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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第四章 『丸山田中年の事件簿』
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初めての共同作業、丸山田 誠一郎

 印藤は小泉達の元に向かおうと思ったが、春川がまだ着替え終わっていない事に気が付いて足を止める。


「おい、さっさと着替えろよ、別に見られて困るようなモンじゃねーだろ?」


「見られたら困るし、恥ずかしいの! すぐ着替えるからまっててよ、男の子は着替えに時間がかかるんだから!」


 春川は印藤をちらりと見てまた一言喋った。


「オレ、向こうの隅で着替えるから、のぞかないでよ? のぞいたら大声出すからね!」


「のぞくかボケ」


 春川はそそくさと、テーブルの影に隠れて着替えを始める。


 印藤は舌打ちすると、前をどすどす走る誠一郎の頭を踏み台にして小泉と吉村の間に割り込んだ。


「よう、小泉のジジイ。ご機嫌麗しそうだな。んで、そっちでフルボッコされてんのは吉村だっけ? 情けねーな。二日前やりあったババア幼女のほうがガッツあったぜ?」


 吉村は起き上がると印藤に目を向ける。


「あなたは……印藤 加奈子。これをチャンスに私を殺すつもりですね? しかし、そうはいかない――」


「ちげーよ、ハゲ。俺らの本命は小泉のジジイだ。簡単に浮気するほど加奈子ちゃんの尻は軽くねーのよ」


「そうそう、インコちゃんってば胸は残念だけど、お尻のほうはなかなか……」


 着替え終わった春川がステークを担ぎ、印藤の後ろに付いた。


「触ったらまずてめーを殺す」


 印藤が恐ろしい形相で春川に微笑えむ。


「……簡単に浮気しないんじゃなかったのね、インコちゃん」


「共同戦線……ということですか」


 吉村は立ち上がり、体勢を整えると再び左右の爪を鋭く伸ばした。


 春川はステークを構え、踏み込みのタイミングを待つ。


 印藤はポケットウィスキーの蓋を開け、無色透明の液体をまるで風呂上りにビールを飲むおっさんの様に左手を腰に当て、飲み干した。


「相変わらず、甘ったるい匂いだね、それ、なんだっけ?」


Zealot(ジーロット)だよ。んじゃあ、行くか」


 印藤の合図に春川も元気良く答えた。


「おうよ、ヴァンパイアハンターとヴァンパイアの初めての共同作業だ。トバシて行くぜ!」


 小泉はそれを見て不敵に笑った。


「面白いな。敵の敵は、敵であったか……」


 春川はそのセリフが終わる前に踏み込んだ。小泉が掌を振るう寸前、吉村が逆方向から左手の爪を付きたて、串刺しにしようとする。


 小泉は右の掌でステークを受け、左の掌で吉村の爪を受ける。ステークは炸裂するが小泉の掌で止まったままで、吉村の爪もまた左の掌で止まっていた。


「良い突きだ。小僧、やりおるな。だがその程度ではワシを撃ち抜く事は出来んぞ」


「女の子はやっぱ元気が一番だよな、頼むぜインコちゃん!」


 印藤は小泉の腹に拳を打ちつけた。ただの正拳突き。されどただの正拳突きではない。Zealot(ジーロット)で強化した筋力は、屋敷の壁を障子(しょうじ)の様に軽々と数枚ブチ抜き、小泉を別荘の庭に叩きつけた。


「加減しすぎちまったかな」


 印藤はそう呟き、風通しのよくなった屋敷から庭に出て小泉の後を追った。

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