気がついたら乙女ゲームに転生してました。モブとして(笑)
断罪された転生悪役令嬢の国に残った人達の話。
転生したのは、悪役令嬢だけでは無かったのです。
前世、最後に一緒にいた友は同じように転生していました。
その友の視点でのお話です。
私の名前はモニカ・グレーブス
18才でグレーブス伯爵家の一人娘です。
ですが心配御無用です、辺境候の三男がウチに婿入り決定しているからです。
さて、ただ今学園の卒業パーティーが始まろうとしてます。
最もパーティーと言ってもティーパーティーです。
午後のお茶会豪華版です。
私、モニカは転生令嬢でございます。
物心ついた時に違和感はありましたが、特に気にすること無く生きてました。
ですが……ですがですよ、12才あたりで社交界デビューの準備としてお茶会とか行きましたらですよ……
公爵令嬢カメリア・ファーイースト様の名前とフレデリク王子の婚約者と言う設定(!?)で目が覚めるように思い出したのです。
あぁ……ここは乙女ゲームの世界なのだと。
そして、私は名も無いモブ令嬢だとも。
何故、設定なのかと不思議に思いましたが納得です。
ゲームの世界ならば設定で間違い無いからです。
でも完全に乙女ゲームの世界かと聞かれると違うとしか答えれません。
この世界は乙女ゲームの設定のみを使った世界だと思うのです。
カメリア様は公爵令嬢でゲームでは戦場など行って無かったのに、この世界では学園に入って暫くしてから戦場に赴くようになったのです。
理由は王太子様に勉学に集中していただく為、との事ですが……ぶっちゃけ残念なおつむで集中できるのか?と疑問に思いましたよ、えぇ……
全く集中出来なくて、あっという間に底辺組に落ちて行きました……権力でクラス分けの時に上位組に入り込んでましたけどね。
……あぁ、残念王太子様がやっと開会の挨拶をなさる………
!!!なさらねぇ!!!
あろうことか、カメリア様に婚約破棄言った!
あの馬鹿王太子様、何考えてる!お前の立場はカメリア様あってのものだぞ!
………ああああぁぁぁあ!アイツ国外追放とか言いやがった!!
あのクソ王太子、マジか!
カメリア様、悪役令嬢の欠片も無い清廉潔白なご令嬢なのに!
しかも、お前の代わりに戦場行ってたりしてたのに!
おかげで国内人気ナンバーワンのご令嬢なんだぞ!
………あれ?………
カメリア様、あんなに潔かったかな?
なんか……あの潔さ……宇津芽ちゃんみたいだなー
私、前世での名前を 鈴木 友 といいました。
宇津芽ちゃんは 鈴木 宇津芽 といい、高校の出席簿で私の前でした。
入学して、直ぐの席順は出席簿順でしたので目の前に宇津芽ちゃんが居たのです。
って……カメリア様が出て行ってしまう……
真っ赤に燃える紅蓮の炎のような髪、蜂蜜のような金色の瞳……
真っ白な肌、けしからんデカパイ……
私の学園生活において唯一のアイドル、遠くから眺めるだけで眼福でした。
それなのに……それなのに、あのクソ王太子……
見た目は気高い女王様で中身がマジ天使なカメリア様をほったらかして、頭も尻も超軽そうな清楚系ビッチに落ちて……
……………って?…………あれ?………あの、後ろ姿…………
やっぱり、宇津芽ちゃんだっ!カメリア様は宇津芽ちゃんだったんだ!
高1から10年間、親友だったんだから間違えないよ!
自ら、国外に行くとかカッコ良すぎ…………うーん、違うな………宇津芽ちゃんなら事を有利に運ぶ為に動くもん……
でも確か……最近、カメリア様を見かけなかったけど………戦場に行ってたのかな?
基本、カメリア様1年の半分も学園に居ないんだよね。
この国って隣国が幾つもあるんだけど、何年か前にある国の王様が世代交代したとたん絡んできたんだよね……
それまでは、戦がーとか兵役がーとか聞いた事無かったもの。
それにしても、宇津芽ちゃん……隣国に行かないかな?
