表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第一章 『白く細い足との出会い』
9/104

少年の期待を裏切るな、丸山田 誠一郎

「この建物の中だ」


 ヴァンパイアハンター協会の事務所というものだから、教会の地下だとか墓地の近くとかにあるのかと思えば、意外な場所に案内された。


「留子ちゃん、本当にここなのかい?」


 誠一郎の前には全国展開しているスーパーマーケット、『スーパーフジタニ』がそびえ立っていた。24時間営業なので午後10時を回った今でも営業している。


「田中さん、もしくは師匠と呼べ。下の名前で呼ぶな」


 留子の破壊力のありそうな目力を前に、誠一郎は即座に首を縦に振った。


 スーパーフジタニは、今日の晩飯のカレーの材料を買ったスーパーで、誠一郎がいつもお世話になっているスーパーだ。


 一瞬、親子で買い物かと見間違うが、どうどうと不遜(ふそん)な態度で闊歩(かっぽ)する留子の後ろにでかいナリを潜め、とぼとぼと歩く誠一郎と留子のカップルは、犬の散歩中の飼い主とペットと言ったほうがしっくり来る。


「ここで少し待っていろ」


 そう言って留子は『従業員以外立ち入り禁止』の扉の奥へ消えていった。


 5、6分くらいだろうか。肉売り場でトンカツ用豚肉を指を加えて見ている誠一郎に、若い女が話しかけてきた。


「丸山田 誠一郎さん、ですか?」


 ぱっと見では大学生くらい。ハタチそこそこ。スーパーフジタニの女子制服を着用している所をみると、この店の従業員だろうか?


 肩まで伸びた金色の髪と、品のいい化粧。


 制服のラインをなぞる様に、誠一郎は女性の全身をなめるように見渡した。一言で言うと、『出るトコ出てる』だ。


 天使の様な笑顔(営業スマイル)を浮かべ、誠一郎の奇行を寛大に見守ってくれている辺り、本当に翼とか生えているのかもしれない。


 ネームプレートには『藤内 彩華』と書かれていた。


「は、はい? 何でしょう?」


 万引きGメンに見つかった不審な客の様に、誠一郎はかわいらしくない目をパチクリさせ、上ずった声で答えた。


「私、田中の部下の藤内と申します。手続きの準備が整いましたので、中にお入りください」


 笑顔と共に一礼。それにつられて誠一郎も頭を下げると、目線の先には藤内の豊満な胸があった。制服の上からでもそのボリュームは確かなものだとわかる。


 藤内がドアを開け案内する。美女が通った跡はいい匂いがした。やがて店長室の前で立ち止まりドアをノックする。


「失礼します」


 藤内に(うなが)され、室内へと足を踏み入れる。


「ちょっとちょっとちょっと! これ、おっさんじゃん!? トメちゃん、さっき新人はかわいいナイスバディちゃんって言ったよね!」


 いきなり高校生くらいの少年が、誠一郎(かわいいナイスバディちゃん)を指差し(わめ)いた。


 見れば、瑠奈と同じ高校の制服を着ている。この店のアルバイトだろうか?


 茶色に染めた長めの髪と、アイドルの様な顔立ちは美少年と言って差し支えないが、軽薄そうな言動が少し鼻につく。


「かわいいじゃないか。メガネ+爆乳+ヒゲだぞ。せっかくできた後輩なんだし、文字通りに『かわいがってやれ』よ」


 留子は机の上に足を乗せ、ふんぞり返っていた。


 少年のほうはまだ納得がいかない様子だ。


「丸山田さん、こちらにおかけください」


 ソファが誠一郎の下敷きになるのを確認して留子が口を開いた。


「さて、そんじゃ説明してやるか。私たちヴァンパイアハンターの事を」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