第五章「少女客と中年スト-カー(続き)、第六章「使い込み」、第七章「裏切り」、第八章「かつあげ」、第九章「裏サイト」
青春の岐路(四)
第五章 少女客と中年ストーカー(続き)
2
剛志は、男は店内のどこかにいて、別のパチンコ台に向かったりして、こちらの様子をうかがいながら、時間を潰していたに違いないと思った。
現れたタイミングが良すぎたからだ。
男は、身長は並みだが、中年太りの腹が突き出して、貫禄があった。
周囲の台もほとんど埋まっていて、無数のパチンコ機が発する音、効果音、店内放送などの音が錯綜して、近くにいる者同士の会話しか聞き取れないほどの騒音の中にいた。
男は、近くに来ると、剛志には一瞥もくれずに、少女に話しかけた。
「どうだった? もう来ないつもりでいたんだが、仕事が早めに片付いたもんで、やっぱり、気になってね」
剛志は、見え透いたことをぬかしやがって、と思った。
言葉が馴れ馴れしいのも癪に障った。
少女は、顔を赤くして、項垂れた。
「・・・ごめんなさい・・・全部・・・打ち込んじゃって・・・」
「えっ! ほんと? 全部なくなったの!」
男は、わざとらしく、目を剥いた。
剛志は、見ればわかるだろうが、この野郎、と思って、頭にきた。
少女は肩をすくめている。
「そうか・・・信じられんな・・・それで、どうしようと思ってんの?」
と、男が続けたので、剛志は、なんだって、と思った。
無償で使っていいと言っておきながら、この言い種はないだろう。
男は、剛志の棘を含んだ視線に気づいて、こう言った。
「周囲がうるさくて、よう聞こえんな。 外で話をしようと思うんだが、いいかな?」
少女は、逆らえず、頷くしかない。 立ち上がりながら、剛志を流し目で見た。助けを求めているような眼だった。
少女が男の後に続いて歩き始めたが、剛志は、どうしていいのかわからず、しばらく呆然としていた。 男の貫禄に気圧されていたとしか思えない。
剛志は、突然、立ち上がって、吉井のいるスロットコーナーへ駆けるようにして行った。 吉井の傍に駆け寄ると、前置きを言わずに、いきなり言った。
「すぐ、来てくれ!」
「どうしたんだ?」
「いいから、いいから」
吉井は、理由がわからないまま、後について来た。
肩を並べて急ぎ足で歩きながら、事のあらましを話して聞かせた。
あちこち端折ったが、吉井は、事態が飲み込めたらしく、ひでえ野郎だな、最初から引っかけるつもりでいたんだろうよ、と言った。
入り口の近辺の外周りから始めたが、男と少女が見つからない。
ふと気づいて、途中で、広い駐車場を見渡した。
剛志は目を剥いた。
例の少女が、四、五列目の駐車列の真ん中あたりに駐めてある白い乗用車に、まさに、乗り込もうとしているところだった。
「あっ、あれだ!」
剛志が指さすと、吉井も気づいた。
その直後に、少女の姿が見えなくなった。
「おい、車に乗り込んだぞ!」
吉井は、そう叫ぶと、駆け出した。
剛志も、全力疾走で、後に続いた。
吉井は、動き始めていた車の前に、立ち塞がった。
驚いた男は、慌ててブレーキを踏み、エンジンを切った。
助手席に座っていた少女は、吉井の後から駆けてきた剛志を見て、目を見張った。
男が、荒々しくドアを開けて、降りてきた。
「なにやってんだ! 危ないじゃないか!」
「ちょっと、おっさんに話があってな」
「おっさん、とはなんだ! 言葉遣いも知らんガキのようだな。 運転席に戻って、車の怖さを教えてやってもいいんだぞ!」
「そんな度胸があんのか、おっさんよ」
「なにっ!」
男の顔が、怒気を含んで、赤くなった。
吉井は、構わずに、
「あんた、あの女の子を騙して、どこへ連れて行こうとしてるんだ?」
と、火に油を注ぐようなことを言った。
剛志は固唾を呑んだ。
吉井は当てずっぽうで言ったらしいのだが、男の様子が変わった。
男は、明らかに狼狽した様子で、周囲を気にし始めた。
車の出入りが比較的多い時間帯だった。
吉井は、男の心の中を見透かしたように、
「ここで話をするのはまずいんじゃないのか。 場所を変えようか」
と言って、顎をしゃくって、方向を示した。
吉井は返辞を待たずに歩き始めたのだが、男はついて来た。
少女の手前、逃げ出すわけにもいかず、簡単に話をつけるつもりでいたのだろうが、普通の中年男でないことだけは確かだった。
少女は、助手席に座ったまま、顔を両手で覆って、降りて来なかった。
剛志は、後ろ髪を引かれる思いがしたが、男の後に続いた。
