第1話 未来からなんだって?
春が訪れ、花粉の時期が過ぎてむし暑くなり始めてきた時期に
俺はとんでもない事象を目の当たりにした。
丁度夕方頃だ、俺はやっとの思いで溜め込んでいた本を読み終えて、部屋の真ん中で大の字になった。
とある理由で購入した分厚い推理小説だが、なんと1冊400ページとあるアホみたいな量だ。
全5巻で完結しているのはある意味救いかもしれない。
だが、値段が1冊2000円と学生である俺にとっては致命的な高さだ。
おまけに俺は本もろくに読まないし、正直こんな小難しい本を読むのは拷問としか思えない。
そして今日はめでたく制覇できたわけだが、正直内容がほとんど理解できん。
俺は凄まじい眠気と時には熱を出しながらもこの本と戦っていたのだが、まるで意味がなかった。
俺の努力とは何だったのか。
そんな複雑な気持ちになりながらも、
とにかく読み終えたという事実を噛み締めて俺の心は達成感に満ちていた。
ははは、これで明日あの人に報告すりゃ俺死んでもいいや、なんてな。
バチンッ!
俺が達成感に耽っていると、突然耳元に奇妙な音が聞こえ出した。
ガバッと体を起き上がらせて、俺は大袈裟に部屋の状態を確認した。
テレビやゲーム機器、パソコンには異常はない。
かといって部屋の電気にも別に変化がなかった。
しかし、今のは明らかに火花が散った音というか、とにかく危ない音だった。
気のせいだといいんだが……
バチバチンッ!
その途端、今度は俺はとんでもねぇ事象を目の当たりにしちまった。
部屋の丁度中心……そう、俺が今寝そべっていたところから
いきなり青い電撃のようなものが走った。
静電気のようにも見えるが、どうも別物と思える。
俺は壁に背をつけて部屋の様子を伺った。
・・・
おかしい、何も発生しないじゃないか。
もしかして、本当にただの静電気だったのか。
なんだ、そうだったのか。 と、安心した途端――
バチバチバチンッ!!
轟音と共に俺の視界は青い光に奪われた。
「うおあぁっ!? な、なんだぁっ!?」
俺は何が起きたのか全く理解できなかった。
理解できたとするのであれば、突然部屋の中心が青い輝きを放ち始めたという事実だけだ。
いや、何で俺の部屋でそんなわけのわからない光が発生するんだ?
疑問に思っている間にも、容赦なく輝きは増していく。
それどころか、バチンバチンッという火花の音は激しさを増すばかりで、
青い光もそれに従い部屋中を青く染めていった。
おいおい……これはやばいんじゃないか?
俺はすぐにでも誰かを呼びに行こうと部屋を出ようとした。
その途端、またしてもとんでもないモノを目にしちまって俺は足を止めた。
嘘だろ? 何を見ちまったんだ俺は。
俺は自分の目を疑った。 いや、どちらかというと頭かもしれん。
突如、部屋の中心から黒いシルエットが映し出されたのだ。
どうみても人の形をしている。
なんというか、影がそのまま二本足で立っているような状態。
……まさか宇宙人が襲来していたんじゃないだろうな。
そんなこと考えてる間に、黒いシルエットは更に変化を見せた。
人型のシルエットが足から色をつけるかのように、その姿を明らかにしていったのだ。
例えるなら、WEB上で画像をロードしている時と同じ感じだ。
それを現実で目の当たりにするとは思ってもいなかったが。
問題はそこじゃない、俺は目の前に姿を現した『謎の宇宙人』の姿に呆然とした。
真っ白な肌にキレイな長い足。
更に真っ白な短パンとその短パンが見え隠れするほど裾が長い黒いシャツ。
腰まで届くほどの黒髪にエメラルドグリーンの瞳。
文字通り、『美少女』が突然俺の前に姿を現したのだ。
いやいや、普通に考えて有り得ないだろこれは……。
これは夢だ、夢に違いない。
突然、謎の現象と共に美少女が颯爽登場っ! とか、一体誰が信じるというんだ。
俺は現実逃避を始めたところで、やはり目の前に美少女がいるのは事実のようだ。
というか普通に俺と目が合ってる。
……一体どうしろというのか。
「あ、君はやっぱり邦彦?」
俺は謎の美少女の一言に寒気を覚えた。
何でこいつ…俺の下の名前を知っているんだ。
勿論、記憶の中にはこんな知り合いいくら探しても出てこない。
ましてや青い光と共に登場する人なんて、いるはずがないだろ。
もしかして、本当に宇宙人なんじゃないか?
気が動転していた俺は、思わずこんなことを口走った。
「……俺をどうする気だ、宇宙人め」
俺はちょっとした物語の主人公になった気分でそう言った。
なんというか、こういうときはもう妄想に浸ってしまおうと開き直っていたと思う。
ぶっちゃけ今の俺は、もはや正常の思考ができん。
だが、これでいい。 人間非常識を目の当たりにしたら非常識で対応するのが正しいはず。
「宇宙人? 違う違う、私は未来人だよ」
「未来人……? なるほどな、さては俺の命を狙いに来たんだな」
何だか今の俺は凄くテンションが高い。
傍から見れば明らかに危ない奴だが、俺は気にしない。
何故ならば、俺は今滅茶苦茶楽しいからだっ!
「すっごーいっ! どうしてわかっちゃったの?」
「ふ、貴様ら未来人の事など見抜けぬと思ったか?」
「あははっ、そうだよー。 私は君を殺すために未来からやってきたの。
私の名前は『黒柳 椿』だよ、よろしくねっ!」
「……ちょっと待て」
俺はその言葉を聞いて、ようやく冷静さを取り戻した。
こいつ今、何て言った?
『君を殺すため』って……言ってたよな。
その時……俺の目の前は、真っ白になった。
去年の年末にぱっと思いつきで書き始めたもの。
人生で初めて自作小説を投稿する決意をしました。




