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第3話 情報収集

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部


 ウィル・サンセット・サマーズ 囚人 通称:W

    


  ― ダイイング探偵事務所 ―



 面会を済ませ、事務所に戻ったアランとマリアは、奴の依頼を解決する為に奮闘中であった。

 あの宛名の暗号解読は簡単だったが、依頼人にはしっかりとした情報と依頼結果を知る必要は囚人であろうがある。そのためにもしっかりとした調査を行わなければならない。

 まず手始めにウィルの経歴を探る。今回、囚人宛の手紙の内容が依頼だった事から、奴の経歴を洗ってみる事にした。

 大抵、囚人に手紙を送る奴の明確な理由は2つ。

 安否確認か事件の取材。その中で、ウィルの場合は安否確認でもあるが、最後の挨拶に近いものだろう。それに安否確認で送ってくるとすれば、送り主は家族か友人とかになる。

 そう。だから、ウィルの経歴を洗った。

「サマーズは、4歳でシングルマザーに捨てられていますねー父についても不明扱い。孤児院で育てられています。それから養子で家族を転々としながら育ち、22歳で大学を卒業して、近くの精肉店の店員に。意外と慕われていた様ですね」

「それが殺人鬼に変わって5人殺めたってわけか……。孤児院はどこの?」

「それが……孤児院は閉院されてるようですよ。これ」

 報告書をマリアから手渡され、アランは自分の目で確認する。

 孤児院の名前は、フォリナー孤児院。

「何何? 経営者死亡により15年前に閉院か。これじゃ、ここからの情報は絶望的だな」

 アランはリストを置いて、メガネを外し、両腕を上にして背伸びをした。その奥ではマリアがパソコンを操作しながらウィルの情報を探っていた。

「そうですね。でも、国家情報省が孤児院閉院までの登録者リストはありますから調べる事は可能ですね。あったあった。これです」

 アランは席を立ち、パソコンのところまで移動した。

 パソコンにはウィルの孤児院登録リストが表示されている。




  ― フォリナー孤児院 リスト 1992 ―


   ウィル・サンセット・アールヘイター


   性別 男性 入院時 3歳


   出生地 シュゼット スプリンターベイル 361


   親  母 モリー・アールヘイター 25歳

      父 不明

 

    ―――――――――――――――――――――




「名前が違いますね。アールヘイターになってます」

 マリアは、首を鳴らして、肩の疲労感を和らげようとした。

 その隣で、アランはパソコンが示した記録をよく自分の目で確認していく。

「うん。でも、奴の名前は警部が言っていたウィル・サンセットだ。アールヘイターという名前はおそらく、孤児院を出た時に捨てたんだろう。で、母親の名前がモリー・アールヘイター?」

 アランはリストに書いてある親の名前に何か思い当たりがあるらしく、隣の部屋の事務所資料室へと書類をあさりに向かった。

「どうしたんですか? 先生」

 マリアの耳には、アランと本棚を探し始め、本が床に落ちる音が聞こえた。彼は本棚を依頼者のリストを片っ端から本棚から出していき、調べていく。

 本を探しながらアランはパソコンの前に座っている探偵助手に向けて告げた。

「確か、その名前、以前に人探しで依頼を受けた時、依頼人の名前だったな。ああ、あった! これだ」

 探した依頼者のリストは7年前に記録した物で、紙は白から黄ばみを帯びた薄茶色で表紙は古ぼけてしまっている。

 



    ―――   依頼者報告書   ―――

 


  依頼人 モリー・アールヘイター(35)

  依頼内容 人探し……孤児院に預けた子供の行方

  調査結果 打ち切り 理由:依頼された子供の行方を取る事ができなかった為。

  

  結果、解明できなかった為、依頼料、報酬、契約料等は全額変換済み。



      ――――――――――――――――――




 アランは過去の出来事が、突如、フラッシュバックする。この依頼は、依頼人にとって辛い結果になった思い出だった。探偵として未熟だった時代を思い出す依頼でもあった。

 今でも思い出す。

 応接間のソファーでひたすら泣いていたモリーの姿が浮かび、リストを見ながらアランはため息をついた。

 何分、経っても資料室から出てこず、騒がしいはずの探偵が生み出す物音が1つも起きない事に対して不思議に思い、マリアは腰掛けていた椅子からゆっくりと立ち上がり、資料室へ向かった。

 資料室でリストをずっと静かに見つめている探偵に、助手は眉間のしわを寄せながらゆっくりと声をかけた。

「せ、先生。大丈夫ですか?」

 彼女の言葉を耳にし、アランは落ち着きを取り戻す。

「……あ、ああ。大丈夫だよ。それよりレノールにモリー・アールヘイターさんの居場所を訊いてもらえないかな? 彼女に話を聞きたい」

 マリアは軽く首を縦に振って理解した事をアランに示しながら、反応した。

「分かりました」

 彼女は言われた通り、事務所の電話を取りに資料室を後にした。

 アランは、1つ気がかりになっている事があった。

「どうしてこの手紙をウィルに?」

 囚人に送ってきた手紙に対する謎は深まるばかり。

 探偵は昔の依頼報告書を片手に、近くの椅子に座って首を傾げていた。

 第3話です。話は続きます。

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