43:草原ダンジョンで経験値を稼いでみた
前話(42)を修正して、衣子が田助を助けるシーンを追加しました。
田助は火山ダンジョンで衣子に命を救われ、ときめいた。
違う。
いや、違わないが、そうではない。
もっと強くなりたいと思ったのだ。
自分の身は自分で守れるのは当たり前。
その上で大事な人も守れるようになりたいと。
そのために必要なのは何か。
レベル上げだ。それしかない。
というわけで、田助は今日もダンジョンに赴く。
「いってくる……!」
ニヒルに決めて。
衣子が田助を見て、ほんのりと頬を赤らめる。
「もう、田助様ったら。寝癖がついていますよ? ……はい、直りました」
決まらなかった。
ちくしょうとか思っていない。
ポチ、それにウェネフも来たいというので連れてきたのは廃病院ダンジョンの次の階層。
草原ダンジョンだ。
出現するモンスターの種類も豊富で、比較的経験値を溜めやすいのだ。
ここも廃病院ダンジョン、火山ダンジョンと同様に新要素が加わった。
これまではところどころに木々が生えていたりするものの、見渡す限り一面の草原でしかなかった。
もちろん、ただの草原ではない。
ゴブリンやコボルドといったWEB小説でお馴染みのモンスターがいる一方、動物系モンスター、昆虫系モンスターも闊歩していた。
たとえばそれは、いつの間にか倒していたボスモンスターである、体長10m近くの漆黒の巨大熊。
他にもこの世界では普通には存在しないサイズや火を吐いたり、砂を吐いたり、金属の毛で全身を覆われるなどの特徴を持った猪、鷹、猫、狸、狐……そういった動物っぽいモンスター。
昆虫系モンスターもやはり、普通には存在しないサイズだったり、特徴だったりを持っていた。
ダンジョンを堪能していると、WEB小説でお馴染みモンスターと動物系モンスター、それに昆虫系モンスターがそれぞれ縄張り争いをしている、なんて場面を目撃することもあった。
あと、草原ダンジョンらしく、植物系モンスターもなかなか種類が豊富だった。
ただの草花に擬態していて、突然襲ってくるというドキワク感があったのだ。
元よりダンジョンの中で気を抜くことはできないのだが、草原ダンジョンは牧歌的な見た目とのギャップが凄まじかった。
そんな草原ダンジョンに加わった新要素、それは迷路要素だ。
それって単純に普通のダンジョンになっただけじゃね? と思う人もいるだろう。
だが、違うのだ。
この迷路は生きているのだ。
文字どおりの意味で。
丈の長い植物でできているというのもあるが、刻一刻とその姿を変えて、方向感覚を狂わせるのである。
ついさっき、自分が通ってきた道が塞がり、行き止まりだったところに新しい通路ができている……。
無理矢理、植物を割って通ろうとすれば、植物が切れ味鋭い刃物となって、こちらの体を切り刻んでくる。
それは植物を傷つけようとしても同じ。
上空に逃げることも許されない。
ツタが伸びてきて絡め取られてしまうからだ。
草原ダンジョンの迷路を抜けるには、迷路が姿を変える前に走破する必要があった。
ただ駆け抜けるだけなら、おそらく何とかなるだろう。
だが、ここはアトラクションではなく、ダンジョンだ。
モンスターが現れる。
しかもこっちの事情などお構いなしに、WEB小説でお馴染みモンスターが、動物系モンスターが、昆虫系モンスターが、植物系モンスターが、まるで連係しているかのように次々と襲いかかってくる。
「おいおい、お前ら! 縄張り争いしてる時の仲の悪さはどこにいったんだよ……!」
田助が文句を言うものの、そんなものは知らないとばかりにモンスターは攻撃を繰り出してくる。
それらを躱し、あるいは捌きながら、田助は仲間を振り返る。
ポチやウェネフを頼れば、進むのは簡単だろう。
だが、それでは意味がない。
「ポチ! それにウェネフも! 手出し無用だ!」
「わふっ!」
ポチと、
「わかった……!」
ウェネフの答えに、田助は気持ちを引き締める。
さあ、戦いの始まりだ。
すでに装備していた相棒である断ち切り丸を勢いよく引き抜く。
「覚悟しろよ、お前ら……!」
これまでに戦ったことのあるモンスターはその弱点を突いて迅速に倒して。
初めて遭遇するモンスターは鑑定で素早く弱点を見極めて倒す。
その際、必要とあらば異世界ストアで有効なアイテムを購入することもある。
その時は嫉妬の感情を伝えてくる断ち切り丸をなだめたりするのに苦労するのだが。
とにかく、やることが多くて大変だ。
だが、それがいい。
ダンジョンを堪能しているという充実感がある。
何より順調に経験値がたまっていき、レベルも上がる。
いいことだらけだった。
「さあ、次は誰――だぁぁぁぁっ!?」
田助が変な声を上げてしまったのは現れたのが美女だったからだ。
しかも、ボンッ、キュッ、ボンッのナイスボディを惜しげもなく晒す大胆さ。
「ダイナマイ……ッ!」
ただし、その肌は緑色。
膝から下は足のように蠢くツタを生やした大きな花に埋もれている。
アルラウネ。
モンスターだ。
いや、本当にモンスターだろうか。
だって、田助が立ちきり丸を構えれば悲しそうな顔をするではないか。
そして断ち切り丸を下げれば笑顔になる。
このモンスターとなら友好を築けるかもしれない。
そう、ポチとそうなったみたいに。
――なんてことを思っていた時だった。
「ポチ、殺っちゃって」
ウェネフの物騒な声を合図にポチが口から炎を吐き、アルラウネを燃え上がらせた。
あっという間に燃え尽きてしまうアルラウネ。
「お、お前は何てことを――」
するんだ、と抗議しようとした田助だったが、
「はい? 何か問題でもございましたか、ご主人様?」
振り返った先にいたウェネフは大層ご立腹じゃった……。
「……な、なぁ、なんで怒ってるんだ……?」
「べ、別に怒ってなんかいないから!」
「いやいやいや!? めちゃくちゃ怒ってるじゃねえか!」
その証拠に、絶対に美少女がしてはいけない顔で田助を睨みつけているのである。
「怒ってないって言っているでしょ! というか、アルラウネに見とれて鼻の下を伸ばしてたってキヌコに言ってもいいの?」
「はい! ウェネフは怒ってません! だから言わないで……!」
いや、鼻の下を伸ばしていたなんて事実はこれっぽっちもないのだが。
誤解を与えるような真似をするのはやめた方がいいと思うのだ。絶対に。
「わかったわ」
「ありがとう、ウェネフ!」
「伝えておくから」
「何でだよ!?」
「ふーんだっ。知らないっ」
ウェネフの逆鱗がどこにあるのかはわからないが、これからは気をつけようと田助は思った。
ちなみにウェネフはちゃんと衣子に報告した。
その後のことはご想像にお任せします。
「大丈夫ですよ、田助様。天井のシミを数えているうちに終わりますから」
「それ、女の子の言う台詞じゃないからぁ……!」