私……思い出して直ぐの頃、寂しくて隣国の武器屋に宇津芽ちゃん愛用のメリケンサックを造らせたんだよね……
さすがに自国だと色々不味いからって、言われてさー
しかも不可侵エリアのギリの街でさー
神様!宇津芽ちゃんがメリケンサックに出会えるようにして!
………チッ………あのクソ王太子、ビッチとオカシゲな茶番を繰り広げてやがって……イラつくわ………
仲の良い令嬢方とご挨拶したいのに、早く終われ!
ーーーォォ………パチパチパチ………
終わったか?とりあえず拍手しとこう。
前の方がザワザワと動き出して軽食が用意してある方へと流れていく、一部の人達は目に付きにくい壁際に移動している。
壁際に移動しているのは、高位貴族の令息や令嬢などだわ……
クソ王太子とビッチ、それに2人の取り巻きの高位貴族の令息が数人だけは消えたか……
あの乙女ゲームの攻略対象者が全員、残念思考になっているとは驚きだったけどね。
「モニカ様!こちらにいらして。」
「あら?ソニア様どうなさったの?」
同じ伯爵家令嬢で領地も隣と、ほぼ幼なじみなソニアは人の目が無ければ呼び捨てで話をする仲だ。
「ねぇモニカ様、カメリア様の事どう思われます?」
「冤罪でしょう。しかも、世情を知らないかカメリア様の事を知らないかのどちらかでは無いかしら?」
思わず声は潜められ、お互いの顔がくっつく程近づき密談めいてしまう。
「やはり……カメリア様、此度の戦役で凄まじい戦果を挙げられたと父様から聞きましたの。」
「ソニア様のお父様……騎兵隊長様でしたよね?」
「えぇ、お父様の部下の幾人かはカメリア様の癒しの光で治癒されましたの。」
「まぁ……では、亡くなられた方はいなかったのですね。」
「えぇ、お父様の隊は誰1人亡くなら無かったのですって。」
「良かったですわね。戦没者は少ない方が良いに決まってますもの。」
「本当に……ですが、近隣諸国にまで届くカメリア様が国外追放等と……もし、万一にも他国に属する事になれば……」
「大丈夫ですわ。カメリア様が私達を見捨てる様なことはありませんわ。」
悲愴な顔をするソニア様を励ます、宇津芽ちゃんならどこかに属したりしない。
可能性を考えれば冒険者が1番高い、何せ私の兄(3男)とハンター仲間だったのだから。
この世界では、竜は神様と同等の光竜と高位竜とか言われちゃう五色の竜と普通の竜の3種類があるけど……ハンターみたいに狩る事が出来ないんだよなー
命懸けで戦いを挑んで、認められると契約が交わされ主になったり番になったりする。
でも宇津芽ちゃんは挑んじゃうだろうな……ロマンだろ(笑)とか言って……
「モニカ様、スコーンでもいただきません?」
「そうですね、私ジャムがたっぷり盛られたスコーンをいただきたいわ。」
2人して軽食があるテーブルに向かう……あちこちでヤバイ……とかマズい……とか囁く声が聞こえる。
知っている者は皆、同じような心配をしているのだ。
不安気な様子の高位貴族の令息・令嬢を見て下位貴族の令息・令嬢達も不安な面持ちになっている。
2人でスコーンをいただき、温かい紅茶をいただく。
それだけで気持ちが落ち着く。
「ソニア様、心配してもなるようにしかなりませんわ。気持ちをしっかり持って過ごしましょう。」
「分かりましたわ。モニカ様、これからも仲良くしてくださいませ。」
私はコクリと頷き、微笑んだ。
ぽつぽつと同級生達が帰り始め、私達も会場から出て行く。
この後、日が沈む頃に王宮で祝いの夜会が開かれる。
本当なら…この夜会で王太子とカメリア様の婚姻日が発表され、夜会に参加した貴族全てで祝福するはずだったのに……
今となっては、あのクソ王太子と婚姻しなくて……ホント、良かったー!
王都にある邸で夜会の支度をメイドやら侍女やらにして貰い、これからの事を考える。
女性の支度は時間が掛かる、幸い私の婚約者はウエストに関して細かい事を言わない方なのでコルセットはキツく絞めなくても大丈夫!
