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【WEB版】異世界に召喚されなかったから、現実世界にダンジョンを作ってやりたい放題  作者: 日富美信吾


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64:魔王退治を決意してみた


 田助がこの世界に作ったダンジョンに、いつの間にか魔王が発生していたらしい。


 ダンジョンコアであるアンファも認識していなかったのは、口を開けて驚いている姿を見ればよくわかる。


 驚いているといえば、ウェネフとシャルハラートもそうだ。


 ……いや、違う。


 確かに驚愕や衝撃もある。


 だが、それだけじゃない。


 それを上回る恐怖を見て取ることができた。


 ウェネフはこの世界にすっかり馴染んでいるが、異世界の生まれだ。


 おそらく異世界には魔王が実際に存在して、その恐ろしさを身近に感じてきたのだろう。


 シャルハラートは駄女神だが、神は神。


 間違いではあったが、田助を勇者として異世界に召喚しようとしていた。


 勇者というのは魔王に抵抗する存在。


 そんな存在を召喚しようというのだから、魔王の脅威がどれほどのものか、よく知っているはずだ。


 では、田助は?


「魔王……魔王だって!? くっ、何てことだ! 最高じゃないか……!」


 めちゃくちゃ喜んでいた。


 どれくらい喜んでいるかといえば、


「田助様、顔がとても残念な感じになっていますよ?」


 などと衣子に指摘されてしまうほどである。


 ちなみに、田助の顔がどれだけ残念なものになっても、衣子の田助に対する愛情は変わらない。


 いや、むしろ残念になればなるほど、この人は自分が養わなければならない! という思いが募って、ますます愛おしくなっていくのだった。


 話が逸れた。


 興奮していることを衣子に指摘された田助は衣子に応えた。


「当たり前だろ!? 魔王の登場に興奮しない方がおかしいって!」


 何せ、ラノベやWEB小説でお馴染みの魔王が現れたのだ。


「違うから! 興奮する方がおかしいから!」


 ウェネフが田助にツッコミを入れる。


「おい、ウェネフ。お前はいったい何を言ってるんだ? 大丈夫か?」


「え、あたしが心配されるの!?」


 何を言っているのかという眼差しを田助が向ければ、ウェネフは心外そうな顔で憤慨した。


「よろしいですかな?」


 諦観のテンペストを名乗った吸血鬼がのっそりとソファから立ち上がる。


「我輩たちの要求を伝えさせていただきます」


 果たして何を要求されるのか。


 田助の興奮は留まるところを知らなかった。


「我輩たちはあなた方からダンジョンを取り戻したいと考えています。つきましては我輩たちにダンジョンコアを引き渡していただきたい」


「それから!?」


「え……それから?」


 テンペストが不思議そうな顔をする。


「あんたたちの要求ってことは、それは即ち、魔王の要求ってことでいいんだろ?」


「ええ、まあ、はい。そうですね」


「なら、魔王の要求が、まさかそれだけとは言わないよな? なっ!?」


「あ、えっと……………………………………それだけ、なのですが」


「お、おいおいおい! 魔王なんだろ!? 俺たち人類を滅亡させる……なんてのは平凡すぎる。たとえばそうだな……奴隷にして死ぬまで――いや、死んでもアンデッドとして蘇らせ、魂がすり切れるまでこき使うとか、なんかそういう感じの野望はないのか!?」


