74:変化したスキルを調整した
本来ならば変化や進化したりすることなどないスキルを、田助はまたも進化させてしまった。
【アイテムボックス+】
これで倒したモンスターの肉のみを、あるいは肉でも特定の部位を選んでアイテムボックスに収納することが可能になった。
まさしく田助が望んだどおりの変化である。
だが、誤算というか、問題もあった。
当たり前だが、アイテムボックスに収納されなかった部分が残るのだ。
たとえばそれは皮だったり、血液だったり、内臓だったり、骨だったり……。
実際、密林竜がそうだった。
肉以外の、収納されなかった部分がすぐ目の前にドバッと広がり、『え、何この惨劇。猟奇殺人の現場じゃねえか!!』となったのである。
田助だけでなく、その場にいた衣子とウェネフの顔色もよくない。
毎回、こんなスプラッタな光景が繰り広げられるのは、いろんな意味でマズいだろう。
「それにもったいない」
そう言ったのはウェネフである。
「モンスターの素材は武器や防具に使えるもの」
その発言には田助も同意する。
現実世界ではその技術を持っている者がいないので、アイテムボックスに死蔵することになるのだろうが……。
自分で倒したモンスターの素材を使った装備というのは、冒険者(自称)として憧れるものがあるのである。
なのでいつかきっと現実にしてみせると意気込む田助なのだった。
「というわけで、肉だけでなく、それ以外の部分も同時に収納できるようにスキルを調整するぜ!」
田助が宣言すれば、ウェネフが「スキルを調整って……もう好きにして」と乾いた笑い声を出す。
「そう褒め」
「――てないからぁ! 呆れてるんだから! 勘違いしないで!」
見事なツンデレである。
要約すれば、褒めているし、呆れてもいないということになる。
腕を組んでうなずいていれば、がるると唸りながら睨まれた。
ここまでがテンプレだ。
さてと気持ちをスキル調整に切り替える田助。
「骨と肉、それに皮と血液と内臓と……」
「毎回、そうやって個別にするのは大変ではありませんか?」
衣子の発言には一理あった。
「それに相手はモンスターです。田助様の指定では足りない部位というものが存在することもあるかもしれません」
「なるほど」
それは大いにあり得ることだった。
なら、どうすればいいか――と考えた結果、田助が導き出したのは、
「素材として収納すればいいのか」
さっきのと何が違うかといえば、倒したモンスターを素材の塊として認識、それらを素材ごとに、しかも一気に収納するという荒技である。
田助が知らない部位も【素材】であることは確かなわけで、これなら指定し忘れることもないだろう。
イメージとしては、倒したモンスターをアイテムボックスに収納すると、素材別になっているという感じだ。
目指すべき形はこれで見えた。
あとはその形にスキルを調整すればいいだけだ。
田助はアイテムボックスから、これまでに倒したままアイテムボックスに死蔵していたモンスターを取り出す。
目指すべき形にスキルが成るよう、強くイメージする。
「収納……!」
失敗。
だがそれがどうした。
これまでスキルが進化した時を思い出せ。
一度で成功したわけじゃないだろう。
何度失敗しようとも決して諦めず、繰り返し何度も挑戦し続けた。
だから、今回だって諦めない。
なせば成るのだ。
絶対に。
見守っていた衣子やウェネフに疲れが見え始めた頃、その時はきた。
「よぉぉぉぉぉし、できたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
思わず全力で叫んでしまった。
収納したモンスターを確認すれば、アイテムボックスの中で素材ごとに分かれている。
気が遠くなるほど失敗を繰り返したが、そんなことがどうでもよくなるぐらい晴れ晴れとした気分だった。
イメージした形にスキルが成ったのだから。
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