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未来宣告  作者: 海猫銀介
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第3話 ちょっと待て、その銃は何だ?

さて、俺は今かなりの窮地に立たされているといっても過言ではない。


突然未来から美少女が俺の部屋に現れて、俺の殺人予告をした後ポテチ戦争を引き起こした。

で、今すぐ黒歴史としたい『ポテチ戦争』の一部始終を母親に見られたわけだ。


はは、笑いたければ笑え。

俺の脳内も随分愉快な妄想をしてくれるもんだ。

むしろこれは夢であってくれ、俺はそんな事を切に願っていた。


目の前には俺を哀れむように顔を向ける母上様の姿がある。

現実の時間ではそれほど経ってはいないはずだが、

俺にとってはたった1秒間でも1分ぐらいあるんじゃないかと

思えるほどの物凄く長い沈黙が続いていた。


ダメだ、目を合わせるのが辛すぎる……よりによってポテチ戦争の現場を見られるとは。

それだけじゃないと、俺は横目をちらつかせた。


やっぱり隣には綺麗な顔立ちをした黒髪少女がいる。

俺の母さんが登場したにも関わらず、奴は暢気そうに微笑んでいた。

元はと言えばお前が現れたのが原因だぞ。

わけのわからない展開にしやがって、責任取れっ!


今俺に出来ることは、天才的な直感で素晴らしい言い訳を思いつかせるぐらいだ。

とにかく考えろ、思考を止めるな、まずはこの状況を脱出しろ。


目を閉じて、俺は深呼吸をした。

なるべく母親の存在は忘れるんだ。

勿論、あの謎の少女のことも今は忘れろ。

邪念を捨てるんだ、それはもう悟りが開けそうなぐらいに。


・・・


いや、できるわけねぇだろ。 俺は虚しく自分に突っ込みを入れた。

我に返った俺はパッと目を開いた途端、またしても俺はとんでもない光景を目にしちまった。


目を開けた先には、相変わらずそこには謎の少女の姿があった。

うん、ここは何度も見ているし間違いなく現実だ、ここまではいい。

だが、彼女右手には何やらおもちゃのような銃が握られていた。


銃口がパラボラアンテナに近い形状をしていて、いかにも未来の銃って感じだ。

その銃で何をするかと思えば……奴はとんでもない行動にでやがった。


俺は決定的な瞬間を見てしまった。

いや、見てはいけない瞬間と言ったほうが正しいだろうか。


今、この謎の少女がその銃の引き金を引いたんだ。

そしたらビューンといった電子音と共に黄色い光が発射された。

勿論狙いは定めていた。



そのターゲットは、俺の母親の額だった。



事もあろうがこいつ……

俺の母親を撃ちやがった。


「おい、ちょっと待て。 どういうことだ、おいっ!! 何してやがんだっ!?」


俺は俊敏な動きで奴の胸倉を掴み、怒鳴りつけてやった。

マジ笑えないぞ……こいつ、俺の母親に何しやがったんだ?


「ふわああっ!? やめ、やめてっ! 視界がぐらぐらするよぉ~~!?」


力任せに彼女を揺さ振ってもマヌケな声が返ってくるだけだった。

何だか虚しくなるので俺はすぐに奴を開放した。

どてーんと派手に転んでいたが、やりすぎたとか可哀想だとかそんな感情は抱かん。


嘘だろ……俺の、俺の母親どうなっちまったんだ?

まさか、殺したのか……こいつ。

俺じゃなく……俺の母親を?


だが奴は目を回してだらしなさそうに倒れている。

とてもじゃないがその姿からは、殺意の欠片も何も感じなかった。


まだ、僅かに謎の少女が悪い奴じゃないって思っているだけかもしれないけどな。

だけど、あいつは確かに謎の銃で俺の母親を撃った。


銃と言えば思いつく用途は一つしかない、さっき目視で確認した光線と

電子音からして玩具ではないことは確かだ。


つまりどんな理由であれ、俺の母親に銃を向けると言うことは

明らかに『殺す』つもりだったということだろ?

ダメだ、頭の中が真っ白になりそうだ。


恐る恐る俺は、先程まで母親が立っていた方向に目を向けようとした。

どうするんだ……もし本当に額から血を流している母親の姿を見ちまったら?


仇討ちか? それとも自分の身の安全を考えて、逃げることだけを考えるべきか?

段々と現状に恐怖を覚えていった俺は、先程までのハイテンションはいつの間にか消えちまっていた。

むしろようやく自分が危機的な状況に陥っていることに気づかされたというべきか。

しかし、まずは事実の確認だ。


目に見えぬこと以外は信じない、それが俺の信条だからな。

俺はようやく覚悟を決めて、後ろを振り返って見せた。


「ごめんね~椿ちゃん、また邦彦の遊びに付き合ってあげてたのね」

「いえいえいいんですよ、私も好きでやってますから」




は?




俺は開いた口が塞がらなかった。

振り向いた先では俺の想像とはまるで違う光景が繰り広げられていた。

目の前では、すっかり謎の少女と打ち解けている母親の姿が目に入った。

むしろなんかこう、大分前から知り合いのような感覚で話してやがる。


あれ、母さんちゃんと生きてる?

俺は不思議に思いながらも謎の少女の手元を確認する。

あの銃がいつの間にか消え去っていた。

どうなってんだ?


「ほら、邦彦もあんまり椿ちゃんに迷惑かけるんじゃないよ。 お前とは違って女の子なんだからね」


「いえ、違うんですおばさん。 むしろ迷惑をかけてるのは私ですし……」


俺が混乱してる間にも二人の会話は続いていた。

母さんはいつも通りの笑顔で俺によくわからんことを言うし

奴は奴で、俯きながら何か言ってるし……いや確かにお前は俺に迷惑をかけている。

よかった、自覚があったようだな、これだけは救いだ。

しかし、そうじゃない。


落ち着け俺、今俺は誰だ? 俺は何処にいる?

ここは間違いなく俺の部屋だよな。

そして目の前にいるのは間違いなく俺の母親とさっきの謎の少女。

で、謎の少女はさっきここに現れて……あの銃で母親を撃って……。


「椿ちゃん……いいのよ、今まで邦彦の面倒をいっぱいみてくれてたんだからね。

私にとっては椿ちゃんも家族の一員みたいなものなのよ、

だから甘えたいときはたっぷり甘えなさいね?」


「……はい、ありがとうございます」


母さんは昔俺に見せていた優しい微笑みをしながら、謎の少女の顔を両手で優しく支えた。

謎の少女は申し訳なさそうに目を背けて、掠れた声で呟き……

というかなんだこの会話、なんでちょっといい話にしようとしてんだ。


正直俺には全く身に覚えがない話をこいつらはしている。

どんなに記憶を掘り下げても、俺は奴に世話になった事は一度もないぞ母上様よ。


「それじゃ、もう少しで夕飯だから椿ちゃんも一緒にね」

「はーい、いつもすみませんー」


そして俺の母親は何事もなかったかのように俺の部屋を立ち去っていった。

俺は未だにポカーンと口を開けたまま、その場で固まっていた。

さぞだらしない表情をしているに違いない。


「さあ~て、晩御飯だよぉ~♪ 一体この時代の家庭的な料理はどんなのがでるのかな~♪」


謎の少女はウキウキとした表情で、床に寝そべってご飯を待ちわびていた。

幸せに浸っているその表情は、可愛いと言わざるを得ないが

何度も言ってしまうが今はそれどころじゃないな。

というかさっきまでの暗い顔何処いったんだ。


「おい、何したんだよお前」


「あ、ごめんごめん吃驚しちゃった?」


そういって謎の少女は先程の奇妙な銃を俺に見せ付けるかのように取り出した。

一体何処からこんなもの持ち出しているんだ? カバンのようなものはないようだし。


「いやぁ、説明する暇もなかったからさー。 ちょっと一発これでぶち込んでやったのよ」


はぁ~っと俺は魂まで抜けそうなため息をついた。

奴は暢気そうに「え? 何?」って言いながら目を点にさせていた。


「母さんに何したんだよ、お前」


俺はかなり疲れ切った表情でそう尋ねた。

母親が無事だった事を確認し力が抜けたのか、俺はそのまま腰を床に落として壁に寄りかかった。


「あのままじゃ私のこと説明つかなかったでしょ、だから記憶を改ざんしたの」


「……ちょっと待て、何だ改ざんって」


おいなんだそのいかにも危なそうな銃は。

こいつ軽々しく物騒なことを言いやがった。


「ふっふーん……未来の力をなめちゃいけないよー君」

「人の母親の記憶勝手にいじるなーっ!!」


俺はとりあえず怒りに身を任せて怒鳴ってみた。

当たり前だ、いきなり堂々と母親の脳をいじられて怒らない息子が何処にいやがるんだ。


「一時的だもんっ! 未来の科学力といえど人の記憶を完全に操作することはできないのっ!

あれで精一杯だから勘弁してねっ!」


「そういう問題じゃねぇっ! 俺の断りも無しにいきなりあんなもん持ち出しやがってーっ!

俺の母親の脳大丈夫なんだろうなっ!?」


「だってあーでもしないと言い訳つかないじゃんっ!」


「だからって無言で銃撃つんじゃねぇよっ! マジで母さん死んだかと思ったんだぞーっ!!」


よくわからんが、俺は謎の少女と激しく言い争っていた。

薄っぺらい内容だった、我ながら恥ずかしい。まるで子供のケンカだ。

夕飯ができるまでだから……多分1時間ぐらいはこんなアホなやり取りを繰り返していたと思う。


そんな感じで夕飯が訪れると、奴は嬉しそうに部屋を真っ先に出て行った。

何だよ、お前も食うのね。


俺は深くため息をついた。


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