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50代から始める基礎戦闘術  作者: 岡村 としあき
第四章 『丸山田中年の事件簿』
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とある男女の2コンボ、丸山田 誠一郎

登場人物紹介


印藤(いんどう) 加奈子(かなこ)


15歳。高校一年生。瑠奈の親友にして春川の元カノ。

赤い髪のツインテールに、だらしなく着くずした制服と短く詰められた

スカートからのぞくキレイな生足が魅力的。

戦闘時には学士(ドクター)として実力を発揮し、

強化薬剤Frenzy(フレンジー)Zealot(ジーロット)を使いこなす。

限定的であるが、その状態の印藤の実力はBランクヴァンパイアすら凌駕

する。


渡辺(わたなべ) 義久(よしひさ)


56歳。独身。物語のきっかけである、誠一郎に解雇を言い渡した人物であり、彼自身もヴァンパイアハンター。

体術士(グラップラー)としての実力は極めて高い。

必殺技は華麗蹴(かれいしゅう)

「面倒くせえ……」


 春川 優人は学校の屋上で昼食のパンにかじりつき、そうつぶやいた。右手にホイップクリームが挟まれたパンを、左手に携帯を持ち、給水塔の上であぐらをかきながら午後のスケジュールを再確認する。木曜日は面倒なことに6時間目まで授業があったし、それに確か今日は掃除もしなくてはならなかった気もするので、余計に気が滅入った。


「可愛い女の子のお見舞いならともかく、50代のおっさんの病室とかやだよなあ」


 昼前に留子から着信したメールによれば、渡辺は一命をとりとめたらしい。学校が終わったら顔を出してやれと、留子から指示が来たのだった。


 昨日、せっかく手取り足取りの個人授業でウハウハしてたのに、渡辺によってそのウハウハを途中で引き裂かれたのが、春川にとっては面白く無い。しかも、留子に一晩付き添わされるなんて個人授業よりも羨ましいではないか。


「電柱に頭ぶつけて入院したら、トメちゃん付き添ってくれるかなー」


「俺はむしろ、そのまま死んで欲しい」


 不機嫌そうな声をたどってみれば、屋上の入り口に一人の女生徒の姿があった。左右に結った赤く長い髪を揺らし、春川を睨みつけている。


「インコちゃんーー!」


 春川は給水塔から飛び降り、印藤に襲い掛かった。有無を言わさず、そのまま腰に手を回し印藤の自己主張の乏しい胸に、頬をこすりつける。


「オレ、屋上に一人でさびしかったんだ。孤独死するかと思ったよー!」


「そのまま死ね」


 某3対3で有名な格ゲーで人気の高い、赤毛の暴走するキャラが如く、冷たく言い放ち、本物の殺気をこめて印藤は春川の腹に右膝を叩き込むと、祈りを捧げるように両手を組見合わせ、それをハンマーにして背中に叩き込んだ。これがゲームなら、おそらく画面にPUSH 2 HIT! と表示されているに違いない。


「あ、あいかわらずすごい戦闘力だね、インコちゃん」


 春川はうずくまって、昼食だった物を地面にリバースした。


「そっちこそ、相変わらず性欲が服着て歩いてるみたいで、お元気そうねセンパイ」


 印藤は目を背け、春川の横を悠然と通り過ぎ、フェンスに体重を預けた。


「留子からメール、着たよ。学校終わったら春川(バカ)と一緒に、花の一つでも持ってブチョーのお見舞いに行けってさ」


 すでに印藤にも連絡は行っていたらしく、春川はますます逃げられなくなった。


「わーかったよ。授業終わったらちゃんと行くからさあ、そんな怖い目で睨むなって」


「これは普段通り(デフォ)なんですけど」


 印藤は言葉通りとは思えない形相で春川を視線で縫いとめた。


「とにかく、逃げてもムダだぜ? 首へし折ってでも連れて行くからな!」


 首をへし折ったら死んでしまうじゃないかと抗議したくもなるが、この荒い言葉使いも彼女にとって普段通り(デフォ)なのだ。


 印藤は口も悪ければ、愛想もない上に短気かつ暴力的で、不真面目である。しかし、一度引き受けた命令は絶対にこなす従順な一面を持っているので、春川は即座に観念した。


「それと、るなるなを泣かしたら……リアルPK(はんごろし)だからな」


「わーってるよ……」


「まさか、俺の親友に手え出すとはね。てか、それ以前に」


 と、数秒間を空けて印藤は再び口を開いた。


「もう誰とも付き合わないんじゃなかったのかよ?」

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