闇に輝く銀の軌跡、丸山田 誠一郎
留子は左右の太もものホルダーに手を伸ばし、拳銃を引き抜き構える。
「やっぱ頼れるのはこいつだな」
今回持参した留子の拳銃は普通の拳銃とは少し違う。フレーム部分とトリガーガード……銃口の下から引き金の部分にかけて折りたたみ式の刃が収納されている。弾を切らした場合、もしくは接近戦を強いられた場合。その時に限ってブレードを起こし、グリップと銃身を水平にして、一振りのナイフへと変形させる。
留子は両手の銃のブレードを起こし、二振りのナイフを装備する。銀色の刃が闇で輝き、それを構え疾駆する様は初夏の夜に鮮やかな銀の軌跡を生んだ。
アーノルドはなおも楽しそうにカラカラと笑い、6本の手を銀の軌跡へと伸ばした。右、左、真下、右上、左下、正面。あらゆる方向からそれらが留子に押し寄せる。
「なるほどな、渡辺がやられるワケだ。ま、あいつにはいい薬だよ。そこんとこだけは感謝しといてやるか」
変幻自在かつ、トリッキーな6本の腕を留子は踊るようにかわす。かわしたその刹那に両手の刃で腕を斬り付け、前へ前へと進む。
「今のが体術検定1級の体さばき。そしてこれが杭打ち検定1級の踏み込み――」
アーノルドは視線を下へと向ける。目が合った。留子の獲物を喰らい尽くす絶対的強者の目が、冷たく輝き嬉しそうに笑っていた。アーノルドはカタカタと笑った顔のまま。
真っ二つに裂かれ、血を散らした。留子の右のブレードが真下からアーノルドを切断し、それを背にした留子が振り向きざまにこう言った。
「剣術検定1級、"紫電"。藤内も覚えていない技だ」
留子は聖水を取り出し、アーノルドにかけ、背を向けるとその場を後にする。
「私は『家族』だろうと躊躇いなく殺す。元人間現在バケモノ……ヴァンパイアハンターだからな」
留子の背中はパーティー会場である洋館の中に消えて行った。