15:許婚を鑑定してみた
皆様のおかげで2019年5月4日14時の時点でローファンタジーランキング1位&日間総合5位になりました!
日間総合ランキングの表紙入りは初めての経験で、声を出すほど喜びました!
本当にありがとうとございます!
ダンジョン探索の相棒、断ち切り丸を手に入れた田助は今まで以上にダンジョンを堪能していた。
「奥義・皇禍嵐武!」
嵐のような禍を武を以て制する皇となれ――そんな意味が込められた、田助のインチキ奥義。実際には存在しない。
「必殺・冥凶死衰!」
絶対不可避の死の呪いで魂すら殺すという、これもまた田助のなんちゃって必殺技で、やはり実際には存在しない。
「秘技! 点、展、転……くっ、ダメだ、天衣無縫をそれっぽくアレンジしようと思ったが思い浮かばない! だがゾンビは切る!」
そんな感じで堪能しきっていた。
そうしてダンジョンを思う存分堪能した田助は一休みしようと、アンファと衣子が待つ広間に戻ってきた。
「お帰りなさい、田助様」
「たー!」
ブラック企業に勤めていた頃には、帰ってきても誰にも出迎えられず、一人だった。
だが、今はどうだ?
こうして誰かが出迎えてくれる。
それがうれしくて、ちょっとだけこっ恥ずかしかった。
「た、ただいま」
「田助様、照れていますね」
そんな事実は認めません。
「たー」
アンファもやさしい眼差しを向けないでください。
そもそも一休みするだけなら、わざわざここに戻ってくる必要はない。
廃病院ダンジョンは既に制覇しており、どこにどんな部屋があるのか完璧に頭に入っている。
なので、警戒は必要だが、それなりに休める場所も知っているのだ。
それでも田助はここに戻ってくる。
「……こ、ここはあれだ! アンファがいるからモンスターも出現しないし? 心置きなく安心できる場所だから! それだけ、それだけだから! 他に意味なんてないからぁっ!」
田助の肩を衣子が叩く。
「田助様、心の声がダダ漏れですよ?」
「……え、マジで?」
「なーう」
アンファに肯定されてしまった。
恥ずかしすぎる!
「い、今のは忘れてくれ!」
「無理です。……あ、申し訳ございません。違いました。嫌です、が正しいですね」
「言い直す意味がねえ!」
「そんなことありません。無理というより嫌だと言う方が、田助様に関することなら何でも知りたいという私の思いが込められていると思いませんか?」
思いますけど、それをはにかみながら言われると、どんな反応をすればいいかわからないからやめて欲しい。
「照れている田助様、とてもかわいいですね」
男はかわいいと言われてもうれしくありません。
「では、とても愛らしいです」
もうやだこの許婚。恥ずかしすぎてどうすればいいか本当に困るんですが。
「というわけで、田助様。私も一緒にだんじょんを堪能させてください」
「え?」
「あら、聞こえませんでしたか?」
「い、いや、聞こえたけど――どうしてダンジョンを堪能するなんて話になったんだ?」
脈絡がなさ過ぎるのではないか。
「放置ぷれいもこれはこれでいいのですが」
「え、いいの!?」
「はい」
うなずかれてしまった。
「ですが、先ほども言ったとおり、田助様に関することなら何でも知りたいのです。なので田助様が楽しそうにしているだんじょんとはどういうものなのか、私も感じてみたいのです」
ダメでしょうか、と衣子が続けた。
ダメかどうか聞かれたら、
「ダメじゃない」
「え、いいのですか?」
「あれ、なんで聞き返されてるんだ? 実は本当はやりたくなかった?」
「いえ、そうではなく――お前にはわからないものもあるんだとか、そう言われる可能性も考えていたもので」
そう言った衣子の表情はどこか悲しげなものだった。
もしかしたら元婚約者に言われたことがあるのかもしれない。
「俺は俺が好きなことを知ってもらえるのは素直にうれしい。知って好きになってくれたらもっとうれしいし、やっぱり共感できないってなったら、まあ、その時はその時ってことで」
「田助様……」
衣子がうれしそうに微笑む姿が眩しくて、田助は照れくさくなった。
「それに……ダンジョンを誰かと一緒に攻略するっていうのも面白いと思うんだよ」
ソロプレイにはソロプレイのいいところがあるが、パーティプレイにはパーティプレイのいいところがあると思うのだ。
一緒に何かを成し遂げる達成感を共有できるとか。
「では、一緒にだんじょんを堪能させてください」
「ああ。こちらこそよろしく」
田助が差し出した手を衣子が取る。
その上にぷにぷにの手が重ねられた。アンファである。
「た!」
「アンファも堪能したいのか?」
「た~!」
したいようだ。
「よし、じゃあアンファも行くか!」
と思ったが、ダンジョンコアがダンジョンを堪能してもいいのだろうか?
……まあ、本人が行きたいというのならいいのだろう。深く気にしないことにしよう。
「じゃあ、まずは衣子を鑑定してみるか」
「鑑定?」
田助は鑑定がどういうものか簡単に説明した。
「なるほど。私のすてーたすというものを調べるのですね。では、よろしくお願いします。その、初めてなのでやさしくしてください……」
「そういうことを言うんじゃありません!」
鑑定にやさしくするとかしないとか、そういうのはないから!
というわけで、これが衣子の鑑定結果だ。
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名前:綾根衣子
性別:女
年齢:24歳9ヶ月
職業:社長令嬢
レベル:1
HP 12
MP 10
力 9
体力 9
知力 10
俊敏 14
器用 13
運 10
スキル:東雲流暗殺術
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能力値自体、田助の初期値より高くて、今後の活躍が期待できる。
だが、待って欲しい。
「東雲流暗殺術って何……?」
恐いのですが。
「陰に日向に旦那様を支えられるようにと、祖母から花嫁修業の一環だと習いました」
「祖母っていうと……美津子さん?」
「はい」
衣子の祖父である正和を首トンで黙らせたり、鑑定スキルを弾いたり。
マジで何者なのだろうかあの人は。
というか暗殺術を使っての支え方というのは、きっと深く聞かない方がいいのだろう。
「詳しくお話ししましょうか?」
「いや、大丈夫だ」
「いえ、聞いてください」
「何でだよ!? 俺、大丈夫って言ったよな!?」
「夫婦の間に隠し事はよくないですから」
「俺の許婚が人の話を聞かなさすぎるっ!」




