61:たこ焼きパーティーを楽しみつつ、ダンジョンの異変について考えてみた
深海ダンジョンから廃病院ダンジョン、その住居部分に田助たちは帰ってきた。
なので当初の予定どおり、たこ焼きパーティーを行うことになった。
――のはいいのだが、当初、予定していなかった事態に遭遇し、田助は困惑した。
「いやあ、これは困ったぞ? いったいどうしたらいいんだぁ……!」
「全然困ってるようには見えないんですけど」
シャルハラートが指摘する。
「むしろデレデレしてるようにしか見えない」
ウェネフも半眼で指摘する。
「なるほど。そういう見解もあるのか……」
田助が遠い目をして呟けば、
「「そういう見解しかない……!」」
シャルハラートとウェネフの声が綺麗に揃った。
実際、シャルハラートたちの指摘が正しい。
田助は困ったなどと言いながらもその実、まったく困っていなかった。
実際、田助が陥った事態には困惑する要素がどこにもないからだ。
で、どんな事態に陥っているかといえば、アンファと衣子に体の両脇から抱きつかれているのである。
衣子はロングホーン・タートルの体内から脱出してからずっと。
アンファは深海ダンジョンで何があったかを話してから。
ふたりとも田助に抱きついて離れようとしなかった。
最愛の嫁と最愛のダンジョンコアに抱きつかれて、田助は今、猛烈にしあわせな気持ちになっていた。
「よーし! たこ焼きをじゃんじゃん焼いてやるぞ!」
というわけで、ホームセンターで購入したホットプレートを利用してたこ焼きをどんどん焼いていく田助。
もちろんその間もアンファと衣子のふたりは田助にひしっと抱きついたままだ。
「ねえ、焼きにくくないの……?」
シャルハラートの質問はもっともなのだが、
「焼きにくいわけないだろ!? 今の俺は最高にしあわせ状態――つまり、ヘブン状態と言ってもいい! たとえふたりに抱きつかれて焼きにくかったとしても、そんなことは気にならねえんだよ!」
田助は言い切った。
「結局、焼きにくいって言ってるような……」
冷静に指摘するウェネフの方を、田助はさっと視線を逸らすことで見ないことにした。
……まあ、確かに。ちょっと動きづらいなーとか思わないわけではない。
「……もう。本当に田助様は無茶をしすぎです。いつだってこんなふうに無事に生還できるとは限らないのですよ?」
涙目の衣子と、
「たーぅ、たーぅ!」
同じく涙目で同意するアンファ。
こんなに田助のことを思ってくれているのだと思うと、ふたりのことが本当に愛おしすぎて、これくらいどうってことないと思えてしまうのだ。
こういうのを惚れた弱みというのだろうか。
ふたりをギュッと抱きしめ、そのぬくもりを感じてから、宣言したとおり、田助は深海ダンジョンで倒した深海大蛸を使ったたこ焼きを焼きまくった。
みんなの分まで食べ尽くそうとする駄女神を叱りながら、田助は別のことを考えていた。
今回、ロングホーン・タートルと戦うことになった一件だ。
あの後、ロングホーン・タートルは落ち着きを取り戻した。
腹をぶち破って田助が体内から脱出したのが功を奏したのだろう。
功を奏したというか、ぶち破られた痛みで頭が冷えたというのが正解だろう。
ともあれ、ロングホーン・タートルとはシャルハラートを通じて意思疎通できるようになった。
だから率直に言った。ワイルドペングルの巣を襲い、奪った雛を返して欲しい、と。
ロングホーン・タートルはそんなことはしていないと言った。
『女神として言うけど、この子、嘘はついていないわ!』
シャルハラートが肯定したことで一気にうさんくささが増したが、認めるのは業腹だったが、田助自身もロングホーン・タートルは嘘をついていないと感じた。
それに気になることがあった。
それはウェネフの問いかけから始まった。
『あなたは元々大人しいモンスターのはず。それなのにどうしてあたしたちに襲いかかったの?』
ロングホーン・タートルの答えは――『わからない』。
気がついた時には人間が襲いたくなって仕方なくなり、そこにちょうど田助たちが現れたというのだ。
ただ、そうなる直前、何者かが接触してきたような気がするらしいのだが、それが何者だったかを思い出そうとしても、モヤがかかって思い出せないという。
大人しくなったロングホーン・タートルと別れ、田助たちはワイルドペングルの元へ。
雛を取り戻したらここに来て欲しいと言われていた場所に、しかしワイルドペングルはいなかった。
しばらく探したが見つけることができず、衣子が今はとにかく早く戻ろうというので廃病院ダンジョンの住居部分に戻ってきて、現在に至る。
「なあ、アンファ。さっき聞いたロングホーン・タートルのこと、アンファは何も知らないんだよな?」
再度の問いかけにも、アンファは最初と同じ、
「たーぅ」
知らないという反応を返してくる。
どうやらダンジョン内に、ダンジョンコアであるアンファですら知らない異変が起こっているようだ。
「ちょっと、何辛気くさい顔してるのよ。たこパなのよ、たこパ! もっと楽しそうな顔をしなさいよ! そして私のためにたこ焼きをもっと焼きなさいよ!」
再び駄女神の言葉を認めるのはこの上もなく業腹だったが、その言葉には一理ある。
今はみんなと過ごすたこパを楽しむべきだろう。
ただし、
「何もしないくせに人一倍たこ焼きを食ってるんじゃねえ!」
そこだけはきちんと注意しておくべきだろう。






