15/30
No name #16
翼だ
地を這う翼
速く
速く
僕の一番気持ちのいい曲線をなぞるようにして
翼がすべる
星を撫ぜているのだ
僕も一緒に翔ける
足音は軽くなって
息も心臓の音も
自分じゃなくなる
死に近づく感覚に似ている
まるで心に真っ白な絵の具で文字を書いているようだ
大きな解放感ととびきりの孤独と
愛情と涙と
きっと僕は死ななければいけない
この翼のようになるには
この翼は何でも知っていて
でも独りだ
もう縛り付けるものがないから
もう死ぬことができないから
こうして星をなぞりながら
速く
速く
そして消える




