51:生まれ変わっても相棒はやっぱり相棒だった
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生まれ変わった相棒を手に田助が向かったのは当然ダンジョンである。
現れたモンスターたちを相棒で一刀両断していく。
「秘技・百渦霊乱!」
説明しよう。
秘技・百渦霊乱とは、数えられないほど無数の渦を発生させ、相手の精神を激しい困惑状態に陥らせたところで切り伏せる、絶対無敵の業。
実際には存在しない、田助のでっち上げ必殺剣である。
「秘伝・神羅卍将!」
天空に棲まうとされる神々すらも己の配下として使役し、己の敵を未来永劫、いや、過去にまで遡って抹殺するという、最強にして最凶の、田助の中二心が炸裂したインチキ極意である。
当然、実際には存在しない。
そうやってモンスターたちを倒して向かった先は、本格的ダンジョン。
あのコロッセオのような大広間だ。
田助が足を踏み出せば、あの時と同じように人魂みたいな揺らめく光が出現して、そいつを浮かび上がらせた。
デーモンキング・ゴーレム。
「さあ、相棒! 行くぞ、あの時のリベンジだ!」
時間は少しだけ遡る。
裏技的手段でアンデッドモンスターを倒し続けることで、六巻のレベルがようやく50に達した。
これでミスリルを加工できるようになった。
というわけでさっそく六巻の工房に移動。
そこで断ち切り丸を復活させることになった。
砕け散った断ち切り丸をアイテムボックスから取り出し、田助は六巻に渡す。
「頼む。大事な相棒なんだ」
「了解っす。ところで形とかはどうするっすか?」
「というと?」
「新しく作り直すわけっすから、前の形にこだわる必要もないかと思うっす」
言われてみれば、確かに六巻の言うことにも一理ある。
WEB小説で見かける、異世界で刀を使って俺TUEEEEEE展開をやってみたいという理由から、田助はダンジョンを堪能するのに断ち切り丸を相棒に選んだ。
もちろん、妖刀だったというのも選ぶ際のポイントにはなったが。
新しく作り直すというのなら、剣にするのもありかもしれない。
そう思うのにはこういう理由もあった。
断ち切り丸の欠片を使ったところで、断ち切り丸が完全に蘇るわけじゃないんだよな、と。
今や断ち切り丸の意思みたいなものを感じることはできなくなっている。
なら、本当に新しくするというのも――。
「……いや、六巻。刀にしてくれ」
断ち切り丸の意思はなくなっても、せめてその形は遺したい。
断ち切り丸は確かに存在していたのだと忘れないために。
だから田助は覚えている限り克明に、六巻に断ち切り丸の形を伝えた。
「わかったっす。それじゃあこれから作業を始めるっす」
ミスリルの塊を熱しては叩き、伸ばしていく。
「おお、本当に加工できるようになってるっす!」
興奮しながらも六巻の手は休まない。
叩いて伸ばしていく中で、かつて断ち切り丸だった欠片たちを取り込んでいき。
熱して、叩いて伸ばして、折り曲げて。
その工程は、かつて田助もテレビで見たことがあったが、生で見ると迫力がまったく違った。
ミスリルを叩く音。
息苦しいほどの熱。
「…………っす!」
そうして六巻は断ち切り丸を見事復活させた。
そこにかつての断ち切り丸にあったような意思はないだろうが、それでも形だけは完全に復活した。
いや、以前の断ち切り丸より、輝きが明るいような気がする。
六巻から手渡され、これでアンファにも笑顔が戻るだろうと田助が思った、まさにその時。
『……コンゴトモヨロシク』
新しくなった断ち切り丸から、そんな思念が伝わってきた。
デーモンキング・ゴーレムを無事に倒すことができた。
というより、前回よりずっと楽に勝つことができた。
田助がレベルアップしていることもあったが、相棒のおかげだ。
当然、砕け散るようなこともない。
「やったな、相棒!」
田助は断ち切り丸を――いや、真・断ち切り丸を見た。
どうして意思が戻ったのかはわからない。
その前に、本当に断ち切り丸の意思かどうかという疑問も生じるだろう。
だが、田助はこいつは間違いなく相棒だと断言できる。
真・断ち切り丸を鑑定すれば一発だ。
――――――――――――――――――――――――
●真・断ち切り丸
変態刀鍛冶・六巻伍郎が山田田助の依頼によって作り上げた。
切れ味は鋭く、切れぬものはなく、何ものにも砕くことは叶わない。
ただし、装備すると呪われ、運の数値が劇的に下がる。
――――――――――――――――――――――――
最後の一文がそうだ。
誰もこの刀に呪いなどかけていない。
それなのにこれ。
間違いなく、こいつは田助の相棒、断ち切り丸以外の何ものでもない。
実際、装備したら、田助の運の数値は再び【1】になった。
能力値が下がるなんて最低最悪以外の何ものでもないのに、田助は大喜びしてしまった。
変態だからではない。
相棒と再会できたことがうれしかったからだ。
「それじゃあ、戻るか」
田助は鞘に戻した相棒を一撫でしてから、ダンジョンを出るため、歩き出した。
廃病院ダンジョン、そこに併設された住居部分に戻ってくると、ちょうど衣子が出掛ける支度をしているところだった。
「どうかしたのか?」
「知人が怪我をしたという連絡が入りまして」
「そういうことなら、俺も一緒に行った方がいいだろ」
「いいのですか? ダンジョンから戻ってきたばかりでお疲れなのでは」
「衣子がそんなに慌てるほど、大事な人なんだろ?」
出掛ける時はいつも完璧に衣装をコーディネートしている衣子なのに、今日は微妙にちぐはぐになっている。
上は春物で、下は冬物。
「こ、これは……」
田助の指摘に衣子の顔が赤くなる。
「死んでなければエリクサーで何とかなるから、落ち着け」
「はい……!」
着替えに戻る衣子を見送る田助。
「さて」
留守中、シャルハラートが変なことをしでかさないか心配だが、アンファとウェネフがいれば何とかなるだろう。
「わふっ!」
「そうだな。ポチもいたな。頼むぞ、ポチ。駄女神が変なことをしたらガブっていいからな? むしろ何もしなくてもガブっていいぞ?」
「何でよ!? しでかさないからガブらないでくださいお願いします……!」
それはもう見事な土下座である。
女神の威厳はどこにも感じられない。
いや、逆にここまで見事だと神々しさを感じたり――なんてことはやっぱりなかった。
「さすがに私だって身の程はちゃんとわきまえてるんだから!」
そういうことにしておいてやろう。
着替えて来た衣子とともに、知人が入院しているという病院へと向かった。
病室に駆け込む衣子。
「雫ちゃん、大丈夫ですか……!?」
ベッドに横になっていた黒目黒髪のお嬢様っぽい少女が体を起こす。
どこかで見たことがあるような気がすると思っていたら、少女が田助を見て驚いたような顔をした。
「あ、あなたは……あの時、コンビニ強盗を退治した人!」
「ああ、あの時の女子高生! 相原さんだよな!」
「水無瀬です!」
「………………惜しいな」
「全然惜しくないですから!」
これだけ全力でツッコミを入れられるということは元気に違いないと田助は思った。






