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未来宣告  作者: 海猫銀介
30/37

第30話 叫びたいのは俺のほうだ


自転車で数十分。

流石に短時間でこんだけ移動を繰り返すと非常に体が疲れる。

だが、それ以上にこの先に待つ人物のことを考えるとそんな事は言ってられん。

公園にはポツンと電灯が一つ置いてあるだけで、ほとんど明かりは無いに等しい。

本当にいるんだろうな、『俺』は。


「……邦彦、どうやら当たりみたいだよ」


「ん、どういうことだ?」


京は何かに気づいたようだ。

こいつは本当視野が広いな。

俺は目線を追ってみると、ベンチには縄で手足を縛られ、口にタオルを巻かれたままの少女の姿……

間違いなく、野月があった。


「野月っ!?」


俺は咄嗟に呼びかけたが、野月の反応は無い。

まさか死んでいるということは無いと思うが、俺の中では不安が過ぎる。


「そいつはもう用済みさ、お前がこうやって俺と対面してくれたからな」


「……来たか」


同時に、暗闇の中から姿を現したのは『未来の俺』だ。

前みたいにコート等で身を隠すことはしていない。

堂々と、姿を晒していた。


「こっち来いよ、遊馬 邦彦」


「……わかった」


ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、未来の俺はそう言った。

畜生、未来の自分なのに物凄く気持ち悪く感じる。

何が俺をこんな風にしちまったんだよ……。


「邦彦、ちょっと待って」


すると、京は未来の俺をにらめ付けながら俺の肩に手をかけた。

まだ野月は安全とは限らない、ここは大人しく従って起きたいのが本音だが、仕方ない。


「ん、懐かしいな、京じゃねぇか」


「僕は君の事を知らないさ、まずは貴方について教えてもらおうか」


未来の俺であっても、初対面であることには変わりは無い。

そう考えて、京は答えたのだろう。

まぁ、本来ならこんな風に出会っちまうこと事態が異常なのは事実だ。


「なんだ、お前も俺を知りたいか? そうかそうか、そんなに俺の過去が気になるかぁ?

なら教えてやるよ、『クロックス』を作り上げたのは……この俺さ」




・・・




は?

こいつ、何を言い出すんだ?

俺が……クロックスを、なんだって?

一瞬、相手が何を言っているのか理解できなかった。

あまりにも衝突的に、とんでもねぇことを抜かしやがったからな。


「それだけじゃねぇ、未来でタイムマシンってもんを開発したのもとんでも未来技術が次々と生まれていったのも

全部全部全部、俺の偉業なのさぁ。 だからなぁ、あの世界は俺が作り上げたのも同然なわけ、それを元に戻そうとして、何が悪い?」


「な、何言ってんだよ……俺がそんなこと、できるわけないだろ」


未来の俺がこんなタイミングですぐ嘘だとバレるようなことを口にするだろうか。

それにしても話が酷すぎるぞ、一体どうやったら今の俺があんな超越技術を身につけるというんだ?

正直、今までの中で最も信用できない話だ。


「……一体、何のために?」


京は、俺と違ってあまり動揺をしていなかった。

冷静に相手の話を聞き、表情を一つも変えずに俺に尋ねていた。

いや、本当はあいつだって驚いているはずだ。

なのに、それを見せてないんだあいつは。


「話は終わりだ、これ以上聞こうってんなら殺すぞ」


ギロリ、と京は強く睨まれた。

……なんだ、いきなり態度が変わったぞ。

理由は、知られたくないのか?


「邦彦を理由も無く殺すというなら、僕達が黙っちゃいないよ。 例え君の言う超技術がなくとも、

人体の根本的な構造が変わるはずが無い。

僕がこの距離から、君の命を取ることだって、難しいことではないさ」


「脅しのつもりか? たとえ銃を突きつけられようと、この時代の人間に殺されるはずがねぇんだよ俺は。

未来人ってのは、そういうもんさ」


緊迫した空気が漂った。

お互いが睨みあい、監視しあっているような状況だ。

一寸たりとも動いたりしたら、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。


……どうする、俺は何をすればいいんだ。

このまま黙って殺されるのも嫌だし、あいつを殺して解決も嫌だ。

だが、この状況に至ってまで、俺はその考えを押し通せる自信をなくしてきた。


「ん……」


突如、未来の俺が何かを察したのか後ろへ振り返った。

俺も同じ方向に目を合わせると、一瞬目を疑った。

ベンチで拘束されていたはずの野月の姿が消えていたんだ。


おかしい、一人で動ける状態じゃないはずだ。

何処へ消えて……?


「君、もう逃がさないからね」


この声は?

俺は後ろを振り返ると、縛られた野月を抱きかかえた椿の姿があった。

な、ナイスだ!