パチンコ店の大きな建物の脇に、大型のガスボンベのようなものが五,六本あって、大人の背丈の二倍ほどの高さの金編み付きの柵で囲まれていた。 隣接した全国チェーンの紳士服店との境目は見上げるようなコンクリートの壁だ。
その周辺は、全く人気がない。
男は、吉井を甘く見ているのか、そこまでついてきた。
吉井は、駐車場の方からは見えない位置に来ると、向き直った。
男は、そこまで我慢していたらしく、すぐに食ってかかった。
「おい、こら、聞き捨てならんことを言ったな! 女の子を騙してる、とはどういう意味だ!」
「その通りの意味じゃないかよ」
「なんだとっ!」
「卑劣い手を使いやがって、あの娘をどこに連れ込むつもりでいるんだ」
「な、なにっ! こ、このおれに向かって! おれを誰だと思ってるんだ! 車の中の短刀を見せてやってもいいんだぞ。 そもそも、おれが何をしようが、ションベン臭えガキの知ったこっちゃないだろうが!」
男は、精一杯背伸びして、吉井を脅すつもりでいたようだ。
吉井の顔に冷たい笑いが浮かんだ。
危険な兆候だったのだが、男にそんなことがわかるはずもない。
吉井は、間合いを計っていたらしく、男の股間を蹴り上げた。
肥満体の大迫を一撃で倒した情け容赦のない蹴りだ。
男は、意味不明の悲鳴を上げて、股間をかかえて、へたり込んだ。
「こ、こんなことして・・・た、ただで・・・す、すむと思ってんのか」
男は、先刻までの威勢はどこへやら、背中を丸めて膝をつき、呻くような声を出した。
剛志は、この男のことが頭にきていたので、股間をかかえて呻き声をあげている男を、むりやり仰向けにして、馬乗りになると、両手で首を締めつけた。
吉井が、屈み込んで、苦痛に顔を歪めている男に言った。
「あんたの運転免許証を見せろ」
男がそんな要求に従うはずがない。
「息が止まるまで締め上げろ」
剛志は両手に力を加えた。
剛志の締め方には、手加減がない。
男は、剛志の左腕を、右手で何度も叩いた。
これはギブアップの合図であることを知っていたので、剛志は両手の力を緩めた。
男は、苦痛に顔を歪めながらも、背広の上着の内ポケットを探ろうとしたが、剛志に押さえつけられていて、自由に身動きできない。
剛志は、勝手に内ポケットを探って、黒革の免許証入れと厚めの手帳を取り出した。
免許証入れを吉井に渡しておいて、手帳の方は元通りポケットに戻した。
吉井は免許証の内容を確認すると、男の上着の胸ポケットからボールペンを勝手に抜き取って、さらに、内ポケットを探って、剛志が戻したばかりの手帳を取り出した。 手帳を開いて、中の紙を一枚引き破ると、手帳だけを元のポケットに戻しておいて、立ち上がった。
吉井は、免許証を見ながら、言った。
「こんな年齢で、スケベなこと考えるもんだな。 あんたの名前と住所をメモさせてもらうよ。・・・長瀬さんよ、あんた、奥さんや子どももいるんだろう?」
男は、苦痛に顔を歪めていて、答えない。
剛志が、また首を締め上げると、慌てて、地面から頭を持ち上げて、頷く仕草をした。
「あの女の子をモーテルにでも連れ込むつもりでいたんだろう?」
「そ、そんなことない! あ、あんたらの思い違いだ!」
男は、慌てて、喘ぎ声で言った。
「あの女の子に聞いたら、どうせ、わかることだがな」
「・・・・・・」
「あんたの自宅の電話番号を教えろ」
剛志は、また、首を締め上げなければならなかった。
男は、呻くような声で、電話番号を言った。
「名前と住所はわかってんだからな。 偽番号だとわかったら、大勢の仲間と、あんたの家に押しかけるぞ。 あんたがどんなエロ親父か、奥さんや子供に教えてやって、隣近所にも顔向けできんようにしてやる。 それに、おれを誰だと思ってるんだと強がっていたが、それがどういう意味か教えてもらいにな」
男の目が怯えている。
吉井は、屈み込んで、免許証を元の内ポケットに押し込み、ボールペンを胸のポケットに戻しておいて、立ち上がると、
「ケガはたいしたことはない。 しばらくは使い物にならんだろうがな。 この後で、なんかヘンなマネでもしやがったら、どういうことになるかわかってるだろうな?」
と、脅しつけた。
剛志も、吉井の尻馬に乗って、
「五箱、無償で使っていい、と言ったのは聞いてたからな。 これから、あの娘に近づいたり、つきまとったりしやがったら、世間に顔向けできんようにしてやるからな」
と、小生意気な脅しを入れた。
馬乗りから解放してやると、男は上体を起こしたが、頭を低く垂れたまま、股間をかかえて、また苦しげに呻き始めた。 吉井は、たいしたことはない、と無責任に請け合ったが、睾丸が蹴り潰されていたのかもしれない。