でも……まぁ……こっそり、エクササイズしてましたから……1人で測ったら56センチでしたわ!(自慢!)
「様……モニカお嬢様。出来上がりましたわ。」
「ハッ!……ありがとう。とても美しく仕上がってるわ、私……貴方達が居てくれて本当に良かったと思っているわ。」
「まぁ……お嬢様ったら……」
そんなやり取りをして、ホッコリしてました。
軽いノックの音と共に執事がやって来ました。
「モニカお嬢様、ジョセフ様がお迎えにいらっしゃいました。」
ジョセフ様は私の婚約者です。来月には婚姻式を行い、領地の城にて跡取り教育を受けるのです。
勿論、私も一緒に領地に帰ります。
「支度は済みました。すぐに参りますわ。」
「畏まりました。」
執事は私の返事を聞き、すぐさまジョセフ様の元へ向かいました。
エントランスに待っているジョセフ様、髪はキャラメル色の巻き毛で飴細工のように艶めいてます。
若葉のような緑の瞳は優しい光をたたえ、私を見つめて下さいます。
モブ令嬢とモブ令息は、実に幸せな時間を過ごし同じ場所で同じ時を生きてく道を確実に歩んでいます。
オタ女だった前世とは、全く違います。
前世の家族は母以外、凶悪面の筋肉馬鹿(父と兄3人)のお陰で友人の1人も出来なかったけど!
今世は父も母も美形だし、貴族だしで友人にも恵まれたし!
強くてNewゲーム状態でありがとう!神様!
ジョセフ様のエスコートで馬車に乗り込む。
走りだした馬車の中で、午後に起こった出来事を語り今後の展開を予想しあう。
しばらくし、馬車が止まる……王宮に着いたようです。
次々とやってくる馬車の為に、優雅にでも早足でエントランスホールに向かう。
いつもの様子と違う……ざわつき具合も、いつもの比では無い。
大広間に入ると、待ち構えていたのかソニア様が近づいて来た。
正しくないな……ソニア様と婚約者のスペンサー伯爵令息マーク様のお二人がいらっしゃった。
「モニカ様待ってましたのよ。」
「あら?まぁ……フフフ、ごきげんようマーク様。」
「ごきげんよう、モニカ嬢。ジョセフ。」
「ごきげんようソニア嬢、マーク。」
ジョセフ様とマーク様は幼なじみです、私とソニアと同じです。
なので私達4人は、貴族らしくない付き合いになっている。
「ソニアから聞いたが、殿下が一方的に婚約破棄をしたと……」
「あぁ……俺も今モニカから聞いたが……荒れるな……」
「荒れる?どうしてだ?」
「そうか……俺以外は伯爵家だったな……なんで、王太子の婚約者は1番権勢を誇っている貴族か知ってるか?」
「いや。なんでだ?」
「王室典範で様々な事が決められているんだが、妃主催の夜会もお茶会も回数は決まっててドレスやアクセサリー等の枚数や金額も決まってる。」
「で?それが、どうした?何か問題あるのか?」
「夜会は年2回、お茶会は月に1回で年12回だ。税金で行う事が出来る回数はそれだけだ。それ以外は妃の実家持ちだ。勿論ドレス等も決められている物以上は実家持ちだ。」
「本当にですか?ジョセフ様……それじゃあ……」
「本当だよ、モニカ。先々代に家から側妃を輩出したが、その際に持たせれるだけ持たせないと恥になるとかでかなりの金額が動いたんだ。帳簿を見たけど、それが側妃の亡くなるまでの間夜会費だのドレス代金だの結構続いたんだ。」
「本当か?」
「………だからなのね………勢いのある高位貴族が代毎に変わるのが不思議だったのよ………」
「ソニア、歴史好きだったわね……そうなのね……」
「あぁ、権勢を削ぐには上手い手だ。だから、妃を輩出した後暫くは妃を出せないんだ。面子が掛かってるからな。」
「それじゃあ、伯爵以下じゃ潰れちまうな……」
「いや……過去には下位貴族から輿入れした事もあったらしいんだが、典範通りにしか出来なかった事でかなり質素だったと記録されててな……3年後に正妃を退いて側妃になったんだ。」
