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第2話 再会

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部


 ウィル・サンセット・サマーズ 囚人 通称:W


 ― 6ヶ月後 5月  シュゼット警察 ―




 春先から夏へと変化する一番気候的には涼しいようで暑くなり始めた時期。

 アランとマリアの2人はレノールの連絡を受けて、面会室に来ている。面会の相手は、6ヶ月前に逮捕した教会の殺人鬼。

 どうやらあの殺人鬼からのラブコールは、相当だったもので、普段だったら滅多に電話しない警察のレノールから直々、面会の依頼が来るほどだったから、よほどの濃いラブコールだったのだろうと考えていた。

 面会室に、移動する間、アランの嫌そうな言葉がずっと流れ出ている。

「あの殺人鬼が僕たちに会いたいだって? ……断ってもいいかな?」

 探偵の隣で、助手が軽い嘆きをかけた。

「先生はまだいいですよ。私なんて相当、恨まれてるはずですからね」

 マリアは、男の腕にゴム弾を撃ち込んでいるから相当の恨みを持たれているんだろうと相当覚悟している。

「あ、そうだね」

 それは探偵も思っていた様で、同感だった。レノールはこの2人の止まりそうにない会話に、咳払いをしながら間に入る。

「お2人共、宜しいか?」

 レノール警部による咳払いの大きさに2人は、やっと気づいて、アランは彼の方に視線を向けた。

「おっと、失礼」

 探偵の態度に呆れながらアランとマリアの2人に向けて、レノールは軽いため息をぶつけながら殺人鬼の面会理由について教える。

「奴が会いたい理由としてはお前さんへの仕事の依頼だそうだ。それに奴は一生塀から出る事はないからな。話し相手でも探してるんじゃないか? あ、ここにサインしてくれ」

 とレノールは、アランに対して面会のリストと共にボールペンを渡した。警部から渡されたボールペンで、アランは面会記入欄に自身の名前を歩きながらも綺麗なサイン字体で、名前を残した。

「そういや、面会相手の名前は? 覚えているのか?」

「全然」

 探偵の無頓着ぶりに、警部は腹が痛くなる。

「名前はウィル・サンセット・サマーズ。囚人仲間や警察の関係者からは、『W』と呼ばれているらしい。とはいえ、囚人からも恐れられているらしい。頼むから今から会う奴の名前ぐらいは覚えてから来てくれ」

 探偵はその言葉も無視して、続けた。

「そんな事より、奴が何故、刑務所で恐れられているんだ? 連続殺人犯なんんか、この国じゃそれなりいるだろ? 刑務所に」

 警部は首を横に振って、それは違うと言わんばかりの態度だった。

「刑務所でもう3人、殺めている。しかも同じ生業ばかりの奴らだよ。奴らの果ての写真見る?」

「いや、結構。興味ない」

 探偵の隣で、聞いていたマリアも自分の恐怖感情から数値が高くなると判断し、レノールに対してしかめっ面になる。

「そんなもん。やめてください! 見せないでください」

 警部は、後ろについて歩いている探偵の性格を思い出す。

「暗号にだけ興味があるんだったな。そういや」

 アランは、今回の連続殺人の操作に協力した理由を警部に告げた。

「ああ。そうだよ。この事件で被害者が残していた暗号に興味を持っただけだ。とても面白い暗号だったけどね」

 暗号の話になると今度は、レノールの態度が不満へと変わる。

「俺には興味ないね。だが、奴の運命については予測がつく。奴の行動は人生終着点が見えているようなもんだからな」

 外の世界で5人、刑務所という内なる世界で3人も殺めたらそれは簡単に決まるもんだとアランは感じていた。

 探偵と助手の2人は、警部に案内されながら、死刑囚となった殺人鬼が待機している面会室へと向かう。

 面会室は真新しく改装されているのが分かった。真新しい白を基調とした壁がぬられている。

「おい、ここ金かけたろ?」

「綺麗になっただろう? これでより面会しやすくなる。まぁ、そんな事より、奴は逮捕されてからずっと黙秘している。事件の事も一切喋ってくれない」

 アランはおふざけ程度に、呟いた。

「何か嫌われることしたかなぁ?」

 レノールは深いため息をついてアランとマリアに言った。

「知らんよ。お前が面会に来て『俺の依頼を解決しない限り、全部話さない』って言われてね。お、ここだ」

「ここですか?」

 マリアは、軽く眉間にしわを寄せながら言う。

「中で奴が待機している。くれぐれも気をつけろよ」

 警部は面会室のドアを開いて、2人を中に入れようと準備をする。

「あれ、レノール。お前は?」

 警部は首を軽く横に振って、面会室に入ることを拒んだ。

「仕事があるからな。まぁ、ごゆっくり……」

 と警部に言われ、やれやれとアランはため息をつきながら面会室へと入る。マリアもその後を追う様に面会室へと入っていく。出入り口のドアは警部の手によってゆっくりと閉められた。