吉井と剛志は、男をそのままにして、駐車場へ引き返した。
少女は姿を消していた。
剛志が、拍子抜けして、未練げに周辺を見回していると、吉井も、話をしてみたかったのにな、と残念そうに言った。
西の空が夕焼け色に染まっていた。
二人は店内に入って、それぞれ、自分たちがいたコーナーへ向かった。
剛志の台の前のプラスチック箱には、半分ほど遊技玉が残っていて、吉井を呼びに走った時のままだった。 背後の床に一箱置いてあるのも、そのままだ。 剛志が、計数器の方へ持って行こうとして、台の前の箱を持ち上げると、下に小さな紙切れが置いてあった。
ボールペンの走り書きがある。
黒い文字は、三行で、こう読めた。
余計なことをしなくてよかったのよ
でも、ありがとう
好きよ なつき
剛志は、呆然として、しばらく紙片を見つめていた。
胸がキュンとなった。
外に出てから、吉井に紙片を見せると、吉井は、よお、色男、おまえも、油断ならんやつだな、と言って、剛志の背中をどやしつけてから、こう言った。
「あいつ、ズベ公らしいな。 あのおっさんの言いなりになって、金をもらうつもりでいたんだろうよ」
剛志は、吉井の言う通りかもしれないと思ったが、なぜか切なかった。
第六章 使い込み
1
三学期の学年末試験では、赤字の欠点科目が半数以上に及んだ。
保護者は、当然、学校に呼び出される。
剛志は、母親の蓉子に伴われて、各科目の担当教員に、得点状況の推移、課外授業の出席状況、宿題・課題の提出状況、等について厳しい言葉で叱責されながら、大職員室や職員控え室などを回った。
半数以上の科目で、このままでは進級できない、あるいは、進級は難しい、と言われた。
これに学級担任の説諭が加わり、蓉子は、待ち時間を加えると、午後三時過ぎから七時前まで拘束され、油を絞られることになった。
学校では、低姿勢に徹して、荒れなかった蓉子も、家に帰った途端に、居間の畳の上に体を投げ出すと、悲痛な声を上げて、身を揉むようにして、泣き出した。
自分を大切に育ててくれた母親が、身も世もあらず嘆いている様子は、剛志が初めて味わう衝撃だった。
父親の俊之は、勤務先の物流会社の人員削減策で、超過勤務や休日出勤が増えていた。
深夜近くに帰宅した俊之は、蓉子から報告を聞いたはずだが、自室に引きこもっている剛志を呼び出しに来なかった。 剛志は拍子抜けしたが、ほっとした。翌朝は、早く出勤していて、顔を合わせずにすんだ。
剛志は、三週間にわたって、欠点科目の追試を受け、指示された膨大な量の課題を仕上げることで、二年生に進級することが許された。 優れた潜在能力に加えて、人並み以上の忍耐力・持続力の持主であることを客観的に証明したことになる。
この時期、さすがに、パチンコ店へ出入りする気は起こらなかった。
当然のことだが、時間的にも、心理的にも、そんな余裕はなかった。
かと言って、『ギャンブル依存症』が治っていたわけではない。
『ギャンブル依存症』は、薬物中毒に劣らぬ習慣性がある。ちょっとしたきっかけがあれば、元に戻るのに、それほど時日を要しない。
パチンコ店に出入りしていれば、竹岡里沙やなつきに会えそうな、そんな甘い期待もどこかにあった。
最新の機器に魅入られて、パチンコ店への出入りが、また、習慣化した。徐々に深みにはまる。 ある段階に達すると、手にする額も大きいが、負けた時の額も大きい。
大負けすると、死にたくなるほど後悔して、もう二度とパチンコ店には立ち入らないと決意する。
この決意が長続きすることはない。
次の休日が来ると、大損をした分を取り戻せそうな気がしてくる。
結局、持ち金を数万円単位で増減させながら、一喜一憂しているうちに、多額の金を使い込んでしまっている。
依存症患者は、平常では考えられないような、頭の働かせ方をする。
使える金があるとなれば、どんな性質の金にでも手を出してしまう。
剛志の場合、皮肉なことに、母親の蓉子がそれを可能にする環境を作っていた。
蓉子は、剛志が地域拠点の進学校に合格した時、異常に喜んだ。
合格発表の日、『村山剛志』名義の預金通帳と持ち出して来て、剛志に見せた。大学に進学する時のために、ずっと貯めていたものよ、と言って、お父さんには内緒よ、と、言わずもがなの言葉まで付け加えた。
最近の蓉子は、俊之に知られたくなかったのか、それとも、かなりの額に達していたからか、この通帳と印鑑を整理ダンスの一番下の引き出しの底に仕舞い込んでいて、ほとんど点検することがなくなっていた。