これで最悪野月に危害が加わる危険性もなくなったぞ。


「野月はもう用済みさ、俺は『俺』と逢えりゃそれでいい」


「……お願い、大人しく未来に帰って。 これ以上、君の罪を拡大させたくないから」


「断る、俺は『俺』を殺した後に『俺』を殺す」


「そんなこと、私がさせない」


椿はいつもと雰囲気が違っていて、俺ですら怖いと感じるほどドスを聞かせた声だった。

これらあいつの本来の姿だと思うと、少し寂しくは思う。

……だが、椿に頼りっ放しになるわけにもいかん。


「ならば殺すか、俺を。 いいよ、来いよ。 お前に殺されるなら、それはそれで構わねぇさ」


「……しない、殺さないもん」


椿は俺との約束を守る気でいてくれた。

すまないな、俺のわがままを聞いてもらって。

それにしても、妙な事を言い出したな『未来の俺』。

お前に殺されるなら、構わないって何だろうな。


「今の君は、自分を見失っているだけだよ。 思い出して、本当はもっと……優しい『君』がいるはずなんだから。

過去の自分を見て、何も思わなかったの? 私は凄く感じた、邦彦はとっても優しい人だって、わかったの」


「ゴチャゴチャうるせぇな……優しさが全てか? その『優しさ』で、取り返しのつかねぇ事態だって起きちまうんだよ。

わかってねぇ……誰もわかりゃしねぇ、せめて……この『悲劇』の連鎖を、止めるために――」


ギラリ――

月光に照らされ、銀色の刃物がキラりと輝いた。

俺は身構えた、今度は震えないぞ。


……大丈夫だ、落ち着け。

今は京も椿もついている、大佐だって遠くから見てくれてるし先生や先輩だって俺のことを応援してくれてるさ。

あんな刃物一つに、ビビってたまるかよ。


「それはそれは、とても可哀想な俺の始まりでした。

可哀想な俺は考えました、可哀想な俺が可哀想になる前の俺を殺せば

可哀想な俺が生まれることも無く、二度と悲劇は繰り返されないってさぁ」


こいつ、何言ってんだ?

戯言のように、突如何かを語りだした俺は、恐怖心を抱いた。

それは殺意に対する恐怖とは、また別な何かだ。

何なんだ、この不気味さは……?


ビュン――


一瞬、風でも通ったのだろうか。

俺の目の前で、何かが通ったのを感じた。


「危ないっ!」


すると椿は咄嗟に、俺に体当たりをしてきた。


ズサァァッ!


視界がひっくり返った。

無防備だった俺は当然、踏ん張りきることが出来ずに、大きく横転した。


「い、イテテ……な、なんだぁ?」


「ご、ごめんね邦彦」


椿は身を低くしながら俺の前に立ち、一言謝っていた。

いやいや、わかってるって。

こんなときに、お前が意味も無く俺を突き飛ばすわけ無いだろ。


助けてくれたんだよな。

俺が立っていた位置には、1本のナイフが突き刺さっていた。


「何故、邪魔をする椿ぃ?」


「邦彦は私が守る、そして君は必ず未来へ連れて帰るんだから」


まずい状況になってきたぞ、京は無事だろうな。

それに野月は何処だ、安全なところへ避難させねぇと――


すると、俺はすぐに京の姿を発見する。

京は近くに倒れていた野月は抱えて、俺と目線を合わせた。


ああ、わかったよ。

野月はお前に任せるぞ。


「未来を知ってもなお、生きようとするのかよ?」


今度は、いつの間にか『未来の俺』が俺の背後に回っていた。


「お前の都合だけで、殺されてたまるかよっ!」


恐れるな、震えるな。

俺は勇気を振り絞って、そう言い返してやった。

絶対に生きてやる、お前に俺の命はとらせねぇ。

椿も一緒なんだ……『俺達』なら、こいつを止めれるっ!


ブンッ


ナイフが大きく振りかかって来ても


ガキンッ


椿はすぐに弾いてくれた。

何処からともなくナイフが飛ばされても

椿は俺の身を、しっかりと守ってくれた。


クソ……守られて、ばかりだ。

未来人同士のケンカってのは恐ろしいな。

何をやってるかさっぱりわからんぞ。


「殺せない……何故、死なない……?」


「諦めて、こう見えても私は訓練してきたんだから」


ようやく、お互いの動きが止まった。

未来の俺が息が荒いのに対して、椿は平然としている。

どうやら身体的能力には大きく差があったようだ。

技術力では上回っているようには見えたが。


「ダメだ、ここで死んでくれないと、同じ悲劇が起こっちまうぞ?

せめて、この世界だけでも、平穏な元の世界に、戻ってくれねぇと――」


「……ね、帰ろうよ。 今なら、まだ償えるかもしれないよ?」


未来の俺は、目が血走っているものの、徐々に戦意が消失しているように見えた。

それを狙ったのか椿は、突如そう語りかけた。


「お前に何がわかる……『技術』を求め、全てを失った俺の何がわかる、んだ」


「お願い、これ以上罪を重ねないで……まだ、やり直せるはずだから」


椿は、ひたすら俺に呼びかけていた。

それは、俺が知っている優しい椿そのものだ。

やっぱあいつ、こんな感じのほうが似合ってるよな。

ちょっとバカっぽいところも、慣れれば対した事ねぇし嫌いじゃねぇ。


……結局、俺の出番はなかったけど

無事、全てが終わりそうだな。


「……ハッハッハッハッハァッ!!」


そう思った矢先途端、奴は突如それを見事にぶち壊しにしやがった。

この辺りに、狂気に満ちた笑いが響き渡った。

まるでホラー映画でも見ているかのようだ。

未来の俺は、気が狂ったかのように笑い続けた。


目は血走り涎を垂らし,顎が外れそうなぐらい大口を開けて笑い続けている。

どうしたんだ、こんなのが本当に俺なのかよ。

どうみても、異常者じゃねぇか――


「殺せない、過去の俺を殺せない……っ!! 逆に考えろよ、別にいいじゃねぇか。

今更だろ、『俺』を殺す拘りなんてさぁっ!!」


「な、何を言っているの?」


椿も俺と同様に、狂ったかのように笑った未来の俺の姿に恐怖心を抱いた。

誰だってアレを見ちまったら、寒気を覚えるだろうな。

もはや未来の俺の精神は、壊れちまっているようだ。


「俺を誘い出すために野月を浚っちまったし、体育倉庫をぶち壊しちまった。

京だって一緒に吹き飛んじまう可能性だってあったけど、俺ぁ迷っちゃいなかった。

そうだ、こんな『悲劇』に比べりゃ、多少の犠牲ぐらい、気にしなくていいんだよぉ」


戯言のように、何かを呟いていた。

言葉の意味は、わかりそうでわからん。

ただ、俺は俺自身に怯えていた。

また、手と足が震えてきた。

クソッ、止まれよ……ビビってんじゃねぇよ――


「そうだぁ、俺とお前が『出会わなければ』……いいんだ。

今のうちに、『お前』を殺しとけば、いいんじゃねぇか」


椿と未来の俺の距離は、そう遠くない。

そう、少しでも手を伸ばせば

手に持っている『刃物』が、簡単に届いてしまう。

その状況から、一瞬にして俺は『理解』した。

こいつ、まさか――


「……邦彦っ!」


椿は、咄嗟に俺の方向に顔を向けた。


……違う、違うっ!!

あいつの言葉、よく聞けよ――

俺じゃねぇ、ターゲットはもう、俺じゃねぇぞっ!?


あいつがナイフを手にした途端、既に誰を刺そうとしているかが、わかったんだ。

クソッ、間に合えっ!


俺は、無我夢中に走り出した。

恐怖だとか足の震えが止まらないだとか、そんなものは一切消えていた。


ただ、夢中になって椿へ向かって走っていたんだ。

守られてばかり、じゃねぇさ。

時には、『俺』が守ったって、いいだろ?


「椿ぃぃぃっ!!!」


「邦彦――」


夢中になって、気がついたら俺は椿の目の前に立っていた。

一瞬だけ椿と目が合い、目を丸くして口を大きく開ける。


何かを、伝えようとしていた。

だが、そんな余裕は無い。


俺はそのまま正面を向いて、迫り来る『未来の俺』と、対面した。

その直後、だった。




ドスッ――




何か、鈍い音が響き渡る。

何かがぶつかった音……とは、少し違う。


――何だ、脇腹に一瞬冷たい感触が――

いや、何だ……こりゃ。

脇腹が、熱い?


未来の俺からは、あの狂気に満ちた表情が消えていた。

どちらかというと、今目の前で起こった事に、驚きを隠せない様子というか

まるで、何でお前がここにいるんだ? とでも、言いたそうな顔だ。


なんだ……クラクラ、してきたぞ。

脇腹も熱いってより、ジワジワととんでもねぇ痛みが伝ってきた。

おいおい……やべぇだろこの痛み――

一体何がおきたってんだ?


俺は、ちらりと自分を脇腹を確認した。

なるほど、な。

そりゃ、いてぇわ……


何で目で見るまで、気づかないんだろうな。

俺の脇腹には、アイツが持っていた刃物が

奥深くまで、刺さっていた。


おい、マジかよ

やっちまった、な――




「 邦彦ぉぉーーっ!!」




椿の悲痛な叫びが、響き渡った。



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