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【WEB版】異世界に召喚されなかったから、現実世界にダンジョンを作ってやりたい放題  作者: 日富美信吾


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23/79

23:手料理を振る舞ってみた


 田助が衣子に正式にプロポーズしたことで、衣子も廃病院ダンジョンの一番奥――元々は廃病院に併設された住居部分で暮らすようになった。


 衣子にプロポーズするための軍資金を稼ぐためにモンスターを倒しまくった結果、田助自身はレベルが10になり、アンファもまたレベルが3になった。


 田助のステータスはこんな感じで、


――――――――――――

名前:山田田助

性別:男

年齢:30歳3ヶ月

職業:無職

レベル:10

HP 72

MP 51

力  62

体力 67

知力 57

俊敏 59

器用 57

運  1

スキル:異世界ストア/アイテムボックス/鑑定+

――――――――――――


 アンファのステータスはこんな感じだ。


――――――――――――

名前:アンファ

性別:女

年齢:0歳

職業:ダンジョンコア(幼体)

レベル:3

HP 210

MP 244

力  182

体力 154

知力 138

俊敏 151

器用 187

運  218

スキル:ダンジョン創造/ダンジョン管理

――――――――――――


 田助もアンファもそれぞれ能力値が伸びているし、田助に至っては鑑定スキルに【+】がついている。


 シャルハラートの怨念に取り憑かれていた際、自分に何度も繰り返し鑑定をかけ続けた時からだ。


 鑑定結果に疑いをもって繰り返したことが功を奏したのか。


 あるいはただ単純に使い続けた結果なのかはわからない。


 だが、以前とは違う鑑定結果が出るようになって、重宝している。


 さて、そんな感じで田助だけでなく、アンファもレベルアップしたおかげで、ダンジョンに新しい階層を作ってもらうと同時に、住居部分の改装を徹底的に行うことにした。


 そのおかげで、以前のアパートよりもよほど生活環境が改善された。


 上下水道はもちろん、電気ガス、そしてついに電波、さらにはWi-Fiまで実装されたのである。


 ダンジョンの中のどこからでもWi-Fiに接続できるとか、


「アンファ、お前は神か……!」


「いえ、ダンジョンコアですよ、田助様」


「冷静なツッコミをありがとう!」


 まあ、そんな感じで生活基盤は快適そのものになった。


 そこに衣子を迎えたわけだ。


 ちなみに引っ越しは田助が衣子の家に赴き、必要な家具や私物をアイテムボックスに収納して運ぶことで解決した。


 アイテムボックス様々である。


 これまでも通い許婚として衣子はいろいろとがんばってくれていた。


 たとえば田助がダンジョンを探索している間に掃除や洗濯をしておいてくれたこともあるし、何より感動したのは料理を作っておいてくれたことだ。


 しかもどの料理もまるでレストランで提供されているものかと思うほど絶品だった。


 ダンジョンを堪能することを優先していたため、今まではそんな衣子に甘えていたが、一緒に住むことになった以上、田助も相応に家事をしなくてはいけない。


 いや、するべきだ。


 というわけでした。


 何をしたかと言えば料理である。


 テーブルの上に並んだ、田助の作った煮込みハンバーグを前にして、衣子が少しの間、固まっていた。


「衣子、どうした?」


「あ、いえ、その……」


 いつもの衣子らしくない歯切れの悪さだ。


「これを全部……田助様が作ったのですか?」


「ああ。独身生活が長かったから、衣子の料理には遠く及ばない、この程度しか作れなくて申し訳ないけど。食べてみてくれ」


「………………いただきます」


「おう。召し上がれ」


 だが、なぜかなかなか箸を延ばそうとしない衣子。


 一方、ダンジョンコアだが普通に食事ができるアンファは、アンファのために用意した分をおいしそうに食べている。


「もしかしてハンバーグが嫌いだったとか?」


「いえ、そういうわけではないのですが」


「が?」


「……何でもありません。今度こそ本当にいただきます」


 と言って、衣子がハンバーグを一口、頬張った。


「んっ!?」


 目を見開いて、信じられないという顔をする。


「あ、あれ? もしかしてマズかったか?」


「違います! その逆です! 何ですかこれは!?」


「普通のハンバーグだけど?」


「絶対に違います!」


 作った田助の言葉を、どうして否定するのか。


「こんなにおいしいハンバーグ、私、食べたことがありません!」


「い、いくら何でも褒めすぎだろ」


「そんなことありません! 田助様、すごすぎます!」