2
五月の連休が終わって四、五日経った頃、剛志が帰宅して、玄関のドアを開けると、険しい顔をした蓉子が、上がり口に待ち構えていた。
剛志は仰天した。
蓉子が通帳を手にしていたからだ。
父親の俊之は、K市のO区にある家庭用雑貨を卸す会社に勤めている。早朝に出勤して、帰りも遅い。休日出勤や超過勤務が増えていた。
俊之が在宅している時は、たいてい、蓉子も家にいた。
蓉子は、パートに出ると、午後四時過ぎまで帰らない。
『村山剛志』名義の通帳と印鑑の存在を知っていて、蓉子に知られずに、それを探し出し、持ち出せるのは、剛志しかいなかった。
蓉子は久しぶりに通帳を点検してみたのだろう。
心当たりのない金が頻繁に引き出されていることに肝を潰して、すぐに銀行に出向いて、問い糾したに違いない。
窓口で、自分の子供の身分証明書のコピーを見せられて、動転して帰って来ていたのだろう。
剛志は観念した。
カバンを放り出すと同時に、土間に土下座した。
剛志なりに考えていた言い訳があった。
「・・・上級生に・・・恐喝されて・・・」
さすがに、言葉が続かない。 握り拳の背で目を擦りながら、しゃくり上げていると、実際に涙が出てきた。
「なんですって! お金を脅し取られていたって言うの?」
剛志は、膝の上に拳を置いた両腕を突っ張って、うなだれたまま、頷いてみせるしかない。
「ほんとなの? だったら、とんでもない犯罪じゃないのよ! その上級生って、誰よ! お母さんが、すぐ警察に訴えてやるわ!」
剛志は、梶原らの名前を出そうと思っていたのだが、言えない。
蓉子がすぐに学校や警察に通報しそうな気がした。
「こんなに何回も・・・金額も半端じゃない・・・とても信じられないわ・・・K高に、そんな生徒がいるのかしら・・・名前はわかってんでしょう? 誰?」
蓉子の声や言い方が微妙に変化してきたような気がした。
「言いなさいよ! ・・・言えないの? ・・・言えないんでしょう? 三万円とか、五万円とか、こんなに何回も、引き出してあるじゃないの! 冬休み中も脅されたの! 五月の連休の頃も脅されたの! ・・・脅し取られたにしても、とてもK高の生徒が考えるような回数や金額じゃないわ」
矛先が急に変わったが、剛志は何も言えない。
「ほんとのこと言いなさいよ。 あんた、これだけのお金を何に使ったの? お休みの日にはほとんど家にいたことがないし、放課後も帰りが遅いし、おかしい、おかしい、と思ってたのよ・・・道場にはほんとに行ってたの? 図書館で勉強すると言うから、昼食代まで持たせてやっていたけど、あれ、全部、嘘だったんじゃないの? 文化祭や体育祭の頃、放課後遅くまで練習や準備があったり、休日登校が何度もあったりしたわね。 あれも嘘だったんじゃないの? ・・・お母さんを騙してたのね・・・だったら・・・ひどいわ・・・」
蓉子の声が震えて、泪声に変わった。
剛志が上目遣いに覗くと、化粧っ気のない顔から血の気が引いて、真っ赤になった両眼に涙を溜めて、痩せた肩を小刻みに震わせている。
剛志は、うなだれて、膝に涙を落としているしかない。
時間が経過しても、その状態が続いた。
幼い頃、剛志が泣き出すと、蓉子は、いつも機嫌を取り始め、言うことを聞いてくれた。
そんな母親が、こんな場面にいつまでも耐えられるはずがなかった。
蓉子は、いたたまれなくなったのか、背を向けると、居間に入ってしまった。甘やかして育ててきたことに対する慚愧の思いに加えて、わが子のことがわからなくなり、この事態を収める自信を失くしてしまったのだろう、と思われた。
第七章 裏切り
剛志は、五月中旬に実施された中間試験の結果が悪く、試験期間が終わって一週間ほど経った頃から、放課後課外への出席を義務づけられた上に、期限のない居残り学習を命じられていた。
居残り学習も三日目に入った。
早朝補習、平常授業、放課後課外、その後の自習、と、さすがに疲れて、教室を出た。
廊下をぶらぶら歩いて、三階の東端にある非常階段の踊り場に出た。
初夏の風は、微風でも、缶詰め状態が続いている身には、心地よかった。
眼下に、広い校庭が広がっている。大きく西に傾いた日射しがグラウンドを照らしていて、樹木やゴールポストなどが長い影を引いていた。
踊り場から見える視野の範囲内の校庭で、サッカー部が練習していた。
十数名の下級生らしい部員が、三人一組になって、ボールを蹴り、パス交換をしながら走っている。