「側妃になっても、質素だったんじゃないのか?」
「マーク……それがな、そうじゃ無かったらしいんだ。正妃時代の物は持っていて良かった事と新しい正妃が主催するお茶会や夜会が増えたお陰で幸せだったみたいなんだ。」
「なる程ねぇ……ご自分では典範通りにしか出来ないから、つまらないけど正妃主催なら側妃としてお呼ばれされるし。より良い思いは正妃より側妃だと理解して退いたのね。」
「その通りだよ、モニカ。更にだ、退くときに正妃の実家が気を利かせて正妃として迎える娘の妹として迎えたんだ。そのお陰で正妃程ではないが実家より良い待遇を受けれるようになったんだ」
「……待遇……」
「つまり税金の使い道は全て決まっていて、それ以上の贅沢は実費なんだ。菓子1つとってもな。」
「何から何までですのね。それでは、ご実家にお金が無いと大変ですわ……ねぇモニカ?」
「そうね、ソニア……王妃様主催のお茶会は大小合わせたら、ほぼ毎日だもの。」
「まぁ!本当なのモニカ?」
「本当よ、ソニア。ジョセフ様のお母様がおっしゃってたの、最低でも週に1度は呼ばれるんですって。」
「お茶会にですの?週に1度?」
「内実、各辺境候夫人が領地から上がってくる情報の交換会なのですって。」
「貴族夫人と令嬢を取りまとめるのが王妃様の仕事の1つですもの、大変だとは思ってましたが……あら?皆様、いらっしゃったみたいですわ。」
全ての招待客が集まると、大広間の大きな両扉が1度閉められる。
国王陛下の開会の挨拶が済み、ファーストダンスを踊られ壇上の席に戻られると両扉が半分だけ開き、出入りできるようになる。
その両扉がゆっくり閉まりだした。
壇上に陛下が現れ………て………誰かが近づいて……って殿下とビッチ?
「父上!私はカメリア・ファーイーストと婚約破棄いたしました!」
あのクソ王太子よりによって、このタイミングで言うか?
会場内は一瞬で静まり返った。
遠目からでも陛下の顔色が悪くなったのが分かってしまった。
今や国1番の貴族令嬢を婚約破棄したのだから当然か……
「しかも、あの女は権力を笠に着てマリアを害していたのです!そのような女をのさばらせる訳に行きません、ですから国外追放にいたしました!」
言ったーーーーーー!あのクソ言いやがりましたわーーーーー!
あ?陛下の顔色が赤黒くなりましたわ。
王妃様が立ち上がって……扇子ぶち折ったーーーー!
「こ………この愚か者がーーーーーーーー!」
周りのざわめきも2種類ですわ、今知った方達のものと既に知っていた方達。
「おっ……おろ………父上!あの女は公爵家の権力を使って「何を言っておるんだ、お前は!」ですから、マリアを害して「マリア?どこかの令嬢のようだが、それが何だと言うのだ?」マリアは私の愛する令嬢です!」
………ウワァ………陛下が滅茶苦茶、怒ってますよ……分かりなさいよクソ王太子。
「愛する令嬢だとぉ………婚約者であるカメリア嬢を放ってか……」
陛下、言葉使いが荒くなりつつあります。
「あの女はマリアに嫌がらせをしたり、罵詈雑言を浴びせるだけに留まらず先週あろう事か階段から突き落としたのですよ!」
先週?先週あのビッチ、怪我なんてしていたかしら?
「階段から………いや、先週だと?本当か?」
「本当です!マリア、本当だよな!いつだったか教えてくれ。」
必死かよ、クソ王太子。殿下も言葉使いが悪いですわ。
「はい!王様、1週間前の放課後にカメリア様に押されて階段から落ちたんです!私……恐くって……」
ビッチ……礼儀がなってないわーーーー!どこの平民トークよ!
「1週間前だ……と………?………ランバート!」
あら?ランバート将軍を呼ばれたわ?
