、ウェネフをぽかぽか叩いていた。


 じゃれているとしか思えない二人の様子は、微笑ましい限りだった。


 シャルハラートもずいぶん馴染んだものである。


「そ、そんなことより、あれよあれ!」


 どうやらシャルハラートは話を誤魔化すことにしたらしい。


 田助を含め、みんながそれに気づき、苦笑する。


「今回の売上的なものはどうだったの!?」


「めちゃくちゃ感謝されたよ。みんなのおかげでかなりの量を納品できたからな」


「ふふん、そうでしょ! めちゃくちゃ感謝しなさいよね!」


 シャルハラートがドヤ顔を決める。


 実際、道本にはかなり感謝されたし、それはシャルハラートを含め、ここにいるみんなのおかげだった。


「ああ、そうだな。感謝してるよ」


 田助一人だったら、絶対に無理な量だった。


 だが、衣子たちが力を貸してくれたから。


 思えば、モンスター肉を新たな金策として取引することにしてから、衣子たちには手伝ってもらってばかりいる。


 田助はダンジョンが好きで、一日中堪能していても飽きることはない。


 だが、衣子たちもそうとは限らない。


 衣子は田助と一緒にいられるからむしろしあわせだと言ってくれるが、それでも自分の都合につき合わせてばかりというのは、どうだろう。


「ねえ、感謝を示すのに言葉だけじゃ誠意が足りないと私は思うの」


 田助が素直に感謝したからか。シャルハラートがそんなことを言い出した。


「田助様、処しますか?」


 瞳のハイライトを消した衣子が訊ねてくる。


「処さない、処さない」


 田助は衣子を抱きしめ、落ち着かせると、


「そうだな。確かに言葉だけじゃ足りないな」


 ちょうどいい、と田助は呟く。


 この時、田助の頭の中にあったのは、道本の話に出てきた。モンスター肉を使った絶品料理を出す、レストランのことだった。


「みんなでレストランに行こう。好きなものを食べてくれ」


 衣子たちがうれしそうにうなずく。


 そういうことになった。

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