剛志は、視線を移して、梶原を探した。
左端に見える朝礼台の周辺に、七,八人の三年生がいて、その中に梶原がいた。背が高いので一目でそれとわかった。
剛志は目を疑った。
梶原に向かって、媚びるような笑顔を向けて、話しかけている生徒が黒岩健治だったからだ。
剛志の胸の中で、何かがはじけた。
黒岩は、剛志が梶原らに痛めつけられた頃から、剛志を避けるようになっていた。剛志は、そのことを気にしていなかった。
二年生に進級して、黒岩は二年一組、剛志は八組に在籍していた。
学級が違えば、その気になれば、校内で顔を合わせなくてすむ。
剛志は、放課後になると、すぐに学校を出ていた。
吉井と一緒にいる方が楽しかったし、何よりも、パチンコに魅入られていた。
剛志は、黒岩と梶原の様子を見て、体育館裏で痛めつけられて以来、ずっと不可解のままだった謎が解けたような気がした。
あの日、バスケットボールで遊んでいる途中で、黒岩が日直を言い訳にして早めに体育館を抜け出し、その後で、剛志が教室に帰ったら、梶原らが待ち受けていたのだ。
あの時の黒岩のことが頭に浮かんできた。
三階の二年生の教室を一緒に歩いていた時の黒岩の様子、梶原と杉元のクラスの廊下を通りかかった時、東側の階段の近くまで逃げて行った時の慌てた様子、その直後の会話、など。
剛志は血が逆流するような怒りを覚えた。
黒岩と梶原の関係を、半年以上も、知らずにいたことになる。
そのことも怒りを増幅させた。
吉井和己と剛志の関係は、結局、上級生たちに知られるようになっていた。
吉井の兄の政博が、かつて、最大最強の暴走族集団の総長で鳴らしていたことを知っている者は、梶原ばかりではなかった。
剛志に手を出せば、吉井兄弟が乗り出してくるという噂が、いつの間にか、一人歩きするようになっていた。
その噂は剛志の耳にも入ってきたが、剛志は肯定も否定もしなかった。
校内で、剛志に手出しをしてくる者がいなくなっていた。
剛志は、翌日、四組の田島嘉彦を呼び出して、黒岩と梶原のことを話した。
田島が顔色を変えた。田島は一本気だ。
剛志は、その日の昼食時間に、田島と、一組へ行って、黒岩を呼び出した。
黒岩は、剛志の顔色を読むのが習性のようになっていた時期があったので、すぐに事態を察したらしく、引きつったような顔になって、出て来た。
剛志は、黒岩に逃げられないように、右腕を黒岩の左腕にからめた。
連れ出したところは、因縁の場所、体育館の裏庭だ。
真ん中あたりの銀杏の木の下に立った剛志は、黒岩に顔を近づけた。
顔から血の気が引いた黒岩は、足が震えている。
「黒岩、おまえ、おれを裏切ったんじゃないのか?」
「えっ・・・! な、何、言ってんだよ。そ、そんなことするはずないじゃないかよ。なんで、そんなこと、言うんだ」
「おれは、不思議に思ってたことがあるんだ」
「えっ・・・? どんなこと?」
「おれは、梶原に、でかい顔してるとか、恐喝やってるとか言われた。おれには何のことかわからなかった。おまえには、わかってんじゃないのか?」
「何言ってんだよ。そんなこと知らないよ」
「ほーう、そうか。・・・ところで、おまえと一緒に、上級生のクラスを見てまわったことがあったな?」
「あー、あれか。それがどうしたんだ。従いて来いと言われて、従いて行っただけじゃないかよ」
黒岩は、半年以上の前の話なのに、すぐにそう言った。
剛志の抑えていた怒りが一気に爆発した。
「この野郎! しらばっくれやがって!」
黒岩の両肩をつかんで、身体を引き寄せておいて、いきなり、腹部に膝蹴りを入れた。
怒りが強い分、強烈だった。
黒岩は、腹を両手で抱えて、くずおれた。
「おまえのおかげで、おれは、あいつらに、ここでひどい目にあったんだ。おまえにも同じ痛い目を見せてやらなきゃ、おさまらないんだ」
「お、おれは・・・な、何も・・・してないよ」
黒岩は、腹を抱え、背中を丸めて、うずくまったまま、苦しそうな声を絞り出した。
「じゃ、なんで、おまえが先に体育館を出て行ったあと、おれが教室に帰ったら、ちょうどうまい具合に、あいつらが待ってたんだ」
「そんなこと知らないよ」
「へえー、そうか。おまえ、確か、梶原とは関係がないと言ってたな?」
「関係があったらいけないのかよ」
黒岩が居直ったような言い方をした。
いきなり膝蹴りを喰らって、頭にきていたのだろう。
田島が顔色を変えた。
「なんだと! おまえ、やっぱり、裏切ってやがったんだな!」