 面会室の正面を見ると透明な窓ガラスによって、囚人が逃げられない様に、しっかりと貼られており、近くには受話器が置かれている。

 探偵と助手の2人は、奴の登場を待っている。

「遅いですね」

「そうだね。手続きで時間かかっているんだろうな」

 そう話していた時に、対面側にある鋼鉄で出来た重い扉が、開き、真っ白いシャツを着たあの男が面会室へと入ってきた。後ろには刑務官2名が監視をしている。

「座れ」

 ウィルは座って受話器を取った。囚人服の胸ポケットに《W》と刺繍されている。

 探偵と助手、そして相手は囚人の3人による受話器越しの会話が開始された。

「ここは、外の空気よりも美味いな。そうは思わないか? ミスター……」

 ウィルが口ごもった事で、アランの名前を覚えていない事を知り、軽く自己紹介していく。

「ダイイングだ。アラン・ダイイング。隣の女性は僕の助手」

「マリア・シェリー。あなたの腕を狙撃したの」

 その言葉を聞いたウィルは、大きく笑って、ガラス越しでおしとやかに座っている彼女に視線を向けた。

「すごい紹介だミス・シェリー。君をメインディッシュにしてみたかったよ」

 ウィルの表情はすごく悔しそうにしており、逆にその対面で見つめられていたマリアの背筋が少し冷える。

 アランは呆れながら呟いた。

「8人も料理しておいてよく言うよ。で、依頼はなんだ?」

 探偵の問いかけにウィルは囚人服のポケットから1枚の封筒を取り出し、刑務官に渡す。

「これを……」

 刑務官は壁にある移動型ポストに封筒を入れて、アランが座っている机に封筒を送った。送られた封筒をアランは手に取り、封を開ける。

 中には白地の紙だが、風化で茶色に変色していた。紙を取り出して、記されている内容について探偵と助手は目に触れていく。

 紙には何かの暗号らしき物が記載されてあった。

「この紙は、俺に宛てられた物でね。君に解いてもらいたいんだよね」

 紙の内容は、真ん中に書かれていた。



 《Good Bye  ~W~    moon (― on)+2n》



 英語のメッセージにはグッドバイ。囚人に宛てられたメッセージの文面が別れの言葉となるとなんとも言えない実に皮肉な感覚ではある。

 アランは皮肉混じりの言葉をウィルに告げた。

「別れにはふさわしい言葉だな」

 どうやらガラス越しの彼も同感であったらしい。表情は変えず、頷いている。

「うん……綺麗な別れだ。で、この文面の下に送り主の名があるだろ? その人が誰かを解いて欲しい。解いたら、ありのままの刑を受けるし、全て話すよ」

ウィルは既に、自分の運命が決まっている事を悟っているらしく潔さはいい。

 文面の下の送り主にアランとマリアは注目する。



《moon (― 0n)+2n》



 何かの数式か? それとも化学式か? 月《moon》とon+2n。

 送り主の名にセンスはあれども、この手紙を検閲した刑務官はナンセンスだと探偵と助手、そして渡された囚人はつくづく感じている。

 その間で、、ウィルが《送り主が誰か解いて欲しい》という依頼を出す事にある程度、アランとマリアは手紙を見て理解した。

 ある程度、沈黙の重たそうな空気が部屋の中で少しずつ少しずつ浮き始め、部屋を充満させていこうとする。

 この沈黙を打ち破るのが依頼を受ける探偵の姿。

 アランは、表情を変えない囚人に告げた。

「この依頼受けよう。この暗号は面白い。結果は後日また会おう」

 囚人は、アランの言葉を聞いて、微笑ましい表情に変わる。丁度その時、厳つい刑務官がウィルに言葉を放つ。

「時間だ」

 ウィルは席を立ち、持っている受話器に向けて一言だけ告げた。

「いい結果を期待してるよ」

 アランは、軽く首で縦に振って頷いた。

「待っている間はくれぐれもおかしい真似はやめる事だ。いいな。いい結果が来るから必ずいい子で待ってる事だね」

 ウィルは手錠でつながっている両手を鎖の限界まで広げて、合図をしながら出て行く。

 マリアは、ウィルを見送ったあとで、隣に座っている探偵を見つめた。

「どう思います?」

 質問の意図を大体把握しているのか、アランはマリアに一言だけ。

「わからん」

 


 第2話です。話は続きます。

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