「は!」
筋骨隆々の茶髪・茶眼の40才位の大男が陛下のそば近くに寄っていった
「うむ。ランバートよ、1週間前からの事を報告してくれ。」
ランバート将軍は1度頭を下げた後、クソ王太子を見つめた。
「は!1週間前は隣国の大侵攻の最中で、カメリア嬢が2週間前から行っていた治癒魔法の仕上げを朝から行われておりました。これにより我が軍の怪我人の殆どが戦線復帰いたしました。昼過ぎにカメリア嬢が前線に出られ、大規模広範囲攻撃魔法を連続使用。この魔法は夕刻まで続き、敵兵の8割方を殲滅。生き残った敵兵は投降してきたので捕虜となりました。翌日からカメリア嬢と魔法師団にて戦場になった牧草地の修復が行われ3日間にて完全修復いたしました。その翌日朝に私と側近の騎士5名とカメリア嬢の6人で王都帰還のため陣地を出立、一晩途中で宿を取り翌日昼過ぎに無事王都に帰還いたしました。」
「そうか、報告ご苦労。して、フレデリクよ……戦場にいたカメリア嬢が何故、学園におることになるのだ?説明せよ!」
「なっ……将軍はあの女と口裏を合わせて「戦場におりました、騎士や軍人や兵役の者など大多数の者がおりました。皆、カメリア嬢がいつまで戦場にいたのか見ております。」……バカな……」
バカはお前だ!ランバート将軍は公明正大なお方と尊敬されてる事も知らないのか?そのような方が口裏合わせる訳ないでしょうに………陛下にだって、直訴する事すらあると有名なのに……
「さて、フレデリク……お前は本当かどうか真偽も定かでない事で婚約破棄を行い、あろうことか大戦果を上げた我が国きっての魔法使いを国外追放にしたと……どのような責任を取るつもりだ?」
「陛下、発言をお許し下され。カメリア嬢は敵となれば苛烈を極め、味方なれば可能な限り治癒なり守りなり手を尽くします。もし……もし万一、かの隣国に行く事になりましたら我が軍は敵対する事は出来ませぬ。」
「どういう事だ?」
「……カメリア嬢は敵対した者は覚悟した者、逃げ出すような者も一切の容赦無く殲滅します。唯一、生かすのは投降した者だけです。今までの戦場にて、立ち向かう者逃げ出す者は全て殲滅いたしました。我が軍の者は皆、骨身に染みる程見ております。」
「……では、ではもし敵対勢力に居れば……」
「皆、投降するでしょう。私とて、敵対する事は出来ませぬ。それ程、苛烈なのです。………そのような方が、嫌がらせや罵詈雑言など為さるのか……」
「………将軍はやらないと思ってるのか?」
「フゥ……殿下、カメリア嬢が本気ならばマリア嬢は今頃骨の欠片も残さず燃やすなり何なりしております。普通ならば、戦場は死体だらけですがカメリア嬢は燃やし尽くし骨等残しませぬ。武器や防具の金物は溶け我等はそれらを拾い集めた後、灰を土に混ぜ混み修復魔法を使われる。」
あ?王太子が崩折れた。orzをリアルで見るとはね。
「あ……あ………の……本当に………そんな……」
「嘘をつく意味もなかろう。カメリア嬢は死体が腐れば流行り病が増える、と言い常に燃やし尽くしておったな。」
「………まだ、国外には出て居らぬだろうか……出て居らぬなら、直ぐさま国外追放を取り下げねば。」
「カメリア嬢はバイコーンの主であります。バイコーンは馬の3倍から5倍は走り続ける事が出来ます。もし国境までとなれば、ありとあらゆる手を尽くしても明日の昼過ぎにならなければ知らせは届ける事は叶わぬと……」
「それ程なのか……国外追放だけでも取り下げよ。誰か、この愚か者を北の塔に連れて行け!そこの娘もだ。」
「ちっ?父上!何故っ北のっ……「早くしろ!全く不愉快だ!」……ち……ちうぇ………」
泣いちゃったよ。北の塔とか、王族の罪人専用の場所だものね。
「ちょっ……離しなさいよぉっ!フレデリクさまぁ!助けてぇっ……」
あーあ、衛兵に引き摺られてったわ……
伝達魔法とか無いから、どうにもならないわよね……
「ファーイースト公、愚かな息子のせいですまない。」
赤金色の髪の美丈夫が出てきたわ。
「いえ。カメリアは男勝りな所もありましたが、自分に正直な娘です。かの隣国に行く事は無いでしょう、行くとすれば竜の治めるかの地でしょう。」
あっ……陛下と将軍のお顔が明るくなったわ。
「そうなのか?」
「時折、竜に乗ってみたいとか……どれだけ大きいのか?とか……」
「陛下っ!私も聞いたことありますわっ!竜に乗りたいとっ!」
王妃様が本日初めて、口を開いたわ。
それにしても、カメリア様……どんだけ竜好きなのです?