田島は、そう怒鳴るや、まだうずくまっている黒岩の後襟首をつかんで、引きずるようにして立ち上がらせたかと思うと、右肩と襟首をつかみなおして、柔道の内股の技をかけた。
仰向けに倒れた黒岩が悲鳴をあげた。
上になった田島が、黒岩の股間に入った左脚に、さらに力を加えたからだ。
剛志の怒りは収まらなかった。
右膝を折ると、仰向けに倒れている黒岩の腹部をめがけて、体重を乗せて、膝蹴りを入れた。
『絆』の新井正二郎に見舞ったのと同じ右膝蹴りだったが、新井と黒岩では、体型も体の鍛え方も違う。膝に伝わった感触で、それがわかった。
剛志は、すぐに、やりすぎたと思った。
慌てて、屈み込んで、黒岩の顔を覗き込んだ。
黒岩は、白目を剥いて、完全に失神していた。
田島も、肝を潰して、屈み込んだ。
田島が、震え声で、言った。
「ど、どうしようか? このままじゃ、死んじまうかもしれんぞ! 救急車を呼んでもらった方がいいんじゃないのか?」
顔を蒼白にした剛志が呆然としていると、田島は、剛志の返事を待たずに、駆け出した。
救急車で病院に搬送された黒岩は、命に別状はなかったが、肋骨にひびが入っていた。
学校側と黒岩の保護者、保護者同士の話し合いなどに時日を要し、曲折があったが、結局、今後の学校生活への影響を心配した黒岩側が折れてくれたので、なんとか、事態を収めることができた。
剛志は無期停学、田島は十日間の停学処分になった。
家庭謹慎を言い渡された者は、停学の期間中、外を出歩くことは許されない。両親のどちらかが在宅していなければならず、毎日、欠かさず、二十四時間の過ごし方と長文の反省を書かなければならない。これが長期間に及ぶと、大変な苦行だ。
剛志は、謹慎を早く解除してもらいたい一心で、反省日誌に、睡眠時間以外の時間はほとんど勉強に励んでいるような内容を書き続け、思いつく限りの殊勝な反省の言葉を書き連ねた。
学校側としても、無期停学とは言え、いつまでも停学処分のままにしておくことはできない。一学期の期末試験も迫っていた。
三週間以上経過して、剛志は、保護者同伴で、学校に呼び出された。
両親同席の上で、入れ替わり立ち替わり、厳しい説諭の言葉が続いた。
剛志は、その間、殊勝に項垂れて、大粒の涙を流し続けていた。 学校側は、結局、三週間の家庭謹慎で、停学処分を解除した。
第八章 金銭恐喝
剛志は、謹慎中、鬱屈した思いの中で、三週間余りを過ごした。
知らず知らずのうちに、心中に苛々《いらいら》が募っていた。
一学期の期末試験が終わり、七月も中旬になろうとしていた。
六時間目の授業が終わると、清掃時間になる。
剛志は、謹慎が解除されてから、掃除を真面目にやっていた。
三階から四階に上がる階段を掃いているとき、一年生が三人ほど、騒々《そうぞう》しく、駆け上がって来た。
箒を握って身を屈めるようにして掃いている剛志の傍を、笑いさざめきながら、通り抜けようとした。
あいさつをしなかったばかりか、剛志の握っていた箒に一人の足が触れたが、それにも気づかぬ風だ。
剛志は、突然、キレた。
「こらっ! おまえら、今、何の時間だ! 掃除の時間だろうが!」
剛志の剣幕に驚いている三人を、有無を言わさず、三階の廊下の外側にあるベランダへ連れ込んだ。
階段の傍のベランダは、男子用と女子用のトイレがはみ出した分だけ、人目につかない。
「おまえら、そこに座れ!」
剛志は、三人を睨みつけておいて、コンクリートの床を指さした。 一人が、剛志を睨み返すような目で見た。
剛志は、これに逆上した。
「キサマ!」
と、怒鳴ったのと、その一年生の左ほっぺたを平手で思いっきりひっぱたくのと、ほとんど同時だった。
その生徒は、一見して、他の二人の一年生とは違っていた。
目つきが尋常でなく、三人の中では、一番身長があった。手入れをしたらしい眉毛が細く、左右の額の脇には剃り込みを入れたらしい跡がある。
他の二人は、すっかり肝を潰して、正座していた。二人とも、小柄で、おとなしそうな顔をしている。剛志にひっぱたかれた一年生に付き合わされているとしか思えなかった。
ひっぱたかれた一年生も、赤くなった頬を左手でさすりながら、二人に遅れて、ふてくされたような態度を露骨に見せて、右端に正座した。
剛志は、その態度を見逃さなかった。
中学時代に、上級生が下級生に仕置きを加えている現場に居合わせたことがあって、その時の様子が頭をかすめた。
「ちょっと、そのまま、待ってろ!」
と、言い捨てて、いったん廊下に出て、近くの男子トイレに入り、掃除用具入れの中からポリバケツを取り出した。