「な、なんて恐ろしい発想を!?」


「四天王が衝撃を受ける意味がわからない!」


「いやいやいや、わかるから!」


 なぜウェネフは魔王四天王に同意するのか。


「……くっ、まあいい」


「ご主人様、なんでそんなに悔しそうなの……」


 ウェネフが困惑しているが、悔しいからに決まっている。


「テンペスト。あんたたちの要求に対して返答する前に一つ聞きたい。ここ最近のダンジョンの異変、あれはあんたたちの仕業か?」


「はい。我輩たちの仲間の一人の作戦です」


 そうか、とうなずく田助。


 異変の原因がわかって、すっきりした。


「それで返答は? 大人しくダンジョンコアを渡して――」


「断る」


「……今、何と?」


「聞こえなかったのか? 断るって言ったんだ」


 田助は胸を張る。


 ポチにまたがっているアンファに手招きして近くに呼び寄せると、抱き上げる。


「アンファは大事な家族だ。渡すわけないだろ。当たり前のことをいちいち言わせんな」


 田助が頬ずりしながらそう告げれば、アンファはうれしそうにはにかんだ。かわいい。いや、かわいすぎる。


 顔がだらしないことになっていると衣子に指摘され、慌てて取り繕う田助だったが、


「まったく取り繕えていませんよ?」


 と言われてしまうのだった。


「……では、仕方ありませんね。こうなったら」


「力尽くで奪っていくか?」


 そうなることは、既に予想していた。


 だからこそ、先ほどアンファを近くに呼び寄せたのだ。守れるように。


 とはいえ、アンファを抱きかかえたままでは満足に戦うことはできない。


「ポチ、アンファを頼む!」


「ぉん!」


 アンファを背中に乗せたポチの力強い返事に頼もしさを覚えつつ、両手が自由になった田助はアイテムボックスから真・断ち切り丸を取り出した。


 鞘から一気に抜き放てば、いかにも呪われている感じの禍々しいオーラが迸る。


 こんなことは初めてだった。


 どうやら真・断ち切り丸も、アンファのことを大事に思っているようだと田助は感じた。


「今日の真・断ち切り丸はひと味違うぜ?」


 衣子とウェネフも、それぞれアンファを守るための行動を起こしていた。


 田助同様、アンファを背後に庇いながら、テンペストに対して、武器を構えたのである。


 ただ一人、レベル1のままのシャルハラートだけが、


「わ、私はほら、超絶美しいだけのただの女神だから!」


 と、ソファの陰に隠れていたが。


 とはいえ、決してアンファのことをどうでもいいと思っているわけではないようで、胸の前で両手を握りしめて「がんばって!」と応援していた。




 武器を手にして構える田助たちに対して、テンペストは困ったような顔をする。


 テンペストを鑑定した結果、レベルは184。


 対して田助のレベルは170。


 困った顔をする理由がよくわからない。


 あるいは、鑑定できなかった能力値が微妙なのだろうか。


 実は鑑定でわかったのはレベルだけで、後のことは何もわからなかったのだ。


 鑑定を妨害するスキルか、装備、アイテムを持っているのだろう。


 ならば、なぜ、レベルを鑑定することができたのか。謎だ。


 微妙なレベル差。見えない能力値、スキル構成。


 魔王四天王を名乗る以上、それに相応しい実力の持ち主だと考えた方がいいに決まっている。


 これはいつものダンジョン堪能ではない。


 アンファを守るための戦いだ。


 誰かを守りながら戦うのは大変だと、ラノベかWEB小説で読んだ記憶が田助にはある。


 だが、それがどうした。大事な家族を守るんだ。そのためにできることをしろ――田助は自らを鼓舞した。


 何より、田助は一人ではない。


 衣子やウェネフもいる。


 絶対にアンファを守りきれる、そう考えていた。




 田助たちはアンファを守ることができた。


 ――というのは、少し違う。


 テンペストはアンファを狙わず、別の標的を狙ったのだ。


 別の標的とは誰か?


「我輩、とても非力なものでして。どうしてもこういうふうに策を弄しなくてはいけないのです」


 申し訳なさそうに謝るテンペスト。


 その脇、テンペストの影から伸びた黒い鎖で捉えられた衣子こそが、別の標的だった。


「彼女はダンジョンコアと交換です。天空ダンジョンでお待ちしています。それでは」


「待――!」


 テンペストは自身の影の中に呑み込まれて、その姿を消した。


 当然、衣子も一緒にだ。


「あ、あ、あ……」


 言葉にならない声を発して、田助はその場に膝から崩れ落ちる。


 衣子が連れ去られ、いなくなってしまった。


 田助はとてつもない喪失感に襲われる。


 自分が思っていた以上に、衣子のことを思っていたことに気づかされた瞬間だった。


 こんなことで気づくたくはなかったが。


 田助が危険な目に遭ったという話を衣子にした際、衣子に散々心配をかけ、怒られてきたが、いざ自分が衣子と同じ立場に立てば、決して大げさなことではなかったと理解できた。


「衣子……愛してる……衣子……」


 田助がそう呟いた時だった。


「はい。私も田助様を愛しています」


 すぐそば、耳元で衣子の声がした。


 幻聴だろう。何せ衣子はテンペストに連れ去られてしまったのだから。


「俺は……本当に衣子のことを愛しているんだ」


「うれしいです、田助様。ではぜひ、私に養わせてください」


「それは断る!」


「どうしてですか!?」


 男の矜恃が許さないからだ――とそこまで思ったところで、田助は首を傾げた。


「幻聴の割には、やけにはっきりと声が聞こえるな?」


「田助様、私の考えを聞いていただいてもよろしいですか?」


「もちろんだ。何でも言ってくれ」


「おそらく、それは幻聴ではないからだと思います」


「なるほど、その発想はなかった!」


 と衝撃を受けた田助だったが、すぐにその衝撃から立ち直り、自分のすぐそばにいる衣子を見た。


「そんなに見つめられると、何だか恥ずかしいです」


 そう言ってモジモジする衣子はとてもかわいい。違う。そんなことを思っている場合ではない。


「って衣子!? 何でここに!? テンペストに連れ去られたんじゃなかったのか!?」


「東雲流暗殺術のおかげです。お祖母様には感謝しないといけませんね」


「東雲流暗殺術、すごすぎるだろ!?」


 いや、今はそんなことはどうでもいい。


「衣子! お前が無事でよかった! 本当によかった!」


 田助は衣子を思いきり抱きしめた。


「た!?」


 とアンファが照れ、


「わふっ!」


 とポチがうれしそうに吠え、


「……そういうのは人目につかないところでやって欲しいんだけど」


 とウェネフが文句を言い、


「見せつけてくれるじゃない! このっ、このっ!」


 とシャルハラートに冷やかされた。


 だが、かまわない。


 田助は衣子をしばらくの間、抱きしめ続けた。




 しばらく、そうした後、衣子が聞いてくる。


「それで田助様、これからどうするおつもりですか?」


「そんなの決まってるだろ」


 田助は衣子の腰を抱き寄せたまま、ここにいるみんなに宣言する。


「魔王を退治する!」


 大事な家族を狙ったのだ。


 絶対に許すことはできなかった。

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