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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第一章 『白く細い足との出会い』
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ブレスケアだ、丸山田 誠一郎

 少女の怒りは、ごもっともだった。だが、狙おうと思って狙ったわけではない。本当に偶然、手が震えて……。


「どうやったら、そんなに器用に狙いを外せるんだ」


 外しようがないくらい、的となる男のヴァンパイアが一直線に向かってきているのに、弾は少女の右手に申し訳なさそうに収まっていた。


「あ……ははは、失敗失敗。今度こそ狙――」


 謝罪の弁を述べる前に、ヴァンパイアの男に腹をつかまれ、お人形さんを抱きかかえるが如く持ち上げられる。いや、豚のぬいぐるみを持ち上げると言ったほうが、解りやすいだろう。


「く……苦しい。たずけてぶぼひい」


 日本語に訳すと『助けてください』と豚のぬいぐるみが言った。


 腹を刺激されたせいか胃から空気がこみ上げ……。


「げっぷ」


 よほど臭かったのだろう、ヴァンパイアの男は地面をのた打ち回っている。


 そういえば、今日の4食目にギョウザ定食を食べたのだった。一日7食の内、4食目に食べたギョウザ定食と、6食目のぺペロンチーノが誠一郎に力を貸してくれたのだ。


 勝機が見えた。ヴァンパイアはニンニクに弱いというのは本当らしい。ならば……零距離(ぜろきょり)で発射する!


 誠一郎はヴァンパイアに近寄りふ~と息を吹きかけた。


 ヴァンパイアはさらに激しく苦しみ始める。


 もっとも、ギョウザやぺペロンチーノを食べていなくとも、効果はありそうだが。


「これは予想外。そんな戦い方もあるもんだな」


 ない。


 このまま全力で息を吹きかけてやる! と思ったのも束の間、ヴァンパイアは起き上がり、誠一郎を突き飛ばした。少女の隣の鉄棒に豚の丸焼きが如く収まる。


 顔面から突っ込んだせいか、メガネにひびが入ってしまったようだ。だが幸いな事に顔以外の箇所(かしょ)は、誠一郎を包む脂肪の(よろい)がダメージを最小限に抑えた。豚の丸焼き状態から抜け出すと、再び銃を構えなおす。


 ひび割れたメガネのレンズの向こうを見据え、狙いをつける。今度こそあいつをしとめてやる。さっきまでの頼りない顔が、野生のイノシシの様に猛々しかった。


 一発の弾丸がヴァンパイアを貫いた。


「え、まだ撃ってないのに……?」


 撃ったのは誠一郎ではない。


 ――少女であった。


「おっさん。あんた私が今まで出会った中でサイコーだよ。サイコーにドヘタ。ってわけでテストは不合格」

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