第3話
「ったく、一言教えてくれたって、良かったじゃねーか」
「悪い悪い」
獣人の謝罪に、反省の色はない。
眉間に皺を寄せて睨むが、相手はニヤニヤ笑うだけで堪えた様子もなかった。
「でも、国賓でも来ない限り、お前の息子は帰ってこねーからな。お前も、騙さなきゃ見にも行かなかっただろう?」
旅人は、無言でとろとろに煮込んだリゾットをかっこんだ。
図星である。
「お前もいい加減強情だな。息子に親父が会いに行くのに、理由がいるのか?」
「理由はいらねーが、どこの馬の骨だかわからない奴をあいつに会わせるわけねーだろ?相手は、公爵さまなんだからな。息子に会いに来たっつっても、証明出来ねぇよ」
「息子に、人には知られてない、恥ずかしい話とかないのか?俺のときみたいに、証明になるだろ?」
「そうだな。お前の尻にある矢じりは、ヤろうとした全裸のまま逃げ出したときに、キレた相手から食らった矢のものだったなんて、恥ずかしくていえねーよな?」
獣人のニヤニヤ笑いが止まる。
ちなみに、相手はキレイなおねーさんに見せ掛けたカマ野郎で、この獣人は危うく掘られるところだったのだ。
それを現場で見たときは、戦慄したものだ。
「それに、今更どんな面下げて息子に会えばいいんだ?自分を放って、逝っちまった親父がよぅ?」
「お前…」
憐れむ様な目をする元親友に、旅人は笑い掛ける。
魔王討伐のメンバーであり、良くふたりでバカをやっていた。
けれど、情に厚いこの獣人は地位も名誉も邪魔だと蹴ったくせ、妻を失って自暴自棄な自分を黙って支えてくれたのだ。
そして自分が死んだ後、両親を失った息子を守ってくれた。
元親友は、黙って旅人を抱き締める。
獣人である元親友は元々体格が良いが、今では自分の身体が小さいためにまるで覆い被さる様になった。
「泣きたいなら、胸くらい貸してやる」
そんな真面目な様子な獣人だが、手が旅人の尻をわし掴んでいる。
「中身は兎も角、外見は若い女だからやくと、イテテテテッ!」
まあしかし、シリアスムードが長続きしないのもどうかと思うが。
取り敢えず、縞模様の尻尾を引っ張っておいた。




