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未来宣告  作者: 海猫銀介
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第27話 直感で動けたらどれだけ楽だったか



俺は椿との出会いから昨日までの経緯を簡単に説明した。

流石に、3人とも驚いていた。

そりゃそうだよな、こんな馬鹿げた話聞いちまったら誰でもそんな顔する。


最初に椿が未来人だって話したときは、皆声をそろえて『えっ?』とか言いやがった。

だけど、あいつらは俺の言葉を疑うような真似はしなかった。

そりゃ多少は、それ本当か?みたいなことは聞かれたけどさ。


正直、信じてくれて心の底からホッとしている。

ここで信じてくれなくて笑い事にされてたから、俺のさっきの決意なんだったんだってオチになりかねなかった。

ま、そんな奴らじゃないってことをわかった上で話したんだけどな。


「椿ちゃんちょっと不思議な子だと思ってたのよねぇ……未来人だといわれれば、納得できちゃうかも」


「未来人は皆あんなに綺麗な髪をしているのかい? 是非未来へ連れてってもらいたいね」


「……まぁ椿のことはおいとこうぜ」


随分暢気な奴らだな、おい。

まぁ俺も人のことは言えん。


「それで遊馬、お前はどうしたいんだ?」


「どうしたいか……まぁそりゃ、俺が死ぬのはクロックスって奴らの望みらしいし」


「未来のことはおいておくんだ、お前自身が未来のお前に対してどう思うか、だ。

私ならば、自分が未来で何をしでかしたかは気になって仕方なくなるさ、お前と同じで問い詰めたくなるものさ」


先生は文字通り、俺の理解者だった。

俺の行動はおかしくはない、普通の行動だ。

だからお前は悪くないぞ、って言いたいんだと思う。


でも結果的にこんな状況を招いちまったんだよ、先生。

とてもじゃないが、そんな楽観的な考え方はできない。


「これ以上野放しにできないってのは同意だけどさ……だからといって俺に出来ることなんて、限られてるしさ」


「あの、遊馬くん。 いいかな?」


先輩は突然、俺と先生の間に割り込んでそう言ってきた。

一体どうしたというんだ?


「なんです?」


「私、思うのよ。 椿ちゃんってどうしてこんなに遊馬くんに拘るというか、

あんなに一生懸命になってたりするのって。 それって、ただの好意とかそういうのと、ちょっと違ってると思うの」


……そういや、深く考えてなかったな。


何であいつ、あそこまで必死になって俺を守ろうとしてくれてんだろ。


聞く限り大佐も色々と揉めてたみたいだしな。


「本当は、誰も殺したくないのよ。 きっと、未来の遊馬くんだって救いたいって願ってると思うの。

椿ちゃんってとっても優しいし、殺しだとかそんなの似合わないし、きっとそういう方法をずっと考えてたと思うの」


「……そうなんかなぁ、俺なんかの為に?」


「君の話を聞く限りだと、大佐さんはわざわざ過去の君と接触させつつ、

物凄く遠回りにな未来宣告を行っているんだろう?

確かに未来へ留まる為には、そういう方法がいいんだろうけど、

僕ならば殺すだけが目的なら君と接触はしないさ、君に興味を持たない限りね。

だとすれば、それは未来への君に繋がる『ヒント』を探っているというさ」


「考えすぎじゃないか?」


二人から言われると、確かに筋は通っている気がするけど

……まぁ確かに大佐がバタバタしててそこら辺は詳しく聞いていないな。


「だとすれば話が早い、黒柳より先に『未来の遊馬』を探し出す必要があるだろう。

それに未来の遊馬は今の遊馬と違い危険な人物であるのは間違いない、野月に危害を加えないという可能性もなくはない」


「……そうだ、椿今何処に行ったんだ? まさかもう全部終わらせちまってるってオチは――」


あれから随分時間がたっちまってる気がする、時刻にしてほぼ深夜に近い。

あいつが出て行ったのは9時過ぎだし、もう2時間以上は経っているぞ。


「警察はどうしているの? 先生」


「誘拐事件云々はおいといて、野月が行方不明になったってことで数人の警察が協力をしてくれているようだ。

だが、犯人からも連絡がない点と紙切れの脅迫状も悪戯じゃないかって思われていて、

あんまり事件性が伝わっていないようだが……」


「まぁ……どうしましょう、屋敷の者を総動員させましょうか?」


んーまぁ確かに先輩が言うには豪邸のセキュリティは完璧らしいし、今まで不審者を何度も捕らえているどころか

屋敷の者までたまにセキュリティに引っかかっちまうぐらいって聞いているからな。

こんなところで人攫いは考えにくいし、野月が行方不明になるはずはない。

『未来の俺』の未来技術があれば、こんなの容易に突破するだろうが。


「私は野月の捜索を手伝おう、お前達はとりあえずここを動くんじゃないぞ」


「待ってください、私もお手伝いしますよ」


「深夜に外を出歩くのは危険だ、やめるんだ」


「でもじっとしてらせません」


先輩はしつこく食い下がっていた。

野月が心配なのは勿論だけど、やっぱり椿の行方が一番気になるところだな。

『未来の俺』も何をするか本当わからんし。


……大佐なら、椿の位置わかるじゃないか?

