41:廃病院ダンジョンがバージョンアップしていた
その日、今日は単身でダンジョンに挑もうと田助が装備を確認していると、
「たーぅ!」
アンファに呼び止められた。
「どうした?」
「たー! たーぅ、たー!」
なるほど。さっぱりわからない。
だが、とにかくすごい自信が漲っていることだけは伝わってくる。
衣子に通訳を頼めば、
「今日のダンジョンはひと味違うそうですよ、田助様」
ということらしい。
だから、自信が漲っているのか。
「わかった。なら、思う存分、今日も堪能してくるよ」
「気をつけて、タスケ」
ウェネフと、
「イッテラッシャイマセ、タスケサマ」
ペッ○ーくんみたいになってしまったシャルハラートにそう言われて、
「おう!」
改めて田助はダンジョンに向かった。
といっても住居部分もダンジョンに含まれているのだが。
そこは気分というやつである。
廃病院ダンジョンに足を踏み入れてすぐ、変化に気がついた。
廃墟感が増しているのである。
ここは元々、幽霊屋敷と呼ばれるほどの廃墟だった。
だが、ダンジョンコアを設置したことで自動修復機能が働き、廃墟感は残しつつもある程度は綺麗になっていたのだ。
そのことが廃病院ダンジョンをお化け屋敷っぽくしていたのだが、今は廃墟に近くなっている。
そういう意味では、最初に訪れた時のようだ。
だが、これにどんな意味がある……?
そんなふうに思っていた時だった。
物音がして振り返る。
「モンスターか!?」
違う。何もいない。
それらしき気配も感じない。
「気のせいか……?」
そう思った瞬間、ケタケタと気味の悪い笑い声が薄暗い廊下に響き渡った。
「何だ……!?」
すぐにわかった。
壁際に落ちていた、首が取れかけているぼろぼろの少女の人形が笑っているのだ。
そういうオモチャだろうか。
「何だよ、驚かすなよ」
以前は見かけなかったが、それは田助がモンスターにばかり気を取られていたからだろう。
ほっと胸を撫で下ろし、歩き始めようとした途端、再び異変が田助を襲う。
ジリリリリ! という、一昔前の電話の呼び出し音が突如として鳴り響いたのだ。
音のする方を見れば、そこにはやはり昔懐かしい黒電話が転がっていた。
「お、おいおい、やめてくれ」
電話線は切られ、どこにも繋がっていないのだが。
電話はしばらく鳴り続け、唐突に切れた。
「なんだこれ……」
今までのダンジョンと毛色が違う。
これまで幾度となくダンジョンを攻略してきた。
中でもこの廃病院ダンジョンは起点になることもあって、攻略した回数なら一番多い。
だが、心霊現象のようなこんな感じは今回が初めてだった。
「……なるほど。確かにこれは今までとひと味違う」
今まではモンスターや罠といった、ダンジョン特有のあれこれに気を配っていればよかった。
だが、これはそれらとはまた微妙に違う緊張感を田助に与えてくる。
「そう言えばアンファ、タブレット端末をプレゼントしてから使いまくってたよな」
ネットを駆使してあれこれ検索したり、動画を見ていたり。
その結果、こういうものを学んだのだろう。
田助の視界を白い影が横切る。
一瞬、ダークストーカーと呼ばれる実体を持たない、影だけのモンスターかと思ったが、あれは黒い影だ。
それにモンスターみたいな気配は感じなかった。
これも突如鳴り出す電話や笑い出す人形みたいな感じのものだろうか?
――と思った時だった。
背後に殺気が膨れあがった。
「!!」
となって大きく距離を取って振り返れば。
田助が立っていた場所には血に濡れた斧が突き刺さっており。
その持ち主はアイスホッケーのマスクをかぶった怪人だった。
鑑定すれば【13号】という名前のモンスター。
「お、おいおいおい、アンファ……マジかよ」
アンファが持つダンジョン管理のスキル、その中に含まれるモンスターに関するスキルで、新しいユニークモンスターを生み出したらしいが、
「なんて恐ろしいんだ」
見た目とかもそうだが、何より権利的な理由で。
本当に恐ろしすぎる。
ちなみにレベルは50。
簡単に倒せると思いきや、再び電話が鳴り出したり、人形が笑い出したりして、田助の集中力を削っていく。
雰囲気作りの演出だと思っていたが、気を削いだり、逸らしたりするトラップだったようだ。
「くそっ」
それでも何とか倒すことができ――。
「GRUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!」
倒すことが――。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
倒す――。
「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
「不死身設定まで再現してるのかよ!? いい加減、くたばれ……!」
断ち切り丸のおかげもあって、何とか倒すことができた。
ちなみにアイテムをドロップした。
血濡れのマスクである。
装備したら絶対に呪われるやつだと思いつつ鑑定したら、
「防御力、高っ! あと呪われないのかよ!」
この後、もうしばらく廃病院ダンジョンを周回していたら、【13号】と同じでどこかで見たことがあるような怪人がうようよ出てきた。
ホラー映画とかに入り込んだ気分で楽しくはあったが、嫌な感じの汗が出て止まらないのでアンファには注意しておいた。






