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未来宣告  作者: 海猫銀介
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第5話 俺だって覚悟は出来たさ


俺はようやく飯を終えて自室で横になった。

あの後、現場では (俺だけの)凄まじい戦いが繰り広げられていた。


隣では奴が飯を平らげた後も、俺が食い終わるまで両親と楽しそうに話してやがった。

俺はそんな余裕もなく必死で飯を口に運び、もはや食べてると言うよりかは押し込んでいる状況だ。

ようやく食べきった俺は満腹、というよりほぼ限界に達していた。

俺はフラフラしながら無言で2階へと上がる。


それに気がついたのか奴は心配そうな顔で「顔色悪いよ?」とか言いながら背中をさすってくれた。

ちょっと優しいところあんだな、だがこの苦しみは十中八九お前が原因であると思うと腹が立つぞクソ。

「邦彦を頼むぞ椿君っ!」なんて、親父がゲハゲハと下品な笑いを立てていた。

どうやら謎の少女のことは俺に任せたようだな、いやこの場合謎の少女に俺を任せたが正しいか。


ま、下手にこれ以上両親に入ってこられても困るからな。

ここは一旦親父達抜きで情報の整理をしたかったところだ、と俺は安心した。


「ねぇねぇ君、大丈夫? お腹痛いの?」


静かに横になってる俺をゆっさゆっさと揺らしながら奴はそういった。

お前俺に恨みでもあるのか、そんなに揺らすとまた気持ち悪くなるだろうがっ!


「……なぁ、そろそろ俺の質問に答えてくれよ」


だが、俺はそんな怒りを押し殺しそろそろこいつの正体について聞かせてもらいたかった。

信じ難いが、こいつが未来人ってのはマジっぽいし……まずはそこらへんのことから、か。


「ん、そだね。 答えられることなら答えるよ」


ようやく奴も普通に応じてくれるようだ。

じゃあ、まずは。


「あの飯の量……お前がやったんだろ」


「あ、うん。 だってお腹好いてたし…毎日じゃないから大丈夫だよ?」


「やっぱりお前かーっ!!」


「きゃーっ!? どうして怒ってるの!?」


ついつい俺は怒りに任せて怒鳴ってしまった。

今こんなに苦しい思いしているのがこいつのせいだと確定したからな。


大方例の記憶操作で飯の量を操作しやがったんだな。

さて、脱線しちまったけどスッとしたからいいや。

俺は深呼吸をして仕切りなおした。


「……なぁ、お前一体俺の両親にどんな嘘吹き込んだんだ?」


「あー、えっとね。 私と君は幼馴染なの、それはもう大の仲良しの」


「そりゃわかるんだけど、それにしても変じゃねぇか?」


「うん、だってしばらくここの家にお世話になるからね。

複雑な家庭環境に耐え切れなくなった私は君に助けを求めてしばらく匿ってもらうとい――」


「ちょっとまて、何でお前が俺の家にお世話になるんだ?」


こいつまたサラッととんでもないことを言いやがった。

何を考えているんだこいつ。

何で俺の家に住み着こうとしているんだ?

あれ、コイツの目的ってなんだっけ。


「いいじゃない、こんなに部屋広いんだから」


「広いとかそういう問題じゃねぇだろっ!」


「ずっとじゃないし大丈夫だよ、宜しくね♪」


「勝手に決めんなっつーの! 大体なんだよそのめんどくさそうな設定はっ!

俺の家に住み込むっつーなら姉貴か妹にでもしとけばよかったんじゃねぇの?」


とりあえずこいつのペースに乗せられてはいけない。

俺は夕飯前にそれは学習している。

俺がこいつのペースに呑まれた途端、再び話は泥沼にはまってしまい全く進まなくなるからな。

今回はその対策の一つとして、『的確なツッコミ』を入れてみた。


「うーん、それじゃちょっと味気ないでしょ? やっぱりちょっとひねったほうがいいじゃない」


「無駄に拘ってんじゃねぇよ! それに本当に母さん達大丈夫なんだろうな?

