結末
春が来た。
私は温かく包み込む日差しの中を一生懸命走っている。
今日は特別な日だ。
忙しく足を動かすが、まだまだ小さい私の体ではたった数キロの距離でもすぐには目的地には付かない。
そろそろ走るのも疲れてきたところで、目的地である病院につく。
息が整うまで深呼吸をして、病院内すら走って向かいたくなる衝動を押えつつ、速足でとある一室へ向かう。
その部屋の入り口が見えてきたとき、私は押えきれなくなって走り出した。
入り口を潜ると、いつもは寝たきりな男の子の背中が見えた。
男の子は、すぐ、私に気づくと、とびきりの笑顔を浮かべた。
私は男の子に飛びつく。
「退院おめでとう!」
とても温かい春の昼下がりだった。
温かい昼の日差しを一身に浴びて、男の子と女の子は笑顔で歩いていた。
男の子の腕には緑色の瞳を持つ人形が抱えられている。
「この人形はもしかしたら願いを叶えてくれる人形かもしれないね」
ふいに男の子はそう呟いた。
女の子はそれを聞いて微笑んだ。
「きっとそうだね!その人形がきっと君の病気を治してくれたんだよ」
――私の願いは、二人の願いを叶える人形として二人に出会いたい。