クソッ、どうやって連絡を取れば。


「邦彦、行こう。 せっかく先輩が時間稼いでくれてるしさ」


「あ?」


京は突如俺の腕を掴むと、先生の死角を上手く利用して客間の外へと出て行った。

おいおい、後で怒られてもしらねーぞ。


「……正直ここまでとんでもない事に巻き込まれてるとは思わなかったよ、そりゃ君も大変だったよね」


「大変じゃすまねーさ……まぁでも、お前達のおかげで気持ちは楽になったよ。

話を信じてくれたことだけでも感謝したいぐらいだ」


自然とこんなぶっ飛んだ話を受け入れてくれたのは、何かと心強さを感じた。

やはり、話して正解だったと思う。

俺一人では、また絶望に陥って沈み続けるだけだったさ。


「君が話したがらないのもわからなくないよ、こんな話下手すれば妄想だって思われるぐらいだしね」


「なんだよ、逆に言えばお前はそう思ってないのか?」


「当然さ、あんなに苦しんでいる邦彦がこんな作り話を咄嗟で思いつくはずもないしね」


「……悪いな、野月には謝らねぇとな。 巻き込んじまって悪かったって」


「気にすることはないさ、きっと未来の君は彼女に危害を加えないと思うし」


「だといいんだけどな……」


俺は不安を抱えながら、とめておいた自転車を乗る。

そしたら何故か後ろに京が乗り込んできた。

……なんで?


「ごめんよ、邦彦。 実は今日は真っ黒なリムジンがお出迎えにきてくれてね、自転車はないんだよ」


「……絶対に鎖骨にさわんなよ? 振り落とすからな」


「勿論さ」


どうだか……。

まぁこいつだって空気は読めるか。

それに二人乗りにはなれちまったからな。

俺は自宅へ向けて自転車を漕ぎ出した。













自宅へ戻ると家は真っ暗だった。

親父と母さんはとっくに寝静まっているか。

逆に都合がいい、俺は京と忍び足で自室まで足を運んだ。


部屋は朝のままであり、椿が帰ってきた形跡はない。

俺は押入れを開けて、椿が残した端末があるかどうか調べた。


……あった。

未来の『ノートPC』。

電源はつけっぱなしだ、ロックもされていないようだ。

未来の癖にセキュリティは随分と甘いな。


一度椿が目の前で通信の手順をやっているところを見たことがあった。

俺はうろ覚えながらも何をしていたかを思い出しながら、操作を行った。

そしたら、例の通信画面が出てきた。

よっしゃ、ビンゴだ。


後は大佐と繋げるかどうか

都合よく気づいてくれればいいんだけど


「おい大佐、俺だ。 返事しろ」


「へぇ……これで未来人と会話が?」


京は隣で興味深そうにPCを眺めてみた。

やっぱお前だって不思議に思うよな?


「……? おかしいな、椿からは何も聞かされてないはずだが」


例のフェイズ大佐がやつれた表情で俺の目の前に現れた。

随分と苦労しているんだな、この人。


「……俺の友人が俺に誘拐された」


「その話なら椿から聞いたよ。 我々の判断はこれ以上君達を巻き込まないために――」


「失礼、貴方がフェイズ大佐か?」


大佐が俯きながら言葉を口にすると、隣から京が身を乗り出したそう言った。

京の目は真剣そのもの、大佐とやらに何か聞きたいことでもあるのか?


「おや、君は誰だ?」


「菅原 京です、邦彦の友人だ。 それより貴方に訪ねたいことがある」


「やれやれ、ついに友人にまで話が広まっているとはね」


大佐は深くため息をついていた。

どうやらよほど疲れているようだ。

見た感じ一睡もとっていないようにも見える。


「貴方は、未来の遊馬をどうしたいのですか?」


「……ふぅ、それを聞いてどうする気だい?」


「それは邦彦が決めます」


おい。

こいつさり気無く決定権を俺に押し付けやがったぞ。

ま、まぁ細かいことはいい。

俺は黙って二人の会話に耳を傾けた。


「出来ることならね、彼には罪を償ってほしいのさ。

幸いまだ彼は時間を巻き戻すことも今の君を殺すことも全て未遂で留まっているさ

私の力があれば、彼の罰を軽くすることは出来るし、更正させることもできるだろう」


「その理由とは?」


「……全ては椿の願いなのさ」


椿の、願い?

どういうことだ?


「彼女が、そう願っているということなんですね?」


「……昔彼女はね、遊馬 邦彦に救われたことがあったのさ。

勿論、本人は自覚もないし覚えてないみたいだけどね」


「え、お、俺が?」


俺が椿を救った?

な、何のことだ。

さっぱりわからんぞ。


「ありがとう大佐さん、貴方のおかげで私は確信を持てました」


京は大佐に一例すると、今度は俺へ視線を向ける。

何処か、すっきりしたかのような表情だった。


「椿ちゃんをみてて、ふと考えたんだけどさ。 君が昔公園で逢った子って、椿ちゃんなんじゃないかな?」


「……あ」


……いや、まさか。

確かに言われてみれば特徴は似ている。

だけど待ってくれ、何か話がおかしいだろそれじゃ。

それに俺はあの子とただ遊んだだけだぞ?