いや、宇津芽ちゃんハンターの時やたらと背中に乗って刺しまくってたってお兄から聞いたけど………まさかね?
宇津芽ちゃんなら竜と契約できるだろうな……
「そっ……そうか、カメリア嬢の事を信じよう。色々あったが、今日は本来めでたい席であった。ちと大臣達とは話し合わねばならぬ、我と王妃も下がるがぜひとも楽しんでくれ。」
陛下はそう告げると王妃様と一緒に壇上の奥にある扉へと消えた。
音楽が鳴り出したが、誰も踊り出さない。
あちこちで繋がりのある貴族同士で話し合ってる、私達のように……
「モニカ、どう思う?カメリア嬢が竜をなんて……」
ジョセフ様を見つめ、強く頷く。
「本当だと思いますわ。きっとカメリア様なら契約竜をつれて帰ってきますわ。」
「信じてらっしゃるのね……モニカ……」
「えぇ、信じているわ。カメリア様は大事なお友達と良く似てらっしゃるもの。」
少し頬を染めたソニアが「まぁ……」と小さく呟いた。
きっと今頃、会議室で様々な事を話し合われているのだろう。
王妃様がお生みになったフレデリク様は廃嫡されるだろう、側妃様がお生みになった王子が2人いるから問題は無いでしょう。
「モニカ、難しい顔をするのは止めにして何か摘まみに行こうか。せっかくの王宮の料理を味合わない手はないだろう?」
心配してくれるジョセフ様、こんな風に気を遣って下さる優しい方。
私は名も無いモブ、ゲームの中では取り巻きですら無かった。
でも、この世界ではれっきとした伯爵令嬢。
私はジョセフ様を見つめ、ニッコリと微笑み手を差し出す。
「えぇ、ジョセフ様せっかくですものね。」
私の差し出した手をご自分の手に乗せ、エスコートして下さる。
後ろからマーク様とソニアがついてくる。
私達はお互いの婚約者と婚姻し、これからも付き合っていくのだ。
きっと私は、宇津芽ちゃんに……カメリア様に会う。
そしたら沢山、話をしよう。
リアル彼氏がいなかった私が、リア充よろしく結婚した事も。
ギュとジョセフ様の手を握り顔色を窺う。
バッと私の顔を見るとニヤッと笑い、左手から右手に変えたと思ったら左手が私の腰に回ってきた。
腰を抱き寄せ、顔を耳元に寄せて……
「可愛いモニカ、待ちきれなくなるよ。」
?嘘?いつも真面目なジョセフ様が、こんな事……やだ、顔が赤くなってくのが自分でも分かる……
「そんな顔しないで、我慢しきれなくなる。」
耳元から聞こえるジョセフ様の囁く声がこんなに甘いなんて、私どうしたら良いの?
リア充おそるべしだわよ!
「お料理……いただくのでしょう?」
必死で話題をそらし、ジョセフ様のお顔を見る。
「そうだね……」
クックッと笑いながらエスコートして下さるジョセフ様をちょっとだけイジワルだわと思いながら歩いて行く。
ねぇ、宇津芽ちゃん
私達、前はいきなり終わってしまったけど今度はおばあちゃんになるまで長生きしましょうね。
それから、宇津芽ちゃん……何かを決めた時、腰に両手を当てガツガツ歩くのは淑女らしく無いわよ。
最もそれで分かったんだけど、無意識ってコワいわね。
ザマァする気は無いです。
ただ、責任者は責任を取らされるよね。
そのための地位だから。って話ですよ。
期待してたらゴメンなのだけど。