掃除中の男子生徒二人には、ちょっと借りるよ、と言ったのみで、すぐにベランダに引き返した。
剛志は、睨み返した一年生の頭から、そのポリバケツをかぶせた。
かぶせたバケツを、二度、三度と、右足で蹴りつけた。
その一年生は、トイレのコンクリート製の固い外壁に、ポリバケツをかぶったまま、蹴られた回数だけ、激しく頭を打ちつけた。
他の二人の一年生は、正座したまま、真っ青になって、怯えた目で、その様子を横目で見ていた。
剛志は、ポリバケツを外して、ケガをしていないことを確かめてから、組と名前を言え、と命じた。
三人は、顔を見合わせて、口を開かない。
剛志は、バケツをかぶせて蹴りつけた生徒の前に、顔をくっつけるようにして、屈んだ。
その生徒は、下を向いたままだったが、
「一年三組、ナカオ、ヒロキ」
と、居直ったよう声で名乗った。
剛志が膝を進めて、他の二人にもそれぞれ顔を近づけると、怯えた声で、
「・・・一年三組、ハタナカ、ショウイチロウ」
「・・・一年三組、イシハラ、ヒデヒコ」
睨み返した生徒は、ナカオヒロキ、だとわかった。
立ち上がった剛志は、押し殺した声で、
「掃除時間に遊び歩いていたんだからな。 それに、あいさつもしないで、おれの掃除の邪魔までした。都合のいいことを言って、チクッたりしやがったら、こんなことじゃすまさんぞ!」
と、三人を脅しつけておいて、ナカオに言った。
「ナカオ、おまえは、今日の放課後、体育館裏に来い。 いいか。 終礼が終わってから一〇分くらいは待っててやるからな」
ナカオは、不服そうな顔をして、返事をしなかったが、剛志がまたバケツを手にすると、不承不承に頷いた。
剛志は、終礼が始まるまでの間に、二年生の主立った連中に、一年生で目立っている生徒の情報を訊いて回った。
中尾弘樹は、思ってた通り、一年生の中で顔を利かしている生徒だとわかった。こういう生徒は教員に訴えるようなことはめったにしない。 剛志の心の中に、ある考えが芽生えていた。
剛志は、放課後、一人で、体育館の裏庭で待っていた。
中尾も、すぐに、一人で姿を現した。
剛志を見ると、駆けるようにして、傍に来た。
掃除時間のときと違って、ペコペコして、愛想笑いを浮かべている。
仲間から剛志のことを聞かされてきたのだろう。
「何か話があるんですか?」
「話があるか、じゃないだろうが。 中尾君、キミはボクを睨みつけただろうが」
「・・・・・」
「ボクは下級生に睨みつけられたのは初めてだ。 このオトシマエをどうつけるつもりなんだ」
剛志は、ボクとかキミとか言って、言葉遣いが荒くならないように気をつけた上に、オトシマエ、などというやくざっぽいことばを使った。
「・・・・・」
中尾は、俯いたまま、黙っているしかない。 上級生のこんな愚問には、答えようがないからだ。
「どうなんだよ」
剛志はドスを利かせたつもりの声で言った。
「・・・どうすればいいんですか?」
「そうだな・・・ここんとこ、金がなくて困ってるんだ。 悪いけど、一万円ほど貸してくれないか。・・・明日でも、いいぞ」
中尾は、びっくりした様子で顔を上げたが、すぐにまた、うつむいてしまった。
「な、いいだろ?」
剛志も、思いきって口に出したことを、引っ込めるわけにはいかなかった。 中尾は、しばらく躊躇っていたが、突然、顔を上げると、決意したように言った。
「一万円・・・で、いいんですか?」
剛志は、ほっとした。
「必ず返すからさ」
中尾は、ズボンの尻ポケットから、二つ折りの財布を取り出し、中から一万円札を抜き出して、剛志に渡した。
「悪いな。 キミは金持ちだね」
「いや、ちょうど払うものがあって、親がぼくに渡していたお金なんです」
「心配しなくていいよ。 金が手に入ったら、必ず返すからさ」
剛志にやさしくそう言われて、中尾はうれしそうに頷いた。
剛志は、お金が手に入ったら、本気で返すつもりでいたが、この金が中尾に返ってくることはなかった。
パチンコ店に足を踏み入れると、一万円くらいの金は端金だ。儲けたにしても、別の日には、すぐに無くなることがわかっているので、中尾に返す気など起こらない。
剛志は、資金がなくなると、中尾に金を無心するようになった。 口封じのための脅しの言葉に気を遣いながら、何日か前に金額を予告しておくと、中尾は、それに近い金を持って来た。
紙幣の他に、百円玉や五百円玉が入った紙袋を渡すことがあった。
二学期に入ってからも、中尾弘樹との接触は間欠的に続いていた。
無警戒だったわけではない。 頻繁に呼び出すことは、さすがに、控えていた。 中尾以外の資金源が必要だと思っていた。
九月が中旬を過ぎた頃、剛志は、石原秀彦と畠中祥一郎を体育館裏に呼び出した。
金を「貸し」てくれ、と脅しつけたのである。
二人は、相談したのか、翌日、それぞれ、二千円ずつ持って来た。
「 ・・・すみません・・・これだけしかないんです」
小柄な二人は、剛志の前で、さらに小さくなっている。
「一万円ずつ持って来い、と言っただろうが! どこに耳がついてやがるんだ! これじゃ足りん! 明日、また来い!」
二人は、それぞれ、襟首をつかまれて、上体を激しく揺すぶられながら脅されて、震え上がった。
剛志は、何気なく、ポケットから、折りたたみ式のナイフを取り出して、鋭い刃を飛び出させたり入れたりして、二人の顔を交互に見ながら、手遊びをして見せた。
深い考えなどなかった。遊び半分だった。ナイフは、護身用のつもりで、ポケットに入れていたもので、無論、実際に使う気など毛頭ない。
しかし、石原や中尾には、そうは見えない。
二人は、夏休み前の清掃時間に、中尾が頭から掃除用のバケツをかぶせられて、何度も激しく蹴りつけられる現場を、震えながら、見ていたことがある。
目の前にいる上級生の怖さが、身に染みて、わかっていた。
それは、得体の知れない恐怖感だった。
石原と畠中は、飛び出してきそうな目をして、真っ青になった。
二人は、ほとんど同時に、持って来ます、と言うや、逃げるようにして駆け出した。
中尾でさえ剛志の脅しに屈していたのだから、石原や畠中の恐怖感が、どれほどのものだったか想像に難くない。
第九章 裏サイト
1
同じ頃、昼食時間になると、三年生の男子生徒たちが、四,五人、二年生の剛志の学級の廊下のあたりに屯するようになった。
剛志は、自分が目当てで、何か言いがかりをつけに来たのだろうと思って、心の中で身構えていたが、そうではなかった。
剛志の学級の美少女・折見綾が目当てであるらしいことがわかった。
手招きして、折見を呼び出そうとする。
折見は、困惑した様子で、廊下に出て行って、立ち話の相手をしたりしているが、嫌がっていることが傍目にも明らかだった。
そんなことが何日か続いていた。
剛志は、気になって仕方がなかったので、折見が教室に戻って来た時、あいつら何なんだ、と訊いた。
折見は、泪目になって、俯いた。
剛志は、驚くと同時に、なぜか胸がキュンとなったが、聞き耳をたてている生徒たちもいる中で、それ以上は訊けなかった。
剛志は折見に特別な感情を持っていた。
折見は、成績がよくて、仕事もできる学級委員として、生徒・職員双方に信望があった。
学級で配布する冊子類の入った重い段ボール箱を職員室や進路室から運んだりする時など、剛志に声をかけた。教室の掲示物の張り替えをするときも、背が高いからと言って、剛志のところへ頼みに来た。
そういう場合、剛志だけに仕事をさせずに、自分も一緒に動いた。
剛志は、折見も、自分のことを、少なくとも、嫌ってはいない、と思っていた。
その日、七限目の課外授業まで出席して、帰り支度をしていると、折見が傍に来て、家庭科室で待ってるから、と言った。
剛志は、一瞬、耳を疑ったが、胸が高鳴った。
折見が出て行った後、時間を置いて、教室を出た。
家庭科室は特別棟の一階にあって、美術室や書道室の先にある。
胸をどきどきさせながら、中に入ると、折見が教室の後の方にいた。
他に誰もいない。
机・椅子を少しだけ片付けて、空いた空間に、椅子を二つ向かい合わせに置いて、折見は、その一つに座っていた。
折見は、すぐに立ち上がって、
「あ、こんなところへ呼び出して、ごめんなさい」
と言って、謝った。
剛志は、柄にもなく、おどおどしていた。
何か言わないと、間が悪かった。
「あの連中のことだろう?」
と言いながら、近づいた。
「そうなの。どうにもならないかもしれないと思ってるんだけど・・・」
折見は、そう言って、剛志にも座るように指示する仕草をしてから、元の椅子に座った。
剛志は、向かい合った椅子の間隔が狭いような気がして、椅子を後に引いて、間隔を広げておいて、座った。
白いセーラー服に、濃紺のスカート。半袖の夏服なので、スベスベした白い腕がすぐ目の前にあった。ほっそりした体つきなのに、胸の隆起が目につく。 思わず、下に目を逸らすと、スカートの下に、形のよい脚がすんなり伸びていた。
青春の岐路(五)に続く
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