32:嫁に奴隷を買ってもいいか相談してみた
ローファンタジー月間2位になりました。
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今日もダンジョンに潜って、田助たちはレベルアップに勤しんでいた。
森林トロールと呼ばれるモンスターとの戦いを終え、田助はお座りをしている巨大化したポチを見上げる。
お寺なんかにある大きな仏像並なので、ちょっとだけ首が痛い。
そんなポチの腹に手を伸ばすと、全力で撫で回した。
「ありがとな、ポチ。ポチのおかげで今日もレベリングが捗ったぜ」
ポチは「わふっ」と答えながらも、どこかちょっとだけ元気がない。
原因はわかっている。
コボルドだったはずのポチが魔石の大量摂取の果てに謎進化を遂げて、スカーレットフェンリルというモンスターになった。
炎属性ということもあり、口から炎を吐き出すことができるようになったし、何と炎属性の魔法まで使えるようになった。
なので田助がポチから魔法に関するレクチャーを受けようと考えるのは、自然の流れだった。
それがつい昨日のこと。
ポチもやる気になって、実に真剣に教えてくれた。
「わふぅ!」
とか。
「わぉん!!」
とか。
「わぅん!!」
とか。
そんな感じで。
田助も田助で、
「こうか?」
とか。
「なら、これはどうだ?」
とか。
「それでもないなら、こんな感じか!?」
とか。
真剣に向き合ったわけだが、ポチが何を言っているのかわからず、レクチャーは終了。
結果、田助の魔法はしょぼいまま。
最悪だったのは、ポチが尋常ではなく落ち込んでしまったこと。
ポチは充分に役立ってくれていると、とにかく褒めまくって何とか気持ちを浮上させ、さらにこうしてレベリングにつき合ってもらうことでポチ自身がすごいことを自覚してもらおうとしたわけだが……。
ついさっき、モンスターに止めを刺そうと、しょぼい魔法を使ってしまったのがいけなかった。
衣子に、
「田助様……!」
と言われた時にはすでに遅くて、ポチは再び落ち込んでしまった。
廃病院ダンジョンの住居部分に戻ってきたが、そのまま。
小さくなったポチは部屋の隅で「くーん」となっている。
アンファがよしよしと撫でているのを横目に見ながら、田助は考えた。
レベルが60になろうというのに、魔法はしょぼいままだ。
使い続ければ熟練度が上がって何とかなると思っていたが、どうやら見通しが甘かったらしい。
それに、使うたびにこうやってポチが落ち込む姿も見たくない。
だからといって、魔法を使わないという選択肢を田助は選びたくなかった。
なら、どうする?
「……これしかない、か」
何やら真剣な表情で田助が呟けば、
「どうかしましたか? 田助様」
隣にいた衣子が聞いてきた。
「ポチのこと、それに魔法のことを考えていたんだ。どうすれば解決できるのか。その方法はないのかって」
「見つかりましたか、その方法は」
「ああ、見つかった。これしかない」
田助は重々しい雰囲気で言った。
「魔法に詳しい人を雇う! そうすれば俺は魔法が使えてうれしいし、ポチも落ち込まずに済む。まさにwinwinじゃないか!」
「なるほど。いい考えだと思います」
「おお、衣子もそう思うか!?」
はい、と衣子がうなずいた。
「ですが、問題がひとつ。魔法に詳しい人はどこにいるのでしょう?」
「まあ、この世界にはいないだろうな」
いたらいたで会ってみたい。
「では、どうするのですか?」
「衣子、俺のスキルを忘れたか? 異世界ストアで買うんだよ。魔法に詳しい奴隷を……!」
「奴隷、ですか」
微妙に眉をひそめる衣子に対して、田助は異世界ストアで売買されている奴隷について詳しく話した。
人身売買みたいな犯罪的なものではなく、働くことで自らに課せられた借金やら罪を清算するものであること。
「なるほど。そういうことなら大丈夫です」
衣子の理解は得られた。
では、次は実際に購入する奴隷を検討しよう。
そう言えば、当初、ダンジョンを攻略するにあたって購入したいと思っていた金髪美女奴隷は魔法が使えたな。
資金は充分だし。
これで合法的にあの奴隷を購入することができるんじゃないか……!? とか全然思っていない。
そもそも今の田助には衣子という綺麗でできた嫁がいるのだから。
だから、まあ、見てみるだけ、ちょっと見てみるだけだからと、異世界ストアを検索した結果、金髪美女奴隷がすでに売り切れになっていたことが判明しても、落ち込んだりしない。
本当である。
「あの、田助様? 何だかとても落ち込んでいるように見えるのですが」
「気のせいです」
「ですが」
「気のせいです」
「えっと」
「気のせいです」
「…………そう、ですね。私の気のせいでした」
「はい。気のせいです」
最終的に購入したのは魔導帝国出身という、緑色の髪をしたウェネフという少女。
選んだのは衣子だった。