あんなわけのわからん銃ぶっ放しやがって」


もっと色々と突っ込みたいところはあるが、俺は何とかこらえて押さえ込んだ。

この調子で奴から情報を入手するんだ。


結構冷静を装っているが、実は俺はかなり混乱気味で頭の中がパンク寸前だ。

こんなわけのわからない奴が来て見ろよ、誰でも頭おかしくなっちまうって。

正直俺がこんなに冷静でいられるのが不思議なほどだ。


「大丈夫だよ、あれは脳波を外部記憶媒体とリンクさせるための装置だからね」


「ん? 外部……リンク?」


「そうそう、私が事前に記憶を用意した装置と君の両親の脳波をその装置にリンクさせるの。

そうすると、あら不思議っ! その外部記憶媒体に入っている記憶が

自分の記憶と勘違いしてしまうのだーっ!」


奴は親指をグッと立てながら凄く楽しそうに力説した。

いや、誰が道具の説明をしろっていったんだよ。


「つまり、PCに外付けHDDつけるみたいなもんか。」


「うーん、この時代で言えばそれであってると思う」


何かうやむやな返事だな、ひょっとした未来にPCはないのか?


「しかし未来もおっかねーな、下手したら悪用し放題な技術じゃねぇか」


「大丈夫だよ、外部記憶媒体とリンクしてたら未来だと一発でバレるもん。

脳波リンクってのが可視化できるし」


「未来も未来でセキュリティ対策はバッチリなのな。ちなみに外部記憶媒体って何処にあんだよ」


「あの装置の中に一式はいってるよー、どうどう? 凄いでしょ~?」


またしても何処からともなく先程の銃は姿を現した。

自慢げに鼻を高くしながら謎の少女は装置の自慢をしていた。

何だ、そんなに未来の技術を紹介するのが楽しいのか。


「あー、で。何で俺の家に居座るんだっけ?」


俺は軽くスルーしてやると、奴はぷくーっと頬を膨らめせて俺を睨み付けた。

ひょっとして怒っているつもりか、せっかくの可愛い顔が台無しになってるぞ。


「それは君の傍にいれるからだよ」


プイッと顔をそっぽ向けながら、しっかりと俺の問いには答えてくれたようだ。

その言葉だけ見ると思わずときめいてしまいそうなぐらいグッと来る言葉なんだが……


ははーん、そうか。


そうだよな、そりゃ奴の目的が『アレ』なら自然だわ。

俺としたことが奴が最初に口にしたことを忘れるところだったぜ。

さあ、いよいよ核心に触れるときだ。


ツンッとそっぽ向いたままの奴の前で俺は正座をした。

もし奴の目的が『アレ』で間違いないのであれば

俺はその目的をはっきりと理解しなければならない。

俺だって黙ってやられるつもりはないからな。


今までにないほどの緊張感が一気に襲い掛かってきた。

変な汗は出るわ心臓がバクバク言い出すわ、正直俺はかなりビビっている。

ほんの数時間、こいつと何気なく接触していたが……今の感想はぶっちゃけ『ただの電波女』だ。

未来からやってきたって点は、さっきの技術といい初めて登場したときを思い返せば間違いはない。


つまりこいつは『嘘』をつかないことになる。

ならば……奴の目的も決して『嘘』じゃないはずだ。

いつまでもウジウジしてられん、俺は腹を括って奴に尋ねた。



「俺を殺しに来たってのも…本当なのか?」



一瞬のうちに、場の空気がずっしりと重くなりやがった。

全く……嫌な空気だ。


だが、俺はビビっている割には緊張感に欠けている気がする。

何せ驚くほど冷静だ、心臓バクバクさせて冷や汗をダラダラ流している俺が言っても説得力はないが。


俺は、奴の次の言葉を……静かに待つだけだった。


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