「お、おう。そうか……ありがとな」


 正直、そこまで言われて、うれしくならないわけがない。


「けど、まあ、一つだけ嘘をついたことがある」


「というと?」


「実は使ってる肉が特別なんだよ」


「もしかしてA5ランクの黒毛和牛ですか? ……いえ、違いますね。風味が黒毛和牛のものではありません。いったい何のお肉なんですか?」


「何だと思う?」


「わかりません。早く教えて欲しいです」


 衣子にせがまれ、田助は両手を挙げる。


「本当はもうちょっと焦らしたかったけど、降参だ。……これはミノタウロスの肉を使ってるんだ」


「みのたうろす?」


 ぽきゅっと小首を傾げる衣子がかわいかった。


 ミノタウロスが何なのかわからない衣子に田助は説明した。


「……なるほど。牛さんの頭を持った巨人ですか」


「牛さんって。そんなかわいらしくはないと思うけどな」


 衣子の物言いに苦笑する。


「ちょっと硬めの肉だったからハンバーグにしたんだけど」


 田助は自分もハンバーグを食べた。


「おう。大正解だったな」


 田助は以前、オーク肉を食べたことについて触れて、


「異世界の食材を使うと、普通に料理するだけでもめちゃくちゃうまくなるんだよ。だから、俺の料理の腕が特別いいわけじゃない」


「なるほど。異世界の食材……」


 衣子が何やら考え始め、


「あの、田助様。一つ、お願いしてもよろしいですか?」




 衣子のお願いとは、衣子にも異世界の食材を使わせてほしいというものだった。


 田助の返事はもちろん「イエス!」。


 ただでさえ料理上手な衣子の手にかかれば、異世界の食材は究極にして至高の料理になることは間違いないだろう。


 田助とアンファはその時を楽しみに待った。


 そして来た。


 テーブルの上に置かれたのは、


「………………………………あ、あれ?」


「………………………………た、たー?」


 困惑する田助とアンファ。


 それもそのはず。


 衣子が出してきたのはモザイク無しでお届けしてはいけない、謎の物体Xだったのである。


「あ、あの、衣子さん、これは――」


「はんばーぐです」


「え?」


「はんばーぐです」


「いや、だって」


「はんばーぐです」


「どこからどう見ても物体……」


「はんばーぐです」


「………………」


「はんばーぐです」


「…………はい、はんばーぐです」


 それ以外にどう答えろと!?


 田助が衝撃を隠せないでいると、衣子が両手で顔を隠して教えてくれた。


 実は死ぬほど料理が苦手なこと。


 田助たちにいつも出していたのは、正和や美津子が手配してくれたレストランや料亭などが用意してくれたもので、衣子はただ持ってきていただけだったこと。


「だから……異世界の食材を使えば、あるいは私でも料理ができると思ったのです……」


「な、なるほど……」


 だが、結果はこのとおり。


 奮発して購入したドラゴン肉は謎の物体Xになってしまった。


「料理が得意になる方法があると言ったら、どうする?」


「詳しく」


 今まで落ち込んでいたとは思えないほどの速度で衣子が身を寄せてくる。


「実は異世界ストアでスキルを買うことができるんだ」


 ひょっとしたらスキルとかそういうのもあるのかなーと軽い気持ちで検索したら、見付けてしまったのだ。


 スキルを習得できるというオーブを。


「お金に糸目はつけません! 田助様、よろしくお願いします……!」


「お、おう。わかった――けど、一つだけ注意点があってだな」


「注意点?」


「スキルオーブという名称のそれを使っても、確実にスキルに目覚めるわけじゃないらしいんだ」


 自分の中にある可能性を引き出すものらしい。


「だから……」


 謎の物体Xを作り出してしまう衣子に果たして料理の可能性は存在するのか。


「大丈夫です。祖母も母も料理が得意ですから。遺伝子的に可能性の塊のはずです」


「そ、そうか。そうだな」


 そういうことにしておこう。


 というわけで料理のスキルオーブを購入した。


 金額は4000万円。


 他の魔法のスキルオーブとかは億を優に超える金額だった。


 さっそくスキルオーブを使用する衣子。


 オーブを胸に当てると、オーブは輝きを放って形を失い、衣子に吸い込まれる。


 ファンタジーな光景に、田助は目が奪われた。


 やがてゆっくりと衣子が目を開け、


「これで私にも料理の才能が……!」


 まったく目覚めなかった。


 どうやら料理の才能は衣子に遺伝されなかったようだ。


「ふんぬー!!」


 奇天烈な怒り方をする衣子には悪いが、完璧だと思っていた衣子にも苦手なものがあると知って、田助は安心したというか、ますます衣子のことが愛おしくなったのだった。

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