「……彼女は昔、タイムトラベルの適正試験を受けたのさ。

その時に時間軸のリンクが突如切れてしまってね。 あの時は本当に大変だったさ」


「リンクが切れるって?」


「今君たちと私がこうやって会話しているのは、いわゆる現代と未来の時間軸の同期をとっているからさ。

それが切れてしまうと、今みたいに我々と会話もできなくなるし……『元の時間軸』に戻ることができなくなる」


「なっ――」


俺は思わず言葉を失った。

そういや前に椿がそんなことを口走っていた気がする。


いや、まてよ。

じゃああの時、あの子が泣いていたのは――


「我々の技術ではどうすることもできなかった、元の時間軸と同期を取り直すなんて不可能に近いのさ。

一度でもリンクが切れてしまえば最後、元の時間軸に戻ることができなくなってしまう。

でも、そんな事故から『元の時間軸』と同期を取り直してくれたのが、君だったのさ」


「お、俺? で、でも何もしてないぞ俺は」


「……リンクポイントが、突然再出現したのさ。 我々はそれを察知して、再度同期を取ることに成功した。

何故再出現したのか真相は我々もよくわからないけどね、彼女は君にとても感謝していたよ。

君がいなかったら、途方に暮れていて、泣いてばかりで何も出来なかったとね」


「そ、そうだったのか……」


なんだよ……そんなことがあったのか。

あいつ、何も教えてくれなかったぞ。

そうか、何で俺綺麗さっぱり忘れちまってたんだ。


「……邦彦、やっぱり君は『君』を止めるべきだ。 彼女自身の願いのためにも、僕たちは彼女を阻止しなければならない」


「で、でもよ――」


だって、そういうわけにもいかないだろ。

野月が巻き込まれたんだぞ?

他のヤツだって巻き込まれるかもしれない。


「遊馬 邦彦、君自身はどうしたい?」


また、それを俺に聞くか。

なんだってこんな重大な選択を任せられるんだよ。

俺だってそりゃ、誰も死なないほうがいいと思うさ。

未来の俺が殺されるのってちょっと気分悪いしな。


でも、事態が事態だろうが。

椿もせっかく決意したんだ、それを邪魔することなんてできないだろ。


「……邦彦、大丈夫だ。 僕たちがついている、だから君は……自身と向き合うんだ」


「でもよ、京――」


「他人はいいんだ、大切なのは君がどうしたいかなんだ」


どうしたいか、か。

一番最初に、俺は椿にそんなこといった気がする。

笑っちまうな、言われるとかなりしんどい言葉なんだな。

正直なところ、未来の俺が何であんなことしたかって気になるわ。


でも、それを知ってどうすんだよ。

未来の俺は、平然と犯罪に手を染めるようなヤツだ。

そんなヤツを、生かしといていいのか?

……よく、ないだろ?


「邦彦、頼むよ。 椿ちゃんだってきっと後悔するさ、彼女は平然と人を殺せるような女の子じゃないよ、君だってわかるだろ?」


ああ、わかるさ。

でも、それでもアイツが決意したんじゃないか。

それを踏みにじってまで、俺の決意は強いものか?


「……椿の居場所は通信機を伝って知らせよう。 君がどうするかは、その時までに決めればいい。

ただ、私としては……君に期待している、とだけ伝えておこう」


……ああ、クソッ。

悩むのが面倒になってきたぜ。

わかったよ、こうなったら

意地でもやってやろうじゃないか。


俺もどうやら

『俺』と決着を、つけなきゃならねぇみたいだ。


「わかったよ、大佐。 まだ迷ってるかもしれねぇけどさ、

とにかく『未来の俺』から友人だけは救い出すさ。 後のことはそれから考える」


俺が大佐にそう告げると、部屋の中心からバチバチンッ! と静電気のようなものが発生した。

一度見たことがある事象なので流石に驚くことはなかったが、京は驚きを隠せずにいた。


そしてそこからは、ヘッドフォンが二つほど出現していた。

どうやらこれが、通信機とやらか。


「あのテレパシーは使わないのか?」


「言ったはずだよ、あれはあくまでも一方的に用件を伝えることしかできないとね。

それじゃ、君たちの検討を祈るよ」


プツン――


大佐との通信はそこで終わった。

また使う可能性もあるし、俺は電源をつけたまま押入れの中にPCを戻した。


「さあ邦彦、まずは野月さんを助けに行こう」


「……ああ、そうだな」


俺がいったところで何ができるかわからんが。

……正直未来の俺と再会するのは怖いが仕方ない。

下手すると俺が殺されちまうからな。


だけどやっぱ椿を放っておけないし、野月のことも心配だ。

俺に何かができるってわけじゃねぇけど。

少なくとも、現場へ向かう価値はあるはずだ。


これ以上、足も引っ張るつもりはないさ。

仲間だって、いるんだからな。


俺と京はそのまま自室を後